37. ヴィーとマイク
37話目投稿です。
少し、短めです。
本日は陽も登らないうちから起きだして弁当と朝食を用意している。
スイゲツとルーフェスに頼まれたお弁当3人分のサンドイッチと野菜スープ。
サンドイッチの中身は、1つはトマトとレタスと昨日狩ったムクムク鳥を塩胡椒した後焼いた物。
もう1つは、トマトとレタス、チーズとカリカリに焼いたベーコン。
自分用にも同じものを用意。
マイカ姉は、多分朝は起きてこられないと思うので、昼食用にテーブルに状態保存の魔法陣を刻んであるランチョンマットの上に野菜スープとスイゲツ達と同じ内容のサンドイッチ、メモ書きと共に置いておく。
朝食には、トマトとレタスと目玉焼きにした・・・・目玉焼きな気分だったんだよ。
それとミルクと焼きたてのパン。
マイク兄が起きてきて、俺も俺も、俺の分も~!と騎士の癖に可愛く駄々をこねるので、思わず回し蹴りを仕掛けたが、受け止められてしまった。
悔しい!
更に軽く受け止めたくせにマイク兄が、
「なかなか良い蹴りだ・・・成長シタナ・・ヴィー・・グフッ!」
とか言って倒れるというベタな演技をしたので踏んでおいた。
「ヴィー、酷いよ踏むなんて!お兄ちゃんはお前をそんな子に育てた覚えはないよ~。」
「マイクお兄ちゃんとマイカお姉ちゃんがヴィーをこういう風に育てたんだよ?」
「・・・・そうだっけ・・?」
「あーゆー風に倒れたら踏んで上げるのが良いんだよって、私が8歳の時に教えてくれたのはマイク兄だった。」
あの時は、今のマイク兄と同じように倒れたのは私の父様だったけど。
父様が嬉しそうにしていたので、当時の私はやっぱりこれで良いんだと思ってしまったのだ。
「ヴィーが8歳・・・・何教えてんの15歳の俺・・・!」
忘れていたらしい、自分で教えときながら。
あの頃は、マイカ姉とマイク兄は一緒に色々たくさん教えてくれたから・・・・覚えてない事もあるとは思うけどね。
「いいから、寝巻きを着替えておいでよ。昨日の来てた服は洗濯・乾燥しておいたから。」
そう、マイク兄とマイカ姉の服を魔術で洗濯・乾燥しておきました。
2人の服は・・・・汚れがすごかった。
特にマイカ姉の服。
何をやったらあんなに汚れるんだと思った。
「おおう!ありがとう!今日は今まで忙しかった仕事が一段落するから、今日もここに泊まって良い?マイカもいると思うし。」
「うん、いいよ。夕飯はどうするの?」
「夕飯も食べたいけど・・・時間がはっきりしないからな・・・・」
「じゃあ、取っておくから食べれられば食べるってことでいいよね?」
「うん、そうしてくれると助かるな。そしてお願い俺にも弁当を下さい。」
「・・・・わかった。具は同じでいいよね?」
「よろしく!」
その後、また、たわいのない話をマイク兄としつつ、朝食を食べた。
家を出る頃になってもやっぱり起きないマイカ姉(こちらはかなり朝が早いので当然といえば当然だ)を残して、マイク兄と私は出かけた。
スイゲツたちと待ち合わせて冒険者ギルドに行くと告げると、マイク兄もギルドに行くというので一緒に向かって歩き出した。
「マイク兄もギルドに用事があるの?」
「いや?私はただ冒険者ギルドを今日少し用事がある人達との待ち合わせ場所にしてあるだけですよ。その後は仕事に行きます。」
マイク兄は外では猫を被る。
姿勢正しく、動作は騎士らしくしつつ優雅に、軽く微笑し、言葉使いは丁寧になる。
色々限界に達すると地が出てしまうことがあるけど、これを通常モードとしている。
要らぬイザコザを避けるためらしい。
でも、分かっているのだろうか?マイク兄。
今は朝が早いこともあって、人通りは疎らだ。
疎らなのに、こっそりとウキウキとした顔をしたお姉さま方が潜んでいる。
ああ、きっとマイク兄の甘いマスクと凛々しい雰囲気にうっとりしているだけの人達に違いない。そうに違いない。そうだと思いたい。
「ヴィー、何か背中がゾワゾワする視線を感じるのですが・・・・心当たりがありますか?」
「・・・・気にしちゃダメ気にしちゃダメ気にしちゃダメ気にしちゃダメだ、マイク兄。気にしたら負けなんだ。」
視線を前から動かさずに小声で会話する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・腐女子?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分。」
「「・・・・・・・・」」
合図を交わした訳でもないのに、無言で2人の歩く速度が上がって行く。
自分が男子に間違われている事は前から知っている。
どうかすると、マイカ姉も性別を男と間違われている可能性が高い。
それは、マイク兄もマイカ姉も知っている。
でも、街の人にわざわざ、いちいち間違いを正すこともしていない。
だって、それぞれ一人ずつ行動してる時は全然問題ないんだもん。




