ライオン見っけ
「甘くて辛くて、冷たくて熱い。美味しいのに複雑な味」
細っそりと美しい指先に掲げられた月色の液体。
「まるであの人と交わした愛のよう」
「酒に酔った愚かな女の独り言として聞いてくれるかしら」
「あの人の命が尽きてしまうのならば、いっそ、わたくしの命も共に終わらせてしまいたい」
星が見えたかなんて覚えちゃいない。ただし少しばかり寒い夜で、なのに兵舎から出て惹かれるように花園に向かった。花なんて愛でる趣味は無いんだが、今思えば、行けば会えるとわかっていたのかもしれねぇな。
そこでひっそりと酒に浸り、悲しみを紛らわせる彼女と出会って、聞いてしまった本音。
「今ここでお前と出くわすのはわかってたかって?どうだろうな。いや、待て、落ち着け。今、食料を調達して出直してくるから」
グルルッと鳴らして扉から入って来た金の鬣を持つ黒獅子。
レオを探してベッドとテーブルのみの殺風景な一室に入り込んでアウルムは、部屋を見回しベッドの下を覗き込んで居ないのを確認して立ち上がり、扉の開く音に振り返るとお探しの相手が立っていた。
おお、見つかったと喜んだのも束の間、そういえば、こいつは3日ほど行方知れずで城から出た形跡も食料庫の中身を摘み喰いした形跡も無い。
そして現在、自分も手ぶらだ。
いや、ここに硬くて食べる所が少ない金という異物混ざりだが、ただ一つだけ餌があるじゃないか、と気が付いた。
「よお、レオ。探したぜ。グルルッて腹の音か?そうかー、お前食べ過ぎで腹クダってんのか?きっとそうだよな。じゃあ食欲なんてあるわけ無いよな」
現実逃避だ。出来ればリアルに逃避したい。この黒獅子の居ない場所まで。ただ、現在、扉はレオの背後にあるが。
レオは大きな前足を踏み出して確実にアウルムへと近づいくる。
「今厨房で豚の丸焼き作ってるらしいぜ。それ喰ったら腹の調子も治るんじゃねぇの?お前がちょっと避けてくれたらオレが取ってきてやるよ。どうだ?レっ…おおっ!?」
近付くレオから後退って転け、後ろにあったベッドへと仰向けで倒れ込むアウルム。
その上へ被さるようにして勢い良く飛び乗ったレオ。
黒獅子の眼前に無防備にも曝け出された金継が絡む白い喉元。
鼻面を押し付け匂いを嗅ぎ、味見をするようにベロリと舐める。
アウルムは諦めて目を閉じた。
「そう、じゃあ何も聞き出せなかったのだな」
先にキヨタカへ用事を言付けて下がらせたメレディはアズマの報告を聞いて、残念がるでも無く返した。
「申し訳無い。でも誰の差し金かは検討ついてるんでしょ?」
「あら、だったらお前はその差し金を唆したのは誰なのか検討ついてるとでも?」
「いいえぇ、滅相もございません。女王陛下」
態とらしい敬語と敬称で話すアズマを鼻で笑い、
「お前は本当に賢いな」
褒めてるのか嫌味なのか解らない口調で述べられたお言葉をアズマはお辞儀ひとつで有難く受け取った。
キヨタカを少々憐れみながら。




