5. リヴィオラとロイナス(1)
5話目の投稿です。
ここは、ラフューリング王国、北区に属するジオターク村。
ここ北区は、別名、極寒区とも呼ばれ、居住するには厳しい土地柄だが、短い夏の季節だけは過ごし易くなる。
穏やかな日差しが指し、爽やかな風がふき、この地区のあらゆる生き物たち植物たちが生き生きとしているのだ。
そんな短い季節を謳歌するような青々と繁った葉の間から、時折指す陽光が眩しく煌く大樹の根元に、ちょこんと座って本を読んでいる少女がいる。
少女の名前は、リヴィオラ・ショーノ、11歳。
実際の年齢よりも少し幼くみえる。
髪は黒、瞳も黒と、この国では少し珍しい色を持ってはいるが、他に際立って目立つ要素は見えない。
そこに、17,8歳くらいの青年が近づき、少女を見ていた。
しばらくすると、青年は、微笑んで少女に声を掛けた。
「やあ、君がシェリルの娘さんかな?」
「・・・・・?」
この人はリヴィオラの母、シェリルの知り合いらしい。
初対面のはずだ。
それは、青年の言葉からもうかかがえる。
リヴィオラにも、この青年に見覚えがない。
しかも、帯剣している。
それだけで、警戒するに価する。
貴族のご令嬢方なら、うっとりしそうなこの青年のキラキラした瞳に見惚れることなく、リヴィオラは、静かに逃げるための魔術を構築する。
(この無駄にキラキラしいのは、目の虹彩のせい?それとも目に何か入ってるの?・・)
リヴィオラには、彼のキラキラしいのは無駄に思えるようだ。
「ふふふ、下の双子と違って、シェリルに似ていないね。」
リヴィオラの警戒度が上がった!
双子の弟たちの顔も、すでに知っているらしい。
(笑ったね?おかしいですか?そうですか。私は、父親似ですからね。)
ご近所でも可愛いと評判の双子の弟達は母親似だ。
そんなことは、人に言われなくてもわかっているし、仕方のないことではあると諦めてはいるが、美人である母、シェリルと似てないということが、リヴィオラのコンプレックスであることに変わりはない。
(別に父様の顔が、笑っちゃうほど不細工でもないし、嫌いでもないけどね。)
とはいえ、青年の容姿の端麗さ、優雅な所作、そして騎士の制服。
おそらく貴族であろうことは予想できるので、警戒は緩めないが、感情に任せての口答えもしない。
母のシェリルとどういう知り合いかは分からないが、前に居た土地では、平民は貴族に会ったら、貴族の許可無く話してはならないようなことを貴族の子に言われた事があるし、確かひどい罰則があったはずだ。
自分ばかりか、家族にまで類が及ぶのは嫌だった。
「ロイナス、リヴィオラ嬢に会えたかい?」
別の人の声がした方に顔を向けてみて、驚愕した。
年の頃は、先の青年と同じくらいだが、波打つような艶やかな黒髪に、揺らめくような色合いの灰青の瞳の、美形だった。
何か、年に似つかわしくない色気も醸し出しているようだ。
それはリヴィオラをビビらせただけだった。
(何かが!何かがダダ漏れてるーーー!!)
(同じ黒髪なのに!艶がちがう!質が違う!・・・・乙女の敵!!)
しかも、敵認定された。