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理不尽な!?  作者: kususato
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79. 冬支度 (9)

79話目です。

 「イル医師(せんせい)、中に入って扉を閉めてください。」


 そう言うと、私は布札を取り出し”遮音結界”を展開・発動させる。

 「遮音。」


 イル医師は、扉を閉め更に鍵をかけ、近くに座った。

 それを見ながら、話し始めた。


 「今日も、魔狼に会いましたよ。」

 「「!!」」


 2人は驚愕しつつ、私の様子を伺う。

 ベルナ医師はさっき私の怪我の状態を診たのに、無事なのが不思議だという目で見てくる。

 まあ、私が無事なのは納得いくまでそのまま見てもらうとして、続きを話すことにする。



 昨日は、魔狼自身が狩り直後で気が高ぶっていたために、捜していた私を見つけたが力加減をせずに、乱暴に扱ってしまった事。

 今日は、それを真摯に謝られた事。

 怪我の治療費の弁償としては、多いくらいの魔獣を狩って貰った事。

 私を捜していた理由は、自分の行きたい場所への道を尋ねたかっただけな事。

 魔狼は既に自分の行きたい場所へと向かったので、王都中央にはいない事。

 などなどを都合の悪い詳細は割愛して、必要だと思うことのみを話した。



 「なぜ?ヴィーだったんだい?他にも人間はいるだろうに?」


 当然とも言えるベルナ医師の質問に、にっこり笑って答えた。


 「魔狼を見て、まともに話してくれる者が見当たらなかったじゃないんですか?怖がって逃げたのか、攻撃したのかはわかりませんが。1ヶ月前に私が遭って話したのだって偶然でしたから。」


 


 もうこちらで互いに決着をつけているので、ギルドへ報告する事はないのでは?と含ませる。

 ギルドに事後報告するにしても、魔狼の居た証拠はないのだ。

 あるのは、私と昨日傷を診たイル医師とベルナ医師の証言のみ。

 狩った魔獣のブラウンブルだって、魔狼は追い込んだだけで、最終的に仕留めたのは私だ。


 現在は魔狼がこの地を去ったという事で、報告しても意味はないと思って貰えた。

 私の体にあった爪痕と証言のみでは、報告しても信じてはもらえないだろうしね。


 

 この後、遮音を解き診療室を出た私は、先ほどの話の通りムクムク鳥をベルナ医師に渡した。

 狩りをした事は怒っていても、滅多に市場に出回らないムクムク鳥はとても嬉しかったらしい。


 

 そして休憩から帰って来ていた薬師の子(名前は”ヴィヴィアンナ”16歳なのだそうだ)に挨拶をして、治癒術院を後にした。



 ********************************



 「そこの君達、ちょっと聞いてもいいかな?」


 ロガリア学院祭後の3日間の休みの2日目、街をブラブラしつつ夕食をどうしようかと話しながら歩いていたロベルト、スイゲツ、ルーフェス、クラウスの4人。

 学院祭での初日の余興の踊りと武闘大会優勝の影響か、学院内に居ると何かと騒がしいため、気分転換に出てきた3人とそれに付き合う形で一緒にいるクラウスだった。


 声のした方を見てみると、何だかキラキラしい2人が立っている。


 自分たちもそれなりにキラキラ成分は持っているものの、自覚を持っているのはスイゲツとロベルトの2人だけなので、ルーフェスとクラウスは眩しくて目を細めて後ろへ一歩下がった。

 

 「何故返事をしないのだ。」


 怜悧というか冷たそうというか、いかにも貴族的な感じの騎士服を纏った人が不機嫌そうに言った。

 見たところ、王都中央団の騎士じゃなさそうだ。

 徽章は、西だ。


 (何故、西騎士団の人が・・・・ああ、そうか。

 つい2日前にロガリア学院祭が終わったばかりだったな、居てもおかしくはないか。)

 


 「申し訳ありません。自分たちの事だとは思わなかったものですから・・・何か御用ですか?」

 4人で顔を見合ったあと1歩前に出て答えたのは、ロベルト。


 「ちょっと、シャーロック様!それは人に物を尋ねる態度じゃありません!」


 (キラキラ度が若干薄目の人が、キラキラ度濃い目の人を諌めてるが・・・まだ何も尋ねられてはいない。どうでも良いが夕陽を背に立つのをやめてもらえないだろうか?ものすごく眩しい。)


 「ごめんよ?少し尋ねたいのだけど・・・・君たち”ヴィヴィアンナ”っていう15,6歳の女の子を知らないかな??探してるんだよ、俺の妹なんだけど。」


 15,6歳という事は、ロガリアの生徒の可能性もあるが、4人は首を傾げつつ、しばし記憶を検索した。


 (ヴィヴィアンナ?う~ん・・・知り合いには、いない名前だな)


 「すみません、心当たりがないのですが・・・その方はロガリア学院の生徒ですか?」

 「え?あ、いや・・昨年卒業したから、今は違うのだけど。」

 「そうですか・・・・申し訳ないのですが、僕たちは専門科1年生なので、昨年卒業された方はわかりかねますし、学院外でも”ヴィヴィアンナ”というお名前のご令嬢は記憶にありません。」

 「他の皆もそうなのかな?」

 他の3人も頷いてロベルトの言い分を肯定する。


 「そうか・・・」

 ”ヴィヴィアンナ”という女の子の兄と言っている方は、落胆の色を見せていたが、もう一人は何故だか少し嬉しそうというかほっとした顔をした。



 その様子を見て内心訝しむ4人は、ボソボソと小声で話す。

 (関わらない方が良いような気がするな。)

 (面倒くさくなりそうだよね?)

 (・・・・・・)

 (名前だけ言われてもなぁ?)



 「闇雲に人に聞いてみても始まらないな・・・・そうだ、薬を扱っているところを回ってみてはどうだろうか?彼女は、ロガリアで薬学を修めたはずだろう?」

 「ああ、そうだった!そうですね・・・・そちらの方が堅いですね。」



 何やらこれからの事を相談しているようなので、一応声をかけて退散しようとロベルトたちは話し合った。


 「あの、すみませんが、僕たちはこれで失礼しても良いですか?」

 「あ!声を掛けておきながら済まない。ありがとう、すまなかったね。」

 「いえ、では。失礼します。」



 もうロベルトたちには興味がなくなったのか、対応もおざなりだ。

 4人としても、その方が良いので一応一礼し、すぐに移動した。



 暫くあちこち見て歩いていると、美味しそうな良い匂いをさせている店の前を通りかかり、夕食をここで取ろうという事になった。


 店構えは、冒険者相手というよりは、女性をターゲットにしたような少し洒落た感じ。

 その雰囲気に(ひる)んだのはルーフェスだけで、ロベルト、スイゲツ、クラウスは一瞥しただけで躊躇せずに入っていく。



 店の外に1人取り残される形になったルーフェスがどうしようかと迷っていると近くの野菜などを売っている店を覗いているヴィーを見つけた。

 声をかけようと思ったが、兄イザークの”嫁候補”の言葉が脳裏によぎって声が出ない。



 「何やってるんだ?ルーフェス、入るぞ!」


 ロベルトは、店から出てきてグイグイと腕を引っ張ってルーフェスを強制移動させる。


 その時ヴィーは、冬支度のために箱買いすべく野菜の店の店内に入って行った後で、ロベルトには見えなかった。



 スイゲツ、クラウスが席を陣取り、ロベルトとルーフェスを待っている。

 外装も洒落ていたが、内装もなかなか小奇麗で、あまり他の席からは見られない角の席に4人は収まった。


 「どうしたの?ルーフェス?何で一緒に入ってこなかったの?」

 「・・・・いや、その・・そとの他の店に・・」

 「え?他の店が良かったのか?」

 「違う、近くの野菜を売っている店に、ヴィーがいた・・」

 「え?いたか?俺は気がつかなかったが・・」

 「・・・・・」


 黙ったまま、席に座るルーフェス、心なしか少し顔が赤い。

 注文を取りに来た店員に適当に店のオススメと飲み物を人数分頼んだ。


 

 「ルーフェスさ、あまり気にしない方が良いよ?一昨日、ヴィーから貰ったパイを食べながらイザーク様も言ってくれたんだし。」

 「何それ?どういうことなんだ?」


 実はと、スイゲツはクラウスに説明した。

 ロガリア学院祭最終日に、ルーフェスは家からの”一族の嫁探し”なる仕事を課せられる事になってはいたが、実の所独身のウィステリア家の男子たちが自分で探しているので、それ程気負う必要はないという事。自分のなりたい職についても構わないが、それならば、最低限自分の嫁は自分で探せと言われたと。




 実を言うと、まだ将来の職に関して思い悩んでいたルーフェスのために、イザークが”騎士団の総意”という名の重い勧誘を牽制するために出した”一族から課せらた仕事”なのだが、思いの外ルーフェスを悩ませたらしい。


 イザークはルーフェスがウィステリア家の男子にしては、比較的優しげ?なので本人の嫁だけなら自分で何とか出来るだろうとも思ってもいた。

 もしかしたら、ウィステリア家に嫁いできた途端逃げられてしまう危険性はあるが。それはそれ、これはこれらしい。

 イザークがあちこちで嫁候補を探しているのは、ぶっちゃけ自分のためである。


 


 「・・・・ふ~ん?で?それがヴィーとどういう関係があるんだ?」

 「あ~それはね、イザーク様の話では、ウィステリア家のお嫁さん候補にヴィーが入ってるんだって、それでルーフェスが動揺しちゃっててさ。」


 クラウスは、今ひとつ納得出来ずに聞くと、スイゲツが困った顔をしつつ答えた。


 「・・・・でも、一昨日のイザーク様の感じだと何か自分の嫁候補として考えてるみたいだったよな・・・」

 頬杖をつき、思い出しながら呟く。


 「!」

 「そうなのか?」


 え?と驚いているルーフェスとクラウス。

 ルーフェスはそこまで考えが至っていなかったらしい。



 「そうだねぇ・・・マイクさんに言った言葉を考えれば、そう考える方が妥当かな~?」

 「じゃあ、ルーフェスが今、思い悩む必要はないんじゃないのか?あ、それともヴィーが自分の姉になりそうなのが複雑な感じがしてるだけ?」

 「・・・・・・・・」

 ルーフェスの眉が八の字型になっている。



 「あ~・・・ルーフェスの頭の中での処理がちゃんと終わってないんだね?急いでなんかいないんだから、ゆっくり考えればいいんだよ?ね?」

 「あ、ああ。わかった・・・」

 明らかにほっとするルーフェスに、3人は苦笑いだ。


 

 「でもさ、俺が思うに、ヴィーが嫁に行くって想像できないんだよなぁ・・・どっちかっていうと、嫁を貰いそうな感じがする。知ってるか?今までだって、あいつ女子に結構モテてるんだよ?本人気がついてないけどな。だから、ロガリア学院祭が終わってからの学院生活が始まるのは、俺にはちょっと怖い。」


 「ヴィーが、男子だって思ってる人が多いから?」


 「それも、あるけど・・・うちの魔道具科の女子のように、”女子でも良いの!だって凛々しいんだもの!”ってやつが出てきそうで怖い。武闘大会の試合とかで、そこらの男子より強いものわかっちゃたし、お前らと一緒に踊りなんか踊って、顔の作りだって悪くないって知れただろ?無駄に凛々しいし、女子なのに男前なんだよ!ヴィーは。」



 「「「あ~・・・うん・・」」」


 クラウスの言うことに、反論どころか同意の思いしか浮かんでこないロベルト、スイゲツ、ルーフェスだった。

 

 

この79話は、拙作「それって恋~」とリンクしてます。

よろしければそちらも呼んでくださいね。

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