55. ロガリア学院 第6回実地訓練 後日談 (2)
55話目です。
ロガリア学院第6回実地訓練は131人の棄権者と30人の合格者で幕を閉じた。
131人の棄権者は再度実地訓練の講義を強制的に受けることなる。
もちろん、通常授業を終えてからの追加講義。
合格者でも希望者は、この追加講義を受けることが出来るようだ。
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この実地訓練終了1ヶ月後には、年に1度のロガリア学院祭が行われる。
ロガリア学院祭は3日間開催され、主な催し物は、班単位の武闘大会、薬学科、魔道具科の自由研究の展示、余興など生徒主催のものから、王都中央の街から屋台などの業者が入り、賑やかになる。
魔道具科1年生は、初日担当として2回ほど余興を開催することになっており、場所も1回目は武闘大会予選前にその場所を割り当てられ、2回目は屋台などが設置してある場所の中央部分が余興の舞台だ。
その割り当ては、魔道具科1年生の余興が設置・撤収にあまり時間がかからないことが主な理由だった。
既に当日設置するだけで、前準備は必要のない魔道具科1年生は個々の自由研究の配置と飾り付け、看板作成などを検討しており他科よりも余裕あるようだった。
「私のは、余興が終わった順に並べるから場所だけ開けて置いてくれる?最初は説明文を置いておくだけになるから。」
配置場所をみんなで検討中にヴィーが考えながら言った。
ヴィーの要望を受け、更にクラウスが提案をする。
「あ、それなら余興で一緒に使った子の魔道具を近場にまとめて置くのもいいかもな?どこの場面で誰の魔道具を使用したとかの説明をいれて・・・」
あーだこーだと皆でワイワイやりながら、話を詰めていく彼らはとても楽しそうである。
実際こういう催し物は、得てしてみんなで準備している時が一番楽しいものなのだ。
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午前中の授業は終わり、ロガリア学院の生徒が各々昼食を思い思いの場所で取っている。
ワイワイと学院祭の準備に追われている生徒たちの中、学院の食堂の一角で2組の男女が昼食を取っていた。
ヴィーが元いた、実地訓練5班の4人だ。
騎士科1年生のバードフォルト・ハイ・ル・キューポラとルカエンド・ハイ・ル・エーバンス。
魔術科1年生のルアーナ・ナイ・ル・パフィルスとティファーナ・マイ・ル・ディディエ。
「・・・・前回までは成績上位の俺たちが、こんな失態をするなんて・・・」
「・・・何がいけなかったって、前回までと同じように考えて行動してしまったからだろ?」
「・・・そうね。」
「・・・追加講義を受けて、意識を改めないといけないってことでしょう?」
この4人も実地訓練を棄権した者たちだった。
今回の実地訓練でもヴィーがいた前回までと同様に、東区で遭遇する可能性のある魔獣を調べたり、地図を確認したりの下準備をせず、実地訓練が始まっても危機感がないのか索敵や警戒もしないで突き進み、野営荷物が重いと進む速度も遅くなったりしているところを突然魔獣に襲われた。
何とか倒しはしたものの、いつもはあまりしない怪我などを負ったり、更に”素材の剥ぎ取り”を巡って喧嘩をしたりしているうちに再び魔獣に襲われ、どうにも対処出来なくなって緊急信号魔弾を打ち上げた。
駆け付けた西騎士団の騎士に護衛されながら、王都中央東門付近に設置されていたロガリア学院の実地訓練監督担当教師達のテントに行き、棄権する事となった。
前回まではロベルト達と首位争いをしていたくらいの成績上位の自分たちがまさかの棄権。
ルアーナが静かに提案した。
「ねえ?今回何がいけなかったのかを具体的に上げてみて、検討していかない?感情的にならないように。」
「そうね、冷静に分析してみるべきだと思うわ。どう?バード、ルカ?」
「そうだな・・・・そうすれば、どこをどう改善すれば良いのかが明確になるか・・」
「うん、そうだね。賛成。」
「まずは・・・・、事前に遭遇する可能性のある魔獣を調べたり、地図を確認したりの下準備はするべきだったと思う。」
「そうだな・・・・危機感が薄かったのはまずかったと思う。索敵や警戒は重要だな。」
「ええ、それに野営荷物が重いなんて言ってられないわ・・・慣れなくてはね。」
「それと”素材の剥ぎ取り”についてもう一度学び直すことかしら・・・」
「「そうだな・・・」」
「それともう一つ・・・・喧嘩をしている時にその事で頭が一杯になって周りが見えなくなるのが一番問題かもしれないって思いましたの・・・・私もそうだったもの・・・反省しているわ。」
「「「・・・・・・」」」
ルアーナの言葉に反論はでない。
他の3人にも身に覚えが有りすぎるくらいあるのだ。
やっと自分たちの事を冷静に振り返る事が出来るようになり、今までもかなりの問題があったことに気がついたようだ。
「もしかして、ヴィーが僕たちの班を出て行ってしまったのは、ほとんどが今上げた事が原因かな?」
ルカエンドが今までを振り返ったことで、思いついた事を言った。
「・・・・考えてみれば”素材の剥ぎ取り”以外は、ほとんどあいつが賄っていたか?」
「いいえ。それ以上ですわよ?」
「他に何かあったか?ティファーナ?」
「事前に遭遇する可能性のある魔獣の調査、地図を確認したりの下準備、索敵や警戒、野営荷物の運搬に管理・保守、食事の用意・片付け、更には、魔獣の討伐証明の部位の確認・・・・その上、私たちのどちらかが喧嘩をしている時の補助。」
「それ全部だったか・・・?」
「そ、そんなに・・・?」
ヴィーがこなしていた具体的なことを並べられて驚くバードフォルトとルカエンド。
「ええ・・・・色々省みて具体的に上げてみましたら・・・・もう、恥ずかしくなりましたわ。しかも、私、ヴィーが退班を宣言した時”あなた以外貴族だから気後れしてしまったとでも?”なんて聞いてしまって、そんな事が理由ではなかったのに・・!」
ティファーナは悔しそうに泣きそうになりながら、話し終わると俯いた。
「そうですわね・・・本当に冷静になって省みてみると、ヴィーは色々忠告もしてくれていたのに聞いているつもりで、私たち全く聞いていなかったんですわ・・・ティファーナだけではないわ。あの時私だって”今まで仲間として良い感じだったと思いますわよ”などと・・・・」
ルアーナもティファーナ同様、泣きそうになりながら、話し終わると俯いてしまった。
バードフォルトとルカエンドは女子2人の言葉を受け、俯いて考え込んだ。
やがて、意を決したようにバードフォルトが3人に顔を向ける。
「ヴィーに謝罪して、俺たちの班に戻ってもらうのはどうだろう?今度からは忠告も真剣に聞くし、何もかもをヴィーに任せっきりにしないように皆で話し合って役割を分担するからと。」
「そうだな!あいつも単独で実地訓練に参加しているようだし、負担が軽減されれば、一人より絶対いいはずだしな。」
いい考えだと4人の気分は底辺から上昇しているように盛り上がっている。
偶然彼らの後ろの席で食事を取っていたクラウスは、聞こえてくる話にうんざりしつつ、実地訓練時のヴィーのあまりの負担の多さに、本当に大変だったのだと深く同情していた。
そして、最後の会話を聞くとこれは先に知らせて置かないと、奇襲をかけられ絆されてうっかりまた彼らの班に逆戻り、なんてことになりかねないと危惧したクラウスは、昼食を終え足早に魔道具科の教室に戻っていった。
クラウス・タイ・ル・トルス、結構世話焼きさんである。




