62. ロガリア学院祭 (3)
62話目投稿です。
結果から言ってしまうと、魔道具科1年生の余興は大成功だった。
屋台たちの立ち並ぶ場所の中央に位置する円形状の舞台で映した2回目の映像終了後に、「ミルトル」を撤収・回収して学院祭の初日余興担当の仕事は終わりのはずだった。
「ミルトル」を撤収・回収して魔道具科の教室に展示すれば、今日はもう学院祭を満喫すれば良いのだと思った。
まさに、そうしようとした時。
魔道具科1年主任教師パスカルが教室に現れ、もう一度武闘大会会場横に1回目と2回目の「ミルトル」を設置し直せと言って来た。
「嫌です。」
「即答か!」
「当たり前です。もう余興の役割は終わったんです。お役御免なはずだ!私の作品として教室に展示してもいいはずなんだ。ってか、そういう予定だったでしょうが!」
他の皆の魔道具が所狭しと並んでいるのに!
この、説明文しか置いてない私の展示スペースのなんと寂しかったことか!
殆ど、今日は教室にいなかったけどね!
想像するだに寂しいわ!
という念を込めて、パスカル先生に抗議をした。
「や・・・確かにそうなんだが。そうなんだが!今回の魔道具科1年生の余興が思いの外、好評でな?」
「それは良かった。好評だったのは、喜ばしいですよね?先生も鼻高々ですよね?」
「だろう?!そうなんだよ!だから・・!」
「では、教室に展示して見に来てもらいましょう!」
「・・・・・・・だめだ。」
「ダメ?どうしてですか?」
パスカル先生の話しでは、1度映像を観た人はもう一度観たいと、そして観ることが出来なかった人は観た者の様子を見て、観てみたいと思うという連鎖反応的な申し出が多過ぎて、学院祭実行委員会事務局が悲鳴を上げているそうだ。
余興の映像を観たいと言ってきた人がどのくらいの人数なのかは判らないが、パスカル先生によるとかなりの数らしい。
とてもじゃないが、この教室には入り切らないそうだ。
教室に観客を誘導して、入れ替え制などにしたら、何時終われるかそれこそ判らないと。
言われてみて、そこまでなのか?とも思ったけど、魔道具科のみんなに迷惑だったり、負担になる可能性もあったからこれ以上の拒否はしないでおこう。
学院祭実行委員会事務局側も、いくら物珍しいとはいえ観客が満足するまで映像を垂れ流すのは得策ではないとも考えているらしく、1回目と2回目の映像を半刻置きに交互に3回ずつ流すようにと言われた。
もう、何勝手なことを言っているんだ?
ふざけてんな、その事務局。
操作するには人員を配置する必要があるんだよ?
こっちはちゃんと役割終えてんのに、更に拘束されるんだよ?
お願いまではいかなくても、要請の形を取るのが筋ってもんでしょう?
なんで一方的に命令してんの?
案の定というか必然というか、人員は2人。
操作が出来る人間は今のところ、私とクラウスだけだから。
学院祭実行委員会事務局?
そういえば、何だそれ?そんな物が存在していたのか?と思っていたら、先生たちのことだった。
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学院祭実行委員会事務局に言われて、もう一度武闘大会会場横に1回目と2回目の「ミルトル」を2つ設置し、操作・撤収と監視の役目を担い、隅の方で椅子に座っているのはヴィーとクラウスだ。
監視とは穏やかではないが、万が一の為らしい。
何にしてもあまり離れての遠隔操作は出来ないようで、操作のためにはどちらかがその場にいないとダメらしいが。
魔道具科1年の余興が再び、武闘大会会場横で観られると聞いてきた人々が続々と集まってきた。
隅の椅子に座っているヴィーとクラウスをちらちらと見ている観客もいる。
ヴィーは視線に気づくと、若い女性や女生徒に向かって視線を送り、愛想良く笑って手を振った。
その視線と笑顔を受けた女性達は、頬を赤らめて手を振り返してきた。
他に好意的ではない視線もあったが、答える義理はないし、全部に構ってはいられないとヴィーはスルーした。
「ミルトル」が作動中に、クラウスが不安を口にする。
「人気なのは結構なことだが・・・明日もやれと言われなければ良いがな。」
そんな可能性がないわけではないと思ってはいたが、その言葉に顔を顰めながらヴィーが答える。
「幾ら何でも、それは学院祭実行委員会事務局とやらが認めないでしょ?明日は、魔道具科2年の先輩たちの担当だよ?」
「・・・・だといいけどさ?武闘大会の本選もあるから。お前とロベルトたちが活躍して、また観たいなんて要望が殺到したら・・・わかんないだろ?」
「そこは・・・どうにかして欲しいね、学院祭実行委員会事務局に。」
1回目2回目の余興の踊りを一通り流し終えたのを確認すると、1人は休憩にし、1人は残って次の準備と見張りをする事にした。
次は半刻後に再び流す予定だ。
そこへロベルト達3人がやって来た。
「ヴィー?ねえ?魔道具科の余興って終わったんじゃなかったの?」
「何故、またやってるんだ?」
「そ、そのちょっと恥ずかしいんだが・・・」
怪訝そうだったり(スイゲツ)、不機嫌そうだったり(ロベルト)、困惑気味だったり(ルーフェス)な顔で問いかけてきた。
「そんな事言われてもなぁ・・・苦情は学院祭実行委員会事務局に言ってくれる?こっちも終わったと思ったのに、もう一度やれって言われて昼も食べれてないんだよ。」
「学院祭実行委員会事務局?何それ?」
「・・・・パスカル先生たちの事みたいだよ。」
「え~・・・・?」
学院祭実行委員会事務局。
生徒たちには認識されていないようだが、秘密組織なのだろうか?
「ところで、後ろに引き連れてる人達は何?」
3人の後方に少し距離を取ってはいるが、明らかに付いて来ている人々がいる。
小声できゃあきゃあ言ったり、ぽーっと顔を赤らめて見つめてたりしている。
どうやら3人のファンらしい。
「あはは、もてもてだね?」
と言ってスイゲツのおでこをヴィーが軽く小突くと。
小声ではない一層嬉しそうな、きゃあ~がたくさん聞こえた。
スイゲツとヴィーはビクッとした後、そのまま一時停止。
「「「「・・・・・・・」」」」
腐女子も紛れているらしい。
スイゲツたちが後方を気にしながら、小声で訴えてくる。
「お昼ご飯を食べ終わったあたりから、ずっとこんな状態なんだよ!」
「それに段々増えていっている気がする。」
「妙に怖い。」
「ああ、スイゲツ達と踊った映像流したのがお昼ぐらいだから・・・・そのせいかな?」
その言葉を聞いて、少し疲れてげんなりした顔をするスイゲツたち。
もしかしてとは思ったが、やっぱりそれが原因か。
今日はもうこのままなのか?
まさか、明日はこうじゃないよな?などと嘆いている。
何か具体的にするわけでもなし、ただ少し距離を空けて付いて来ているだけの女性たちを、どう扱って良いか分からず困っているようだ。
だが、どうにも出来ないのはヴィーも同じ。
「人気者は大変だよね~?」
3人の様子を見て、仕方がないじゃんと困ったようにヴィーは笑った。
「「「他人事だと思って――――――――――――!!!」」」




