48. マイカの土産話
48話目投稿です。
マイカが旅立って約1ヶ月ほど経ちました。
そしてマイカが旅から帰ってきました。
ものすっごくスッキリして、王都中央に戻って来たようだ。
ものすっごく良い笑顔で、今俺の前にいる。
「おかえりなさい。マイカ、心配しましたよ?」
(東区北区の境界付近の魔獣たちを!)
「マイク!すっっっごくっ楽しかったっっ!!」
遮音結界を高速で構築展開発動ー!
「遮音。人の話聞けや!会話を成立させろよ!姉貴!」
微笑みは崩さない。
だって、ここは王都中央騎士団宿舎に隣接されてる騎士団用応接室だもん。
姉弟といえど、女性であるマイカを宿舎内の俺の部屋へ通すことはできない。
例え姉がどんなに男前でも、姉は女性・・・・・・・だ。
たまに俺とヴィーの前で全裸になったりするから分かっているはずなのに、それでも時々、もしかしたらマイカは男なのでは?と疑う俺がいる。
(というか、人前で全裸になるなよ!風呂でもないのに!)
「ところで・・・・・・・・まさか、東区北区境界の魔獣・・・・」
「魔獣?・・・ああ!行きは3頭くらい狩ったかな?帰りは海路を使ってきたから狩ってないけど。」
(よかった!殲滅はしていないんだな!)
「魔獣を狩るどころではなくてさ。」
「北区のどこに行って、何をしてきたんだ?」
「山奥で、農業してきた!」
「・・・・・は?」
「だから、宿泊して、農業してきた。」
「何言ってんだよ?あそこは全体的に寒すぎて作物なんてあんまり育たないじゃん。だから、魔獣とか魔石とか鉱石とかの北の特産を売って、他の地区から食料買ってるんだろ?」
「そうだな。」
「?」
「まあ、発端はシュンの”~が食いたい!!”という発作らしいけど。試験的にやってみたら、結構うまくいったって感じだな。あれを北区全体にはさすがに適用はできないって解ってるみたいだよ。」
「そりゃそうだろ・・・・魔術とか魔石を使って強制的に土地の気候を変えてしまったら、気候のバランスが崩れてたらどうなるかわからないからな。」
「違う違う。そうじゃなくて、その場所が特別なんだってことだよ。」
「え~?ちゃんと分かるように説明しろよ?わかんないよ!」
「精霊の加護がすごくある場所っていうか、精霊たちが色々ウヨウヨ・・・・・住んでる場所?」
「精霊が色々ウヨウヨ・・・・・・・?」
(それ、精霊に対しての表現としてどうよ?何か別なもの想像するぞ?・・・・・・虫とか。)
「北区の山奥で師匠とシュンが偶然みつけた場所なんだって言ってたよ?」
「はぁ?いくら精霊の加護があったって一時的ならまだしも作物を育てるくらいなら結構長期にわたるってことだろう?そんな事して、精霊の怒りとか買っちゃったりしてんじゃないだろうな?」
「それはない。」
「いやにはっきり断言するな?根拠は何?」
「そこの精霊と話し合って、一緒にやってることだから。共同作業。」
「・・・・・・・・・あのジジイども本当に一体何をやらかしてんだ・・・?」
「実はさ、師匠とシュンが北区の山奥を散策してて、周りの景色と違う場所に急に入り込んでしまって、戸惑っていた所に精霊の襲撃に合い、拳を交えて闘い、6時間に及ぶ激闘の末・・・・互いに大笑いして和解したって聞いた。」
「何それおかしい!最初からおかしいから!北区の山奥って気軽に散策出来る場所じゃねーし!周りの景色と違う場所に急にって、桃源郷?!蜃気楼都市か?!それとも雪国?あ、これは違う。6時間の激闘?!耐久?耐久レース?!・・・・・・最後は昔の青春ドラマか!!」
「ダヨネー、ワタシモソウオモイマシタ。師匠とシュンの散策部分は突っ込んでも疲れるだけなので、もうスルーして精霊側に聞いてみた。」
(懸命な判断かもしれない。)
「うん、そうか。それで?」
「突然入り込んだ人間とか生き物を自分たちの住処から駆逐したかったら、どうして和解して受け入れたの?相手は2人、住んでいる精霊の方が圧倒的に多いんだから、数の利で放り出してしまえばいいのに、と。」
「それ、絶対聞き方可笑しいよな?!」
「そうしたら、客は滅多に来ないから基本的に歓迎なんだってさ。でも、そこの精霊の土地っていうか、村?・・・・いや、もう町かな?の客というか友人となるためには、自分たちと同等以上に闘えなければ受け入れられないという掟があるんだそうだ。」
「なんて、アグレッシブな掟のある精霊のむ・・・町!」
「でな、仲良くなって町を案内してもらったりしていたら、稲を見つけたんだって、ほんの一角だったんだけど、そこ米を作ってたんだ。」
「!!」
「何でも町の昔の文献にあった作物で試しに作っている最中なんだけど、あまりうまくいってなかったみたい。元の苗はどこから調達したのかまでは聞けなかったけど。」
「シュンが水田にしてみよう!・・・・なんて言った?」
「そう、北区の気候とそぐわないけど、試している最中ならそれも試してみるかとかになったらしく・・・結果は。」
「うまく出来ちゃったんだな?」
「そう、精霊の加護ってすごいね!」
「それで済ましちゃうのか・・・・?」
「詳しいところは聞いてないんだよ。忙しくなっちゃってさ。師匠には逆らえないから、強制農作業だもの。」
「そうか・・・・そうだよな。まだ、ジジイには勝てないか・・・くっ!」
「まあ・・負けはないんだけどね。弱点を付けば・・・・諸刃の刃だけど。」
「・・・・・”ヴィーに言っちゃうぞ”は有効なんだな?」
「今だにね。」
「「・・・・・ふふふふふ・・・」」
マイカと話しをしていて、ふとある事が気になった。
「マイカ。」
「何?」
「その精霊の町で、マイカも農作業してきたんだよな?」
「そうだよ。」
「精霊の町の客もしくは友人にならないと居られない町なんだよな?」
「そうだよ。」
「そのためには、精霊たちと同等の力を示すために、闘わなきゃだめなんだよな?」
「そうだよ。」
「マイカは・・・・6時間耐久レース・・・いや、精霊たちと闘ったのか?」
「いいや?私は闘ってない。」
「何で?」
「自力であの精霊の町に辿り着ける女には適用されないそうだ。客も稀だが、それが女だったのは、300年前以来だって。だから辿り着いてすぐに、ものすごい歓待を受けてる途中で、シュンと師匠に会ったんだ。」
「へぇ・・・・・男に厳しい掟だね・・・・」
(確かに、女性で北区を走破するのは稀だろうな・・・でも、何だろう?マイカに対しては掟を発動してもいいじゃないかなって思う俺は・・・ダメ?)
「でな、帰りにお土産もらってきたから、マイクの都合が良かったら、今夜の夕食をヴィーと3人で一緒にしないかと誘いに今日はここに来たんだ。」
「お土産?え?!もしかして、さっき言ってた米?!うそ!食いたい食いたい食いたい!!行くから!仕事終わったら絶対行くから!俺の分残しておいてくれよな!」
(え?!嘘!ホントかよ!!マジ嬉しい!!米!ご飯!ご飯!卵かけご飯とか!!食べたい!!!)
「そうでしょうとも!あははは、大丈夫だって、たくさん貰ってきたから心配しなくても大丈夫だよ!マイク!でも、今回はヴィーの拡張魔術付与のバッグ持っていき忘れちゃって持って帰ってくるのに苦労したんだからな!感謝しろ!」
(うわーうわーうわー!何年ぶり?米の飯!!)
「うん、感謝感激だよ!マイカ!!」
「じゃあ、先にヴィーの家に行ってるからな?」
「あ、うん!・・・・遮音、解術。わざわざご足労ありがとうございました、マイカ姉さん。」
「ああ。」
「あ、ところで、たくさんとはどの位持って帰られたんですか?」
「ん?二俵。じゃあな、マイク!」
「に・・?!」
(二俵――――――――――!?)
(どんなに言葉を荒げても突っ込んでも遮音結界で声は外には漏れはしない。でも今までずっと顔は微笑みを絶やしてなかったが、今ちょっとだけ引き攣った。)
米俵 一俵約60kg




