王子と甘言
パーティーには、メレディ女王陛下の婚約者である大国のウルズ王子とお供の者達。あとこの国の貴族と城の者達。向こうのご婦人方とこちらのご婦人方の香水の匂いでムカムカする。
だからなのか、楽し気にミアとウルズ王子が共に踊っていることに、こんなに気分が悪くなるのは。
俺の妻は他の男と踊る方が良いらしい。だからどうということも無いんだが。あの男も婚約者をそっちのけで何をやっているんだ。
「君だろう?世界でもっとも希少な宝石って。メレディから聞いたよ」
「あ…はい」
「良かったら僕の物にならない?大切にするよ。君が砕け散るまで、君だけを愛して君だけを大切にするし、望みは何だって叶えてあげる。だから、彼なんてやめて僕に惚れなよ」
キヨタカに会って居なければきっとこのウルズ王子に恋に落ちているかもしれないと思うほどの美青年の甘い口説き文句。
例え宝石を我が物にしたいが為の下心満載の甘言だとしても、約束は違えない誠実な響きを持っている。
「いえ、アタシは…」
「お話中、失礼します。ウルズ様。」
「…っキヨタカさん」
曲が終わると同時にウルズとミアの間に割り込んできたキヨタカ。
「君はこの国の大将殿であるキヨタカ殿」
「はい、失礼ですが、そろそろメレディ女王陛下の御相手をなさってくださいませんでしょうか?俺も我が妻であるミアと、と思いまして」
他国の王子とはいえ、全く礼儀のなっていない態度。
アズマがこの場面を見ていれば、お前はダレだ?的な疑問をぶつけただろう。
キヨタカという男を知らず、礼儀云々に対して大らかなウルズ王子は、
「ああ、すまなかったね。君の奥方があまりに美しいもので、つい現を抜かし独り占めしてしまった。では、失礼するよ」
深く頭を下げるキヨタカとミアの前からウルズ王子が去るのを待ち、二人は頭を上げた。
「……世辞だ」
「…わかってる」
言われなくても。美しいというのは、豪華な衣装を着ても浮くこと無く似合い、中央で踊ることを許されている女王陛下へと贈られるべきもの。
「まあ、悪くは無いがな。やはりお前には華やかな色が合っている」
「っつ……」
惚れさせるためのセリフだとか、メレディ女王へ顔を向けてるのも、その顔がほんのり赤い気がするのも照れているからって訳では無いとしても、どうか自意識過剰な考えに溺れることを許して欲しい。
望みのままに、割れてゆくから。




