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理不尽な!?  作者: kususato
54/148

54. ロガリア学院 第6回実地訓練 後日談 (1) 

54話目です。

 


 スイゲツとクラウスに部屋に放り込まれ置いていかれたロベルトとルーフェスは、固まった状態から徐々に回復していった。

 そして、ポツポツと会話を始めていた。


 「なあ、ルーフェス・・・・ヴィーが女子だと気がついていたか?」

 「全然・・・気がつかなかった。」

 「そうだよな・・・・・というか、本当に女子だと思うか?クラウスが俺たちを(かつ)いだとは思えないか?」


 今だに信じられないのか、疑問を口にするロベルト。

 「・・・俺たちがからかわれたとして、クラウスに何の面白みがあるんだ?」


 そう、クラウスには何の得にもならない上に、スイゲツもそれを否定しなかった。


 もしそれ(・・)を言ったのがスイゲツだったなら、面白い反応が彼らから(特にルーフェスから)得られるかもしれないという遊び心的な冗談だと判断も下せる。



 考えてみれば、ヴィーの一人称は”私”。

 所作は女の子らしくはないが、男の様に雑でもない。


 だが。

 容姿は、美形ではないが整っているだろう顔は凛々しいと言える。


 体格は、13歳の女子としては高めの身長だが男子としては少し低め、だが姿勢も良く細身だが運動能力は低い訳ではないのは共にギルドの仕事をした時の動きで分かるため、筋肉もそれなりについているはずだ。


 言葉使いも女言葉とも男言葉とも取れるが・・・・どっちかというと男寄り。

 性格は飄々として中性的だが・・・・どっちかというと男寄り? 

 女子ならほんの少しくらい見え隠れしても良さそうなのに、男に媚びる感じは全くない。

 そして何より、女性なら肩より髪が短いなどほとんどないのに、ヴィーは髪が短い。


 それが、クラウスの言葉を信じきれない要因だった。


 やっぱり、クラウスは冗談を言ったのではないかと。

 ヴィーが女子であるわけないじゃん、と。


 どうも、思考から抜け落ちてしまっているらしいが、2人ともついさっきまで、心配というか気にかけていた同級生のことはもう良いのだろうか?

 そんな事を話しているうちに夕食の時間が近づき、スイゲツとクラウスが帰って来た。


 そのまま流されて食堂で夕食を4人で取ったのだが、実地訓練から帰寮してきた他の1年生の姿は見えなかったが、ヴィーから聞いてきた話しをここでするのは躊躇われ、ロベルトとルーフェスがとらわれていていたヴィーが女子か男子かの話もしずらかったのか無言で食べ終えた後、再びロベルトの部屋へと戻った。

 


 「「ヴィーは本当に女子なのか?!」」


 部屋に戻った途端、ロベルトとルーフェスは揃って聞いてきた。

 同級生の様子とヴィー、彼らの知りたい事柄の優先順位はそちらが先のようだ。

 

 「え?まだそれ疑ってたの?」

 「何だ案外しつこい奴らだな。」

 「だが!考えれば考えるほど、ヴィーが女子である事を否定する事柄しか浮かんでこないんだ!」

 「うわ、失礼だなロベルト。もしかして・・・・ルーフェスも?」

 「う・・・すまん。」


 「嘘はついてないが・・・・証明しろと言われても無理だぞ?裸見たわけでもないしな。」


 「そ、そそ、そんな!こ、ここ!は、はだ、はだ・・・!!」

 「・・・・そーぞーした?ルーフェス?やーらしー・・・」

 「し!しし!してない!ない!ないったらないったらない――――――!!」

 

 クラウスの直接的な表現に過剰反応を示し、スイゲツに茶化され真っ赤になって動揺するのはルーフェスだった。

 そんなルーフェスを見て冷静さを取り戻すロベルト。

 まさに人の振り見て我が振り直せである。


 「そんなに本当かどうか疑問に思って事実を確認したいなら、学院の先生に聞けば?基礎科に入る時と専門科に進学する前に健康診断をしたはずだろ?先生たちなら知ってるはずだし、嘘ついても何の得にもならないだろうから君たちだって信用出来るだろ?」


 至極真っ当で確実な方法を提示するクラウス。

 対してスイゲツは違う方法を提案する。


 「本人に直接聞いてみれば?勘違いされてるのを知ってはいるけど、正してないだけだからさ。」

 「何で正さない?」

 「切りがないからじゃないか?魔道具科の生徒以外はそんな感じらしいから、いちいち面倒くさいだろ?」


 「「う~む・・・・・」」

 納得できないらしい。

 堂々巡りな状態になり、ヴィーが女子だと教えたクラウスはちょっと早計だったかな?と後悔し始めていた。


 「なあ、それってそんなに重大な事か?ヴィーが男子だろうが、女子だろうがお前たちに何か影響があるのか?・・・・まあ、ロベルトは女嫌いなんだろうが、嫌なら無理して付き合わなきゃいいだろ?」

 

 クラウスの単純な意見にキョトンとする3人。


 「何なら、俺からヴィーに伝えとくぞ?お前らにヴィーは女子だって教えたって、さっき伝えてきちゃったし。男じゃないなら付き合いはもうしないって伝えてやるよ。それでいいだろ?」


 「え?そうなっちゃう?僕は付き合いやめないけど。ロベルトたちはそうする?」


 再び、頭が混乱してきたロベルトとルーフェスは言葉が出てこない。


 沈黙は肯定と取られることもある。

 スイゲツとクラウスは肯定と受け取った。


 「じゃあ、そういう事で。」

 「分かった、じゃあ次に話題に移ろ・・」


 「待て待て待て待て!!」

 ロベルトから物言いがつきました。

 

 「何?次の話題は”今日ゾロゾロ帰って来たけど、様子の可笑しい同級生について”だよ?」

 「待て!勝手に次に移るな!まだ解決していないだろうが!」


 スイゲツとクラウスは、え~まだそれ?もういいじゃん~という心の声がダダ漏れの顔をしてロベルトを見た。

 そこで、しばらく黙考していたらしい、ルーフェスが口を挟んだ。


 「スイゲツ、クラウス、すまなかった。確かにヴィーと今まで通り友達として付き合うのに、女子であろうが男子であろうが関係ないよな。少しだけ、彼女が女子である事を頭の片隅に置いておくことにする・・・・・ロベルトはどうする?」


 「・・・・・・・そうだな。女特有のいやな感じがしない女子である事は確かだな。付き合い方を別に変えるわけでもないしな・・・・・・・女子だって急に知らされてびっくりしただけだ。ヴィー自身が嫌なわけじゃない。あいつ、結構面白いしな・・・・・・スイゲツ、クラウスすまなかった。ヴィーにも謝った方がいいだろうか?」


 「いや、謝ってもらってもヴィーが困っちゃうって。そのままでいいんじゃないの?」


 それはそうだ。

 それになんといって謝るつもりなのか?

 ”ヴィーを男子と間違えててクラウスに教えてもらってわかった。すまなかったな。”

 ”ああ、そうなんだ”としか答えられないでないか。

 謝られているのに謝られていないような・・・・・モヤモヤ感満載なこと間違いない。

 

 

 「そうか・・・・・・そういえば、”ヴィー”とは愛称なのか?それともそのままで名前か?」

 「ううん、愛称だよ?正式名は”リヴィオラ・ショーノ”っていうんだ。」

 「リヴィオラ・・・・・案外可愛い名前なんだな。」


 


 無事?解決したことで次の話題である、実地訓練から帰寮してきた他の1年生の様子が可笑しかったのは、慣れない”素材の剥ぎ取り”ではないかとヴィーから聞いてきた話をすると。


 素材の剥ぎ取りをして気分が悪くなったり、やろうとして出来なかったりで実地訓練を棄権して来たら、ショックを受けたり、放心したり、情けなくなったりするかもなとあっさり片付けた。


 言われてみれば、やはり彼らも自分が通ってきた道という事で理解は早かったようだ。


 

 

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