40. 魔道具科 (1)
40話目投稿します。
実地訓練に参加をしなかった或いは有志参加の薬学科と魔道具科の生徒は、通常授業は無い。
だが休みという訳でもなく、薬学科と魔道具科には成績に関わってくる評価提出のための課題と自由研究に追われているのである。
それは、有志にて実地訓練に参加した生徒も例外ではない。
こういった生徒は自分の作った物を実地訓練にて試用するために参加することが多い。
実地訓練の参加する事も評価されるが、さほど影響はない。
ただ、そうする事により、自作の物の精度などを上げていき、評価提出するのだ。
なので、実地訓練に参加する薬学科・魔道具科の生徒は戦闘経験者も多い。
では、実地訓練等で試用できない者と物はどうするのか?
1.自分で使って試す (自己責任)
2.同科で相手を見つけて試す (お互いと教師の許可が必要)
3.同科で相手を見つけてお互いが試す (お互いと教師の許可が必要)
4.他科の生徒に頼んで試用してもらう (お互いと教師の許可が必要)
5.学院外部の人に頼んで試用してもらう (お互いと教師の許可が必要)
6.稀に学院外部の者から請われて試用してもらう(作成者と試用者の申請書と学院の許可が必要)
などの方法がある。
ヴィーがマイクに音と映像を記録する魔道具の魔石を貸したのは本来ならば6番に当たるが、すでに5番の形体で許可を取っていた。
なので、マイクがイザヨイたちに又貸ししたのがバレたら大目玉である。(実際は大目玉どころではないと思うが。)
その為に、マイクは魔道具の魔石の製作者の名前をイザヨイたちに教えなかったようだ。
情報と状況によって、魔道具の魔石の製作者がヴィーだと分かっても、イザヨイとイザークなら黙っていてくれるとマイクは判断した。気づいたのがロイナスだったらどうするつもりなのだろうか?
イザヨイとイザークがうっかり暴露癖があるロイナスを張り倒してでも阻止するかどうかはわからない。
そんな事になっているとは知らないヴィーは、昨日のスイゲツ達との冒険者ギルドの仕事も何の問題もなくこなし、一昨日・昨日と、思っていたより稼ぐことが出来、生活費・学院授業料・必要経費などに充分な額を割り当てることが出来るとあって機嫌が良い。
ロガリア学院も専門科1年生・3年生の3日間の実地訓練が終わり、学院は再び通常の授業形態に戻り、いつもの喧騒が耳に入ってくる。
「機嫌が良さそうだな?ヴィー?そんなお前にお知らせとお願いがあるんだが聞くか?」
「ご遠慮申し上げます。パスカル先生。」
学院に廊下を暢気に歩いていると不意に後ろから声を掛けられたはずなのに、振り向きもせずに空かさず返答するヴィー。
しかも一気に気分が下降したのか眉間にシワがよる。
「何だ?随分釣れないなヴィー。あまり邪険に扱うと先生泣くぞ?」
「どうぞ?」
「聞くだけ聞けよ!こっちも仕事なんだから!」
「言っておきますが、実地訓練の退班届けは取り消しません。」
「・・・・そこを何とか、出来ないか?」
「出来ません。出来てもしません。嫌です。」
「・・・・・ダメか・・・・・・」
「私、単独で参加する届けも出しましたよね?まさか・・・書類破棄?!」
「そんな事はしてねぇよ!人聞きの悪い。」
今日学院に来てヴィーが最初にしたのは、実地訓練の5班の退班届けと単独参加届けを学院事務に提出。
5班のバードフォルトたちには3日前に退班を告げたが、学院に書類を提出したのは今朝だった。
「俺はヴィーに退班届けを取り消すように話した。話したよな?」
「・・・話しましたね・・・・」
「良し!俺は説得はした!俺は努力した!頑張った!」
「は・・・・?」
「聞いてみただけだ。一応これで体裁は保てる。この先あっちが魔道具科1年主任教師の俺に何か言ってきても断れるって感じだ!」
「!」
退班届けに出した初日に先生からこんな話が来るとは思ってもみなかった。
多分、誰もヴィーを5班に戻そうなんて考えてもいないに違いない。
まさか、あるかどうかも分からない事態を先取りして確認を取って来るとは。
それにしても早過ぎでは?
「今までご苦労だった。頑張ったな、ヴィー。」
「・・・パスカル先生・・・!」
慈愛に満ちた目で見られ、頭を撫でてくる。
やさしく今までの苦労を労われ、雰囲気に流され感動しかかるヴィー。
「フフフフフ、優しいだろ?生徒思いだろ?心強いだろ?俺って良い先生だよな?!」
「・・・・・」
パスカル先生はドヤ顔で言い出した。
ヴィーの感動パラメータゲージがストップ。
いや、台無し?
「そんなパスカル先生のお願いをヴィーは快く聞いてくれるよな?」
にっこり笑って聞いてきた。
「胡散臭っ!」
「酷い・・・・・ヴィー、先生本当に泣いちゃうぞ?」
「どうぞ!」
「またそれか!!真顔で言うな!良いから聞けよ!もう!」
これもまた日常らしい。
国立ロガリア学院魔道具科に進学してくる生徒は、ロガリア学院では珍しく平民がほとんどだ。
自家が魔道具店を営む者。
自家が魔道具も扱う商家の者。
魔道具職人に弟子入りしたが基礎を学院で学ぶ者。
ヴィーのように自力で稼ぎながら、魔道具を学ぶ者。
もちろん、貴族出の者がいるが極一部。
「おーい、皆、おはよう。とりあえず、席について俺の話を聞けよー!」
毎年の事だが、魔道具科に進学する人数は少ない。
例年は20人ほど。
今年は特に少なく、16人だ。
魔道具科の教師である、パスカル・タイ・ル・トルス、25歳。
彼は、魔道具科学年主任教師、学年主任教師といっても魔道具科の1年生担当教師はあと一人のみ。
髪は金茶、瞳はダークブルー、身長もかなり高め、顔は整ってはいるが童顔。
貴族出の割には、あまり優雅さは感じられない。
「え~、実地訓練も5回目が終了した節目の時期だ。これからは実地訓練の班から人が出たり入ったりで忙しくなる奴もいるかもしれないが・・・・・・評価提出も1ヶ月後に迫っている!いいか?手を抜くなよ?!」
「「「「「ぎゃ――――――!!!!」」」」」
「更にその後に6回目の実地訓練。」
「「「「「ひ―――――――――――――!!!!」」」」」
「そして2ヶ月後にはロガリア学院祭がやってくる。今年の魔道具科は”余興”が担当だ!こっちも手を抜くなよ!!連絡は以上・・・・・・じゃない。あ~学院祭のこのクラスの余興担当長は、自分たちで選出しろ!連絡は以上!!」
((((余興担当長・・・・何かヤな役職名だ))))
「「「「じゃあ、クラウスで!!!!」」」」
「満場一致か・・・?話し合いとか・・・ないのか?ちなみに理由を聞いてもいいか?」
「こんなに皆で叫んでも寝てるから。」
「何回も叫んでもスヤスヤ寝ているから。」
「そうね、寝てるわ。」
「すごいわ。とても図太いわね、神経が。」
「・・・・そういう選出方法もあるか・・・・了解した。あと、3日間の学院祭のうち1年生担当日は初日だ、2年が2日目、3年が3日目だ。余興内容によるが回数は1~2回程度。やる事が決まったら先生に報告してくれ。時間と場所に関しては2・3年の先生と相談してから連絡する・・・・クラウスを起こして説明してやれよ?では、先生の話は・・・・うん、本当に、以上!だ」
「「「「「は~い。」」」」」
魔道具科の生徒は、割と協調性とノリが良いようだ。
貼ってみました、アルファポリスさんのランキングタグ。
11/25 ちょっとだけ変更しました。




