43. ヴィーとクラウスと弟組 (1)
43話目投稿~です。
5人はモグモグと昼食を取りながら、ヴィーの評価提出用の魔導具の魔石の映像を見ていた。
5人の周りには遮音の結界魔術が発動しているため、外に音が漏れることはない。
映像自体もそれほど長時間のものではなく、1つ3~4分程度のものなので食べ終わるのと大差ない時間で見終えていた。
映像の中身はどちらとも曲と歌に合わせて、2人が踊っているものだ。
1つはヴィー曰く、可愛い系かな?なもの。
もう1つは、カッコイイ系かな?なもの。
2つとも映し出される映像の背景も映っている人物たちの服装にも変化はないが、視点が上からだったり、斜め下だったりと時々変わったりしていた。
だがどちらも、クラウス、スイゲツ、ロベルト、ルーフェスらには馴染みのない、聞いたこともない曲と歌、見たこともない踊りだった。
そして、食べ終え、そして映像を見終わってクラウスは言った。
「評価提出するなら、こちらの”カッコイイ?系”の方にしろ。」
「え?理由を聞いても良い?」
「”可愛い系?”の方は、どうにも違和感が拭えない。気持ち悪い。」
「クラウス・・・・そんなはっきり・・ごほごほ。」
クラウスは躊躇なく、実に直接的答え、そんなクラウスにヴィーを気にしながらもスイゲツも自分の気持ちを言いかけて・・・・誤魔化した。
「評価提出された物を評価する側が、映っている人物にまで配慮して評価するわけがない。だが同じ物を評価するなら”可愛い系”の方は良い印象は与えないことは確かだと思う。っというか、俺ならムカつく。」
「クラウスったら・・・・正直者だね。」
あまりにはっきりと言うクラウスに、ヴィーは怒るでもなく落ち込むでもなく素直に助言に対しての感想を述べる。
「助言が欲しいと言ったのはヴィーだからな?魔導具の評価としては・・・娯楽方向を狙っているなら面白いと思うぞ?こんなの今まで見たこともないからな。」
「うん、ありがとう。クラウスの助言を有り難く受け取って、”カッコイイ系”の方を提出する事にするよ。」
ヴィーとクラウスはお互いにっこり笑って握手した。
「ところでヴィー、ヴィーと一緒に踊っていた人って、昨日会った王都中央騎士団のマイク・バンブーさんに見えたんだけど・・・・?」
「え?!王都中央騎士団のマイク・バンブー?!・・・・さん?・・・・・あっ!」
スイゲツが恐る恐るヴィーに聞くと、先ほどと打って変わって、驚いて声が裏返ったクラウスがヴィーに詰め寄る。
頭の中で映像をリピートしてみたらしい。
「え?」
「おま、お前!王都中央騎士団のマイク・バンブーさんに何させてんだ?!ヴィー!!」
「見てて気がつかなかったのか?その様子だと顔を知ってるみたいじゃないか、クラウス。」
「それは・・・だってロベルト、王都中央騎士団の制服じゃなかったから。何か雰囲気も違うし・・・!」
「え?有名なの?」
「何言ってんだよ!?王都中央騎士団配属2年目にして、次期王都中央副騎士団長と言われてる人なんだぞ?!」
「へ~・・・・」
「へ~って、なんでそんな反応薄いんだ!この王都中央騎士団配属になってからも驕ることなく、誰にでも紳士的な態度で接し、更に騎士団では仕事もでき、剣の腕も魔術の腕も指折りの実力者。その上、あの甘い顔立ち!人気も絶大だぞ?!知らないのか・・・・?」
(昨日の朝、朝ご飯を俺も俺も俺の分も~と駄々こねた人と同一人物の評価とはとても思えないな。実力はある程度知っていたけど、すごいな、マイク兄の猫。)
「知らなかったー。でも、昨日ロベルト様たちが会ったのは確かに王都中央騎士団のマイク兄だけど、その魔石の映像で私と一緒に踊ってるのはマイク兄じゃないよ?」
「「「「え?!違う!?」」」」
「うん、違う。」
「じゃあ・・・・誰なんだ?こんなに似てるなんて・・・」
「そりゃあ似てるよ。双子だもん。ここに映ってる人の名前はマイカ・バンブー、冒険者なんだ。」
「「「マイカ・バンブー??!!」」」
「冒険者のマイカ・バンブー・・・・まさか、あの旋風の琥珀・・・か!?」
「!!」
(何その厨二病的な呼び方!!二つ名?二つ名付いちゃってんの?!マイカ姉――――――!!!)
「もっとも、本人の容姿はあまり知られてない事もあって、この旋風の琥珀という二つ名も本人は知らないって話だけどな・・・周りが密かに言ってるだけのようだし・・・・」
(マイカ姉知らないんだ!良かった!でも、マイカ姉のそんな二つ名知っちゃって!次会った時どうしよう!?旋風の琥珀!旋風の琥珀だよ?!恥ずかしくてヴィー速攻逃げちゃいそうだよ!)
ヴィーは態度にこそ出してないが、動揺するわ困惑するわ笑っちゃいそうになるわで心中は大変な状態だった。
「なあ、何でヴィーがマイクさんと旋風の琥珀と知り合いなんだ?・・・旋風の琥珀にこんな風に一緒に踊ってもらえるなんて・・・・」
(お願いクラウス。旋風の琥珀って言うの、やめて、笑いだしそうだ!)
「何でって・・・・2人とも私の祖父の弟子で、私とは兄弟弟子という事で昔から知ってるからかな?」
「兄弟弟子?!!うおおおおおおォォォォぅぅぅぅぅ!!!」
「!?」
突然叫んでうねうねと悶え始めたクラウスにちょっと引くヴィー達。
「お、落ち着け、クラウス、しっかりしろ!」
「・・・・・・・・・・・はっ!気持ち悪いとか言ってすみませんでした!ごめんなさい!!旋風の琥珀のマイカさんに言わないでくれ!!ヴィー!!」
クラウスは悶えていたかと思ったら急に土下座する勢いで謝ってきた。
「べ、別に言いやしないって・・・もう、王都中央にいないし。」
「いない・・・?」
「うん、今朝、西区方面の仕事が入ったらから、しばらく王都中央に来れないって言って出掛けたたから。」
「・・・・・それは安心した・・・・・・けどぉ!そんな会話までするくらい親しいって・・・・はっ!まさか!まさかまさか!マイクさんともそんな感じに親しいのか!?」
「親しいんじゃないのかな?昨日会ったときに、僕”ヴィーと仲良くしてくれてありがとう”みたいな事を言われちゃったくらいだから。」
「ぬおおおおおおぉぉぉぉぉ・・・・!マイクさんんんんん!!!なんっっって!羨ましい!羨ましすぎる!!羨ましすぎるぞぉぉぉ!!!ヴィー!!!」
「お、おい!クラウス!」
制するロベルトの声も聞こえないのか、先ほど以上に、頭を抱え込んで上下に激しく体を動かして叫ぶクラウスにヴィーも慌てていた。
「!!そ、そんなに?・・・・・で、でも、ちょっと怖い!怖いって!今のクラウス!怖いから!おおおお、お、落ち着いてよ!」
「ヴィー、君も落ち着け。」
いままで黙って見ていたルーフェスが見兼ねてヴィーに声をかける。
「もうー!クラウスー!しょうがないな!それいけ、僕の氷の小石!」
ごぃん!!
スイゲツが放った魔術の(小石というにはちょっと?大きめ)手のひら大の氷の塊が、クラウスの顔面にクリーンヒットした。




