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理不尽な!?  作者: kususato
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96. 冬季休暇 (11)

明けましておめでとうございます。今年も宜しく!

96話目投稿です。

「なあ、イズモ。イズモの言う条件には当てはまらないかもしれないけどさ”地球”の”日本”ことについてだったら、私とマイク兄とマイカ姉と話そうか?」


 「ぎゃおおおおおお――――――――――――――んんっっ!!!」


 あんなに!

 あんなに!

 あんなに、簡単に!

 あんなにサラっと!

 この16年間、ずっとずっとずっと!

 探して探して・・・・!

 成獣(おとな)になったら、ラヴィンター皇国以外にも探しに行けると息巻いて!

 ちょっとでも、情報が欲しいと話しをしてみれば。

 こんなにも、近くにいて。

 既に会って、話しをしていた相手。


 それがそれが!探し求めてきた相手だったなんて!


 「”日本”の話しをしようか?なんて!あんなに軽く!何でもないみたいに―――――!!」


 嬉しいよ!嬉しいに決まってる!

 でもでもでも!


 何でもっと早く言ってくれなかったんだ?とか。

 もっと、この国とか隣国とかあちこち探し回った末で!とか。

 イラつきとか、憤りとか、哀しいとか、嬉しいとかが色々ごちゃまぜになって!


 叫び出したくて!

 走り出したくて!

 叫んで、叫んで、叫んで!

 走って、走って、走って!


 感情が、グルグルグル変な感じに渦巻いて、どうにもならない!!


 「ぎゃおおおおおお――――――――――――――んんっっ!!!」

 「ぎゃおおおおおお――――――――――――――んんっっ!!!」

 「ぎゃおおおおおお――――――――――――――んんっっ!!!」



 でもでもでもでも!



 

 ああ!もう、俺は独りじゃ、なくなるんだ。

 ああ!もう、俺は独りでいなくて、良いんだ。



 俺は、この世界で、もう孤独(ひとり)じゃない。


 「ぎゃおおおおおお――――――――――――――――――――んんっっ!!!」



*****************

 


 マイクさんとチャチャさんに伴われて、精霊の長である”キミドリ”様へ挨拶をしている時だった。


 キミドリ様が、ふと何かに気づいたように上の方に視線を彷徨わせ、ある一方向で止まって暫くそのままでいたかと思ったら、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。


 「どうかされたの?キミドリ様?」

 「ああ、いや・・・・何でもないよ。」


 キミドリ様がニコニコ微笑んでいる前で、チャチャさんが話しを進める。


 「ではマイカ嬢とロベルト達は、今回あまり長い期間はここにはおられないと言う事ですが、滞在中はゆっくりしていかれると良い。」

 「「「「ありがとうございます。」」」」

 「して、マイク殿はどうなされるか?」

 「私もマイカと共に行こうと思っております。」

 「そうか・・・・・相分かった。滞在中は、先ほどの家をお使いくだされ。寝台は後ほど用意致しましょう。」

 「はい、ご配慮感謝致します。」


 突然来た、我々を快く受け入れてくれる精霊の街の(おさ)にもう一度礼を良い、長の家を辞そうと立ち上がり、扉に向かおうとしていると、マイカさんは長に引き止められていた。

 マイカさんと話しているキミドリ様は、とても嬉しげだなと横目で見て思っていると、


 コンコンコンとノックの音がした。

 「誰じゃ?」とチャチャさんが誰何する。


 「すみません、ヴィーです。」


 少し焦ったよ様な、ヴィーの声がした。

 チャチャさんが扉を空けると、困った顔をしたヴィーが立っている。

 マイクさんとマイカさんが、何かを察してヴィーの元へと集まる。

 小声で少し3人で話したあとに、2人は笑いながらヴィーの頭を少し乱暴に代わる代わる撫でた。


 マイクさんが俺たちの方に向いて、

 「悪いんだが、ここでの話は土産話としては、兄貴たちには(・・・・・・)しないでくれると助かるんだが?どうだろう?」

 「兄貴たち・・・?」


 何故兄貴たちには。なんだろう?

 疑問に思って、ロベルトとスイゲツの方を見た。

 ロベルトはマイクさんの言いたいことが判ったのか、マイクさんの目を真っ直ぐ見て、頷いた。


 ”地球”という星の”日本”という国、そこの記憶を持つというイズモという呼び名の魔狼。

 そのイズモに”日本”の話しなら、ヴィーとマイクさんとマイカさんとで話そうと言ったそうだ。

 そうしたら、突然先ほどいた家から飛び出して行ってしまったらしい。

 その時の様子が尋常ではないほど取り乱していたと。



 ちょっと待ってくれ。


 尋常ではないほど取り乱した魔狼は、捨て置くことは出来ないだろうが、その前に。


 ”日本”の話しなら、ヴィーとマイクさんとマイカさんとで話そうと言ったって事は、何か?ヴィーとマイクさんとマイカさんは・・・・・”日本”とやらの記憶を持っていると言う事なのか?

 そこに思い至って、もう一度ロベルトとスイゲツを見た。

 2人も俺を見ていた。

 多分、同じことを考えついたんだろう・・・・何とも言えない複雑そうな顔をしている。

 

 さっきまでは、いることは知ってはいても、遠い存在だったはずの”記憶持ち”がすぐ身近にいる。

 それも、3人。

 俺たちは、どう話しかければ良いのだろうか?




 キミドリ様が、ヴィーたちの話しを聞き終えて微笑んでいた。


 「気に病むことはありません。探し求めて、これから世界中を回ろうとしていた矢先に思いもかけず見つかったことに戸惑ってしまったのだろう。しかし、嬉しいことには違いないと思いますよ?先ほど、歓喜の感情が迸った遠吠えが聞こえて来ましたからね?」

 

 「歓喜?」

 「ええ、そのうち気を鎮めて戻ってくることでしょう。待っていてあげて下さい。」


 キミドリ様にそう言われて安心したのか、やっとヴィーに緊張と困惑の表情が和らいだ。

 どうやら、イズモが帰ってくるまで待つことにして、探しに行ったりはしないようだ。


 それは良いんだが、俺たちはどうしたらいいのだろう・・・・・? 



 「それじゃあ・・・先にこちらに話しというか、説明しておこうかな?」


 マイクさんとマイカさんが、俺たち3人を笑いながら見た。

 目は笑ってなかったが。



*******************

 


 いつまでも、精霊の長たるキミドリ様の家にいるわけにもいかないので、6人で仮住まいとして借りた家に戻ってきた。

 今日は何だか、思いもかけないことがいくつも起こる。

 これから話されることもその一つになるんだろう。


 ヴィーが”記憶持ち”である事は、僕さえ知らなかった。

 簡単に打ち明けられる事でもないと判ってる。

 でも、僕はヴィーの友達だ。

 それを覆す心算はないし、そんな事をする理由もない。

 ただ、ヴィーたちがどうしたいのかは、聞いておきたいんだ。


 聞かなかったことにして欲しい?

 知らない振りをして欲しい?

 それとも、僕たちの心の中だけに留めておいて欲しい?


 皆が椅子に座ったところで、さあ!来いとばかりにヴィーたちに顔を向けた。



 「まあ、話としては、(おさ)の所で言ったことが(ほとん)どなんだけどね?早い話しが、俺たち3人も、ここの世界とは違う”日本”という国の記憶があるってだけの話しなんだ。」


 え?マイクさんの口調が今までと違う事の方に戸惑った。


 「別段、隠してもいないけど、吹聴もしてないだけなんだよな。だからさ、スイゲツ君たちにそんなに固くなられちゃうと困ってしまうんだけどな?」


 「・・・・隠しておきたいわけではないって事ですか?結構重大な事だと思うんですが・・・?」

 「え?どこら辺が?」

 「え?!どこら辺って・・・・え、えっと・・・」


 そんな風に突っ込まれちゃうと・・・・そう言えば、何が重大なことなんだろう?

 「”記憶持ち”っていったってさ、人それぞれ千差万別。この世界に多大な影響を及ぼせるかっていうと・・・・まあ、及ぼせちゃうこともあるかもしれないけど。」


 「だったら!」


 「出来ることは出来るけど、出来ないことは出来ない。全部が全部が判っているわけでもないから、君たちが納得出来るようには説明は出来ないと思うけど、そうとしか言えないんだよね~。何を基準にしているのか判らないけど、”出来ない事は出来ない”んだ。それが、”まだ”出来ないのか、”絶対”出来ないのかは俺にも判らない。」

 

 

 哲学的なことなのか?僕にはさっぱり意味が判らない。

 ちらっと垣間見た、ルーフェスとロベルトも判らないって顔してる。

 あれ?ヴィーもそんな顔してる?何でだよ?


 

 「ある程度”記憶持ち”が自重している部分もあるかもしれないけど。前世の世界と”(ことわり)”が違うからなのか、多大な影響を及ぼす事を、この世界の”理”が許さないからなのか。」


 「全然、解かりません・・・・」


 「うん、そう。簡単に言えば”解らない”。」


 「「「えっ?!」」」


 「何で、記憶を持ったままこの世界にいるのかも解らないって事。何かの使命のために喚ばれたとか、どこかの誰かにこの世界に放り込まれたとか・・・・そんなんじゃないらしいし。君たちと同じにここ(・・)で生きて暮らしてるだけだから。」


 「・・・・・・」

 「だから、隠しているわけでもないけど、殊更言って回りたい事柄でもないんだよ。毎回説明しなくちゃならないなんて面倒くさいしね・・・・・でも。」


 「でも・・・?」


 「訳わからないだろう事をつらつらと言っちゃったけど。実の所は、同じように”日本”の”記憶持ち”として生まれてきちゃった彼には(・・・)、俺たちが必要かもしれないから。」


 「「「・・・・・・」」」


 何だか、色々言われて丸め込まれたような気がする。

 でも、あのイズモの様子を見ていたら、そうかもしれないとも思う。

 イズモには、マイクさんたちが必要なんだろうと。



 それから、マイカさんから今でなくても良いから考えて想像してみてと言われた。


 元の場所に戻れない事が前提で。

 こことは、気候のあり方が違う、国のあり方が違う、学校の制度が違う、食べ物が違う、魔術がない、魔力がない、常識が違う、そういう場所で、今の家族、友達、知り合いが全くいない世界にポンと放り出された者がどういう気持ちになるのか。そして、例えばその場所で、家族や友達や知り合いが出来たとしたら、どう思うかと。




 夜になってやっと帰ってきた”イズモ”は、一晩中マイクさん達と一緒で、ずっと話しをしていたようだ。

 いつの間に人型になっていたのか判らないけど、翌朝に僕たちと顔を合わせた時、イズモは目を真っ赤にさせながらも、嬉しくて楽しくて仕方がない様子で笑っていた。

 マイクさんもマイカさんも同様に嬉しそうだ。



 ヴィーは、途中で寝落ちしたらしく、まだ起きてこない。

 

1月は少し忙しくなる為、2日置きくらいに投稿する予定です。

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