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VRMMO殺人指南書  作者: 幽々
神楽結成編
8/31

Episode7

「……誰? 知り合い?」


ランカとの、一仕事終えたあとの待ち合わせ場所、それがいつも祝勝会をあげる居酒屋だ。 そこへ俺が姿を現すと、ランカはいつもと違った反応をする。 それには当然、俺の斜め後ろをくっつくようにして歩いている奴が関係しているのは言うまでもない。


「知らねーよ。 勝手に付いてくるんだ。 今度外で見かけたら殺そうと思ってる」


「またまたそんな酷いことを! ワタシとしては、是非是非シンヤさんのお力を借りたくでですなぁ。 あ、勿論ランカさんも!」


この精霊師……しつこいな。 名前は「山ノ川」か。 フレンドに入れてログインチェックでもしてやろうか……。


「力を? ふうん、何をして欲しいの? というか、私もシンヤもPKギルドの人だけど、あなた狩り専門でしょ? それで絡んでくるって、良いの?」


「おい、勝手に話を進めるなよ」


「良いじゃん。 内容を聞いてから断ることだってできるし、聞いて損じゃない話かもでしょ。 オーケー?」


ニッと笑い、ランカは俺に向けて言う。 そうは言われても、まずその話を聞くってこと自体が納得行かないんだよ。 狩りを専門にしている奴の話なんて、聞くだけ無駄だ。 なんの参考にもならねぇ。


「……だから、もしかしたらこの人から良い人材を引っ張れるかもでしょ。 そういう可能性には、当たって置くべきだと私は思うけど?」


俺にだけ聞こえる声で、ランカはそう言った。 こいつから良い人材……ねぇ。 とてもじゃないが、ろくでもない奴しか知らなそうだぞ、この鬱陶しい性格からして。 そりゃ、狩り専の奴らにはウケが良い性格かもしれないが。 こういう誰にでも馴れ馴れしい奴は、慕われるもんだ。


「はぁ。 分かったよ、山ノ川つったか。 話だけは聞く。 それからどうするかは、俺たちが決める。 それと、相談料としてここの飯を奢れ」


「ほほほっ! そんなのお安い御用でっ! いやはや、やっぱお二人にお話したのは正解ですなぁ!」


「まだ聞いてねえだろ……。 ほら、行くぞ」


俺は山ノ川だけじゃなく、ランカに向けても言う。 ランカはなんだかニヤニヤと笑っているし、対する山ノ川も笑顔だ。 超絶ウザい。




「実はですな」


それから、NPCによって運ばれてきた料理を食べながら、俺とランカは山ノ川の話に耳を傾ける。


「ワタシって、基本的にはフレンドたちと狩りをしているんですよ。 四人から多いときで八人くらいのパーティですね。 そんな風に、狩りライフを送っているわけです」


「お前の狩りライフなんてどーでも良いから、要点だけ話せって。 特売日じゃないカップラーメンくらいどうでも良いよ。 ましてや一個二百円のカップラーメンくらいどうでも良い」


「……シンヤ、もしかしてまだ根に持ってるの?」


持ってない持ってない。 俺は恨みを根に持つタイプじゃないからな。 根に持たずに常に振りかざしているタイプだ。


「ほほっ、失敬失敬。 では……最近、クエストのアップデートがあったのはご存知ですか?」


クエストのアップデート? そう言えば、確かそんな告知があったようななかったような。 基本的に武器や防具が絡んでこないと、俺もランカもまったく調べないからなぁ……。 俺のクリスも、ランカがメイン武器としているアスタロトの杖も、高難易度クエストで獲得したものだ。 ドロップ限定の物もあれば、クエスト限定の物も存在する。 誰もが手に入れられるのがクエスト武器、限られた者しか手に入れられないのがドロップ武器、という認識で良いだろう。


とは言っても、たまに存在する難易度が桁外れのクエストでしか、良い武器なんてのは手に入らないが。


「……お二人共、まるで興味なさそうな顔ですな。 ですが、もしかしたらこれは興味があるのでは? 残剣・シャドウのことについてなら」


「残剣? おい、もしかしてお前が言っているクエストって」


その武器の名は聞いたことがある。 武器のデータだけは流れていたが、入手方法も製造方法も不明。 騎士用の武器であり、その能力値はかなり高く、更にオプションまで付いた優れ物だ。 俺たちの武器よりもレアランクは低いが、上等な物で間違いはない。


「はい。 お察しの通り、その残剣が入手できるクエストを発見したのですよ。 このワタシが! ここ大事ですぞ、このワタシが!! いやまぁ事実は、そのクエを知っていた人がワタシに教えてくれた……というものですけどな」


「それお前が発見したって言わねーからな。 んじゃーさ、そのクエまで案内してくれよ。 そんで、その案内終わったらお前帰って良いよ」


「いやいやいやいや! おかしくないですかそれ!? ワタシ、協力して欲しいとは言いましたがパシリになるとは言ってませんぞ!?」


一々うるさい奴だな……。 けど、こうして俺とランカに分け隔てなく接してくる奴ってのは珍しい。 珍しいし、変わり者だ。 下手をしたら、俺たちと話をしていただけで、フレンドやらギルドから迫害されるしな。 PKギルドってのは、どこまで行っても嫌われる存在だ。 それがこの山ノ川にも分かっているはずなのに……なるほど。 これはちょっと面白い。


「……ふう。 山ノ川、そのクエストってのはどんなだ? 狩猟系なのか、探索系なのか、材料集め系なのか。 それと、クエストを受けるのはこのメンバーか?」


「……と、ということは協力してくれるのですかっ!? このワタシに!?」


「嫌ならやめるぞ。 ランカ、良いよな?」


「私は良いよ。 まぁお手伝いの報酬にもよるけどね」


「それならご心配なく! そのクエスト報酬である残剣をシンヤさんとランカさんに渡します故!」


……なんだ? こいつ、その剣が目的じゃなかったのか? だとすると、それ以外にクエスト報酬が用意されているのか?


「良いの? 残剣が欲しいんじゃないの?」


それはランカも思うところだったのか、山ノ川に向けて尋ねる。 すると、山ノ川はすぐさまこう答えた。


「いえいえ! ワタシの目的はクエストクリアですので! 言ってしまえば、ワタシのお友達であるカラフルという方が、近々引退する予定でしてな。 思い出作りというわけなのですよ」


「わっかんねぇな……。 ゲームで思い出作りとか、無意味だろ」


「ほほ、ワタシたち狩り専門にとっては、そういう物こそがこのVRMMOに求めるものですので。 シンヤさん、ランカさん、ご協力感謝致しますぞ!!」


「……まぁいい。 けどさ、平気なのか? 俺とランカはプレイヤーキラーで、クエストが始まった直後に皆殺しってこともあるぜ?」


俺は笑って、山ノ川に向けて言う。 脅しのつもりで言ったそれだったが、山ノ川はそれを聞いて笑うと、こう返した。


「シンヤさんは、協力すると言ったら協力してくれるお方だと伺っておりますぞ。 その話があったからこそ、こうして話を持ってきたのです」


……一体どこの馬鹿だ。 そんな話をしたのは。


「あはは。 当たってる当たってる。 そういうことなら、私もクエが終わるまでは手出ししないよ。 けど、クエが終わって次に会ったときは、その保証はできないけどね」


「ほほ、心得ておきますぞ」


……と、こんなわけで俺は山ノ川の依頼をこなすことになった。 正直言えば不向きなことだが、山ノ川が言う「思い出作り」とやらがどんな結末を迎えるのかにも、興味があった。 クエストを終えるまで、こいつには手出しをしないでおこう。

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