41. 魔道具科 (2)
41話目投稿します。
「で?どうするの?」
パスカル先生が連絡事項を伝え終えて教室を出て行ったあと、ふわふわな柔らかい金髪で、翡翠色の瞳を持ち、ぽにぽにしたくなる感じのフローラが魔道具科1年の皆に問いかけたあと更に続ける。
「1.未だに起きないクラウスをたたき起こし、余興担当長になった事だけ教えて自分たちの研究に戻る。
2.クラウスが起きる前に他の皆である程度決めて、そのメモだけ残して自分たちの研究に戻る。
3.このままクラウスに丸投げして自分たちの研究に戻る。さあどれ?!」
可愛らしい容姿、可愛らしい声でフローラは、結構酷い三択を上げ皆に投げかけた。
「なかなか鬼畜な三択ね?では・・・4番、クラウスの額にお星様を描く!」
「俺は5番、クラウスの瞼に目を描く!」
「僕は6番!クラウスの頭に大きな真っ赤なリボンを付ける!」
「まあ、クラウスには白いリボンよ!」
「・・・・分かった。6番変更!クラウスの頭に大きな真っ白なリボンを付ける!」
「7番、クラウスが起きるまで皆でクラウスを囲んで寝る!」
「う~む、どれも甲乙付け難い・・・・」
「「「「・・う~ん・・・・・」」」」
寝ている彼を起こして余興について話し合うという、普通の選択肢は彼らから生まれることはなかった。
「おはようーみんなーひさし・・・・・うおあっ!?・・・・なにこれ?」
遅れて教室に入ってきて女子らしからぬ声を発したヴィーが見たのは、クラウスという男子の周りで屍累々よろしく寝ている?15人の魔道具科1年のみんなだった。
屍累々よろしくという言葉は合ってないのかもしれないが、そう表現したくなるような光景だった。
ある者は大きく”毒”と書いてある大きい瓶を抱えて項垂れて足を投げ出し座っている。
ある者は紐を首に巻いて絞殺死体っぽく。
ある者は座った体勢で箒を脇に差し抱え、口から血糊を垂らしている。
ある者たちはただ折り重なって床にいる。
これは一番下の者が苦しそうだ。
ある者は、うつ伏せで伸ばした指先でダイイングメッセージを残していた。
ダイイングメッセージの内容は、”赤いスライムに栄光あれ”。
チョークの粉で書いたらしい。
赤いスライムが好きな事だけは分かった。
でも意味が分からない。
クラウスの周りのみんなは、何故か思い思いに死体に扮していたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
意味がわからない、みんなの意図もわからない。
どうしよう?
ヴィーは迷った。
この中に自分も混ざるか。
みんなを起こしてクラウスを放置するか。
クラウスだけ起こして、他を放置するか。
見なかった事にして教室を出て行くか。
どうしてだろうか?
迷っていても、両方起こすとか先生を呼びに行くとかいう選択肢はないようだ。
ヴィーは机に突っ伏しているクラウスの体をそっと起こし椅子の方に凭れ掛けさせた。
自分の履いていた右足のショートブーツを脱ぎ、靴底の汚れを軽く落とす。
クラウスの前の空いた机にうつ伏せに乗り上げ、脱いだショートブーツを自分の背中に靴底を下にして乗せ、手足の力を抜いた。
ヴィーは”自分も混ざる”を選択した。




