87. 冬季休暇 (2)
87話目投稿です。
何事もなく冬期休暇に入った。
暫く家を空けることになるので、マイク兄に手紙と家の鍵を渡して貰えるように巡回中の騎士をとっ捕まえ・・・げほげほ・・・お願いしておいた。
各種道具等を入れた、拡張魔道具のバッグと体温調節の魔道具は必需品。
体温調節と言っても、体の周りに薄い膜を貼り必要以上に熱を逃がさなくする程度だけど。
今回は、拡張魔法陣と品質保持と貼り付けた物の品質保全の三つ巴の布札とこの魔道具は人数分用意。
極寒の北区に行くので、各自のバッグにこの三つ巴拡張魔法陣の布札を縫い付ける予定。
あと、その他諸々。
何か、スイゲツたちに言い忘れた事があるような気がする・・・何だろう?
すごく大切だったような、そうでもないような・・・。
補足はマイカ姉がしてくれるだろう・・・か?
寒くなってくるとどんどん思考が淡白になっていく気がするのは・・・気のせいかな?
”精霊の街”へと出発前に、皆には私の家へと集まってもらった。
マイカ姉もここに泊まっているので、都合も良いし。
3人の荷物がすごい事になるのが分かってるのもあるけど、荷物整理の時間も欲しかったのもある。 それを外でやるのも他人の目もあるし、避けたい。
「ヴィー・・・用意はしたけど、これ全部を持ち歩くのは大変だよ?」
そう、すごく大変だ。
多分重量にしたら50kgくらいあるんじゃないかな。
にこにこ笑って、1冊ずつ渡す。
「何だ?これ?」
「それは、拡張魔道具”カタログ・ミルトル”
「「「カタログ・ミルトル?」」」
・大きさ・重量に関係なく40品目収納可能。
・カタログ全体に魔術がかかるように、拡張の魔法陣が表側、品質保持とカタログ事態の保全の魔法陣が裏側に刻まれている。
・収納時に収納する物の名前を登録することによって、その場所はその物の専用収納場所となる。
・専用収納場所の魔法陣の下には物の名前が表記される。
・カタログ内の魔法陣には、収納・取出し・画像刻まれており、そこに使用者登録してある者が触れたり、声で支持すると自動的に処理する。
「とまあ、こんな感じかな?だから使用者登録を声と魔力でして貰ったら使えるよ?」
「何だそれ?聞いたことない拡張魔道具だな・・・」
「何か凄いけど、いくらするの?これすごく高い気がする・・・!」
「・・・・従来の拡張魔道具とは、かなり違うな。」
説明を受けた3人はそれぞれの感想を述べているが、サクサク作業しないと出立にしては遅い時間になってしまう。
説明しなければならない事がまだまだ他にもあるので、疑問にさっくり答えて作業を促す。
「私の作った魔道具の試作品の第2段階なんだ、大丈夫、物が収納できなかったり、取り出せなかったり、行方不明になったりはしないから、やっちゃってくれる?で、使い終わったら感想を聞かせてもらうからその心算でいてくれると助かる。」
「「「・・・・・・わかった。」」」
(試作品第2段階・・・それは人が使っても大丈夫な段階なのか?)
まだ言いたいことがあったようだが、取り敢えず飲み込んだようだ。
使用者登録をし、常時使用しないもの、次に使用頻度の低いものの順に収納していった。
自分の主武器などは、基本自分でそのまま持つが、ヴィーと同じく投擲武器を持つスイゲツには別の拡張魔道具も渡しておく。
3人は布札を使った魔術は使用したことがないだろうと、イヤリングに、体温調節・肉体強化・身体能力向上・毒麻痺軽減・物理攻撃軽減・魔術攻撃軽減・イヤリング事態の強化とそれらを維持する時のために微量な魔力吸収と計8つの魔法陣満載。
形は、前にマイク兄がしていた耳に挟み込むタイプ、色は銀色だけども。
イヤリングの材質は、かなり劣るだろうけどね・・・。
ちょっと格好いいなぁなんて思って、作ってみた物。
そう、スイゲツたちにこの事がなくても実験た・・・ゴホゴホ・・試して貰えるように頼むつもりだったのだ。
当然、自分でも試すけどね。
そして、拡張魔法陣と品質保持と貼り付けた物の品質保全の三つ巴の布札をそれぞれのバッグへと縫い付けた。これにも使用者登録して貰う。
最後に、お弁当を渡して準備は終了!
さあ、マイカ姉のお話しです。
「じゃあ、初対面と言う事で、自己紹介でもしようかな?私の名前は、マイカ・バンブー冒険者をやってる。マイクとは会ったことあるんだよね?見ての通り、マイクとは双子で私は一応姉だ。年齢は19。実力とかは・・・これから君たちが自分で見定めてると良いよ。質問あるかな?」
「マイカさんは、旋風の琥珀っていう・・」
「ぎゃ――――――――っ!スイゲツ!!だめっ!」
「え~・・・」
「”旋風の琥珀”?何で知ってんの?」
「えっ?マイカ姉・・・その二つ名受け入れちゃってるの?」
「は?私のじゃないよ?マイクの二つ名だよ?え?もしかして私のだと思ったの?ヴィー?」
「いえ、冒険者のマイカさんの二つ名だと世間では認識されてるみたいですけど・・?」
顔の作りは一緒でも表情とか仕草とかが全然違うんだよね、マイカ姉とマイク兄って。
マイク兄は、猫を被っていない時は何かやんちゃ坊主っぽいけど、マイカ姉は超眠たい時を抜かせばさっぱりというか大雑把というか・・・全体的にドライなんだなぁ~。
「へ~・・・どっかでごちゃまぜになったんだね。似てるからかな?」
「元々は、マイク兄の二つ名だったんだ?」
「うん、ロガリア学院時代とか色々イタイ事ヤラかしてるからねー・・・特にマイクが。まあ、どっちでもいいよ、気にしないし。」
「き、気にしないんだ・・・」
「だって、しょうがないじゃん?で、他に質問は?」
あっさり二つ名を流すマイカに驚いたが、確かに気にしても仕方がない。 器がでかいのか、無頓着なのか・・・・多分後者だ。
でも、元々はマイクの二つ名だった事はいつか言ってやろうとヴィーは思った。
「ふふふふふ・・・・」
「「「・・・・ヴィー・・・」」」
3人から不審そうに名前を呼ばれた。
つい、楽しみになって表に出てしまったか、失敗失敗。
「あ、失礼。」
「さて、目的地に行くルートだけど。1~東区から北上するルートと2~西区から北上するルートと3~西区のツーク港から北区のターク港まで船旅のちそこから東区方面へ向かうルート。ちなみに、1番時間かかるけど、体力温存出来るのが3番目。修行目的を重視するなら2番目。最短距離なら1番目。さあ、どれを選ぶ?君たちの親御さんの気持ちを考えると・・・・3番目かな?」
さらっと呑気に言ってるけど、結構過酷な三択だ。
「冬季休暇が1ヶ月なのですが、行って帰って来れますか?」
ロベルトが確認の質問する。
「期間的にはどれも問題ないけど、帰って来れるかは・・・君たち次第かな?」
スイゲツが恐る恐る質問する。
「・・・・ヴィーと2人で行くとしたら、どれを選択したんですか?」
「え?1番目以外はないよ?」
「マ・・・マイカ姉・・・鬼畜・・・」
選択肢すらないとは、本当に酷いなマイカ姉。
「俺は出来れば1番のルートを希望したいんだが・・・だめか?ロベルト、スイゲツ?」
見れば、ルーフェスは瞳がキラッキラしている。
ワクワクが止まらないらしい。
何でそんな過酷なルートに目を輝かせるんだ。
そんなルーフェスの様子を見て、決めたらしい。
「「1番目のルートで、お願いします。」」
何でそれを選ぶんだ。
「・・・・・最悪じゃなくても死ぬかもしれないけど・・・良いの?」
「良くないですよ?」
「死なない努力をします。」
マイカ姉が私を見て、ニヤッと笑った。
そのしてやったりな顔は、なんだ。
「わかった・・・・そこに何があるのか知っての選択だよね?」
もう一度、確認する。
「「「もちろんっ。」」」
ああ、3人が死なないようにサポートしなきゃいけないようだ。
とがっくり肩を落として、スイゲツたちにとって重要なことを思い出した。
「そう言えば・・・マイカ姉?”精霊の街”って、何か・・・掟があったよね?」
「・・・・・・・・・・・あったね、そう言えば、そういうのが。」
かなり重要なことなのに、本気で忘れていたらしい。
私も人のことは言えないが。
「「「えっ?」」」
男が”精霊の街”に受け入れられ、その街の客人となる為には、突然精霊たちに襲撃され、そのまま6時間耐久レース的な戦闘に入らなければならない。
6時間というのは前任者の闘った時間であり、あまり当てにならない。
その時の状況によるので短いかもしれないし、長いかもしれない。
その闘いで精霊に認められなければ、客人として迎えられないどころかそのまま放置されるらしい。
力の限り闘って認められなければ放置、そしてそこにはこの国の最上級に強いとされている魔獣が多数生息している。
超危険な掟。
だけど、女子な私とマイカ姉には適用外、スイゲツたちには適用されるはずな・・・掟。
「「男に厳しすぎ!!何だその掟――――――――――!!」」
驚愕と憤りを叫ぶスイゲツとロベルト。
「おお―――――――――――っ!!」
期待と歓喜を叫ぶルーフェス。
どんだけなの。
「一見女子に見えない、ヴィーとマイカさんだって他人事じゃないんじゃないの?!」
驚きすぎて失礼なことを口走るスイゲツに、マイカ姉は笑って答える。
「あはははは、正直者だな!スイゲツ君!でも、心配無用だよ、彼らはどこで判断しているのか間違ったりしないのさ。事実、私は適応外だって言われて、戦闘しなかったから!」
「「なにその理不尽―――――――――――っ!!」」
気がつけば87話までつらつらと書いてまいりましたが、読んで下さる方々には感謝、感謝です。
読んで下さっている方々には楽しんで頂けているのかなぁとちょっと心配な今日この頃なのです。




