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理不尽な!?  作者: kususato
33/148

33. 兄組+α (1)

33話目投稿します~。

 「こらこらこらこらこらこらこらこらこらー!待ちやがれ!そこの脳筋ども!!」


 「!?」


 突然介入しようとしてきたのは、薄茶の髪に琥珀色の大きめな目を持つ、ロイナス、イザヨイ、イザークの3人に比べると若干小柄な青年だった。


 青年は近づこうとして、怪訝そうな顔をして一言発した。


 「解術。」

 張られていた遮音結界を強引に解いた。

 

 「「おいっ!」」


 突然の事にロイナスとイザヨイが気色(けしき)ばむ。


 今まで酒店の中にいたのを忘れさせるくらいの状態から、騒然とした様々な音の波が一気に押し寄せた。

 そのことで、ロイナスとイザヨイの声もかき消され、突然の音の洪水に2人は毒気を忘れてしまった。


 青年はカツカツとブーツの音をさせつつ近づき、今度は自分を含めた4人の周りに遮音結界を構築、展開した。


 「遮音。」


 青年がもう一度呟く。

 一瞬で、周囲の音の波が聞こえなくなり、先ほどの状態に戻った。



 遮音結界が張られていた状態だったので、先程の青年の言葉が3人に聞こえた訳ではない。

 結界に干渉された事で、人が居ることにロイナスとイザヨイが気づいただけだった。

 なので、先ほどの怒声も結界の外にいた酒店の中の者には聞こえたが、3人には聞こえていなかった。

 怒鳴ったことが無駄になったのも腹立たしいらしい。

 

 そのせいか態度もでかい。

 

 だが、片手にはミルクティー、もう片方の手には食べ物の皿を持っている。

 混ざる気満々だ。


 「忙しいのに、やっと仕事を終わらせて来てみれば!物騒な結論に行き着こうとしてやがるし!さっきのは結局お前らには聞こえてないし!叫び損じゃん!何なの!もう!この脳筋たち!!」


 

 呆気にとられている3人を尻目に、プリプリ怒りながら3人と同じテーブルにつく。


 「・・・・君は・・・確か?・・」

 見覚えはあるが今ひとつ思い出せないイザヨイとロイナス。


 「何だよ?思い出せないって?別にいいけど?一応自己紹介しとく?同じ年にロガリア学院卒業してるし、今は同僚だよ?もっとも、この王都中央騎士団所属だけどね?名前はマイク・バンブー。」


 「ここは酒店だぞ?それを飲むのか?」

 「まず、そこを突っ込むのか?イザーク・ウィステリア。にしても相変わらず、顔怖いなイザーク。」


 「くくく、そこは突っ込んでもどうにもならんな・・・・・・・王都中央のセルゲイ副騎士団長からか?」

 「その通り。君たちは休暇中らしいけど?俺は仕・事・休・め・な・い・の!」

 「そうか、それはすまんな。久しぶりだ、マイク。」

 「ほんとだよ。」

 

 イザークとマイクは挨拶とばかりに、右手同士で拳を軽く小突かせあった。

 口には出せないが、2人の体格差は大きく、まるで大人と子供のようだった。


 「さてと、ホルドの話はある程度うちの副騎士団長から聞いてる。でも俺自身は、今は王都中央から動けないから、頼んで探って貰ったよ相手をね?」


 「話しを他に広げてもらっては困るんだが?マイク?」

 「舐めないでよイザーク、分かってるよ、そんな事は。俺の姉貴に探ってもらった。」


 「姉貴・・・・・・マイカか、今何をやっているんだ?」

 「冒険者。今はAランクのね。あ、お金の方は、よろしくね?依頼料はギルドを通したりしていない、身内価格の大金貨1枚だよ?破格でしょ?」


 「お前っ、こちらの許可も取らないで勝手に・・・!」


 「ふ~ん、いいの?そっちは騎士団経由の話とホルド本人の話しか知らないのに?周囲の住人の話とか屋敷の使用人の話とかってさ、犯罪絡みならともかく、騎士相手に出てくるものなんてたかが知れてるのに?・・・・情報いらないならいいよ?でも、それなら俺に出来ることはもう無いな。・・・・・・帰っても良いか?俺これからデートなんだよね。マイカと。」


 「「・・・・・・」」


 「どうする?ロイナス、イザヨイ?俺は、情報がもらえるなら、依頼料を払ってもいいと思ってるが。」


 「「・・・・・・」」


 マイクの態度と言葉使いが気に入らないのか、はたまた自分たちの了承も得ずに金銭の支払いが発生する依頼をしたことが不満なのか・・・その全部なのか、ロイナスとイザヨイはマイクを睨んだまま黙っている。


 「・・・・・・はあ~、もういいよ、イザーク。時間がもったいないから、渡す物渡して俺は帰るよ。ホルドもフィルドも別に読まなくてもいいぞ?」


 「そうか?わかった、金は読んだ後でいいのか?」


 「ああ、金は要らない。先に依頼主には報告書上げてあるし、ついでにこちらにも同じ内容の報告書を上げてくれと言われているだけだで、もう貰ってあるから。」

 

 マイクは立ち上がり、いつの間か、どこから出したのか封書を持ってヒラヒラさせていた。

 「はい、確かに渡したよ?」

 「ああ、わか・・」


 「ちょっと待て!!」

 イザヨイが焦ったように声を発した。

 マイクは怪訝そうにイザヨイを見つつ立ち止まる。

 「・・・・何?」


 「今、依頼料を貰っていると言ったか?」

 「ああ、言ったよ?」

 「一体誰から?」

 「依頼主から。」

 「だから!依頼主とは誰なんだ?」

 「西の騎士団長と副騎士団長。」

 「何故?そんな・・・?」


 「西騎士団と周囲との関係の為に、ホルドに負担を敷いてしまっているが、その関係のせいで意に沿わない状態にホルドを追い込んでしまうのは不本意だ。騎士団が表立っての行動はできないが、個人で出来る手助けをしたい。極秘でこの件に関しての情報を集めたいので協力してほしい、こんな事しかできない事は遺憾だが宜しく頼む。」


 誰の言葉だろうか?

 マイクが発している言葉だが、マイクの心中を語った言葉ではない事はわかる。

 

 「!?」


 「あんたが考えている以上に西の騎士団長、副騎士団長は心配してるってことだね。」

 

 「・・・・では、何であんな言い方したんだ?」


 「八つ当たり。」

 事も無げに答える。

 

 「おいっ!」

 怒鳴ろうとしたロイナスを手で静止させて、イザヨイはマイクに訊ねた。


 「何故だ?僕は君とはあまり交流がないが、知らないところで何かしたのか?」

 「いや?」

 「では、”何もしてない”ことに対してなのか?何に怒っているのか話してくれないか?このままでは、僕たちもスッキリしない。」


 何も言わずにしばらくイザヨイを無表情で見つめていたかと思ったら、そのままテーブルに付き直した。


 「西から王都中央騎士副団長セルゲイ様に、連絡が来たのが7日前だ。その頃は、通常業務とは別にロガリア学院の実地訓練の生徒の護衛のための様々な事を検討、決定しなければならない業務が発生する時期だ。配属1年目の新米騎士には任せられないが、3年以上の騎士に任せるほどの仕事ではないため、配属2年目の騎士に任せられることになった。その統括の任を俺が受けた。ロガリアの実地訓練の班ごとに付く人員割り振り、護衛方法の前任者からの引き継ぎ、護衛範囲検討などの仕事の中、西から先ほど告げた言葉と共に、ホルドと同じ年で、同じロガリアを卒業し、極秘に動いてくれる身内がいる俺を指名して個人的に協力を願えないだろうかと。」


 「・・・・」


 「西の副騎士団長からのたっての頼みをうちのセルゲイ副騎士団長が断れるわけがない。更に、あんたらが示し合わせて休暇を取って王都中央に来ることになっているから、それまでに調べて情報を上げてくれと言われたよ。確認のために、いつあんたらが休暇を取るのか調べたら、ロガリアの実地訓練2日目だった。俺は、自分の仕事に忙殺されながら、姉貴に何とか連絡を取って、ギルド経由ではないが指名依頼だと、極秘で西のある領主の息子を探ってくれと、結果を依頼主である西の副騎士団長に報告してくれるように頼んだ。それが、6日前の夜。」


 「「・・・・・・」」


 「マイカは情報収拾の結果を、西のラドクリフ副騎士団長に報告書として上げた。同じ内容の報告書を協力を願った王都中央のセルゲイ副騎士団長にも上げるよう告げたそうだよ?それが2日前。マイカはその足で取って返して王都中央で、セルゲイ副騎士団長に報告書を上げた。これが、3刻前。そのまま、マイカは倒れて寝ちゃった。俺は、ロガリアの生徒の護衛の統括を副統括の2人に任せて、王都中央に戻って、報告書を転写してここに持ってきた。俺もここ7日間ぐらいまともに寝てないんだよね?」


 「「「・・・・・・」」」


 「あんたたちの今日の動向を新米騎士たちに見ててもらい、この場所を聞いて来てみれば、遮音結界の中で物騒な結論になりそうな、あんたたちがいたって事。確かにあんたたちは何もしてないけど。ぶっちゃけていえば、ラドクリフ様に一言いいたいな?王都中央騎士団が今何やってるか知ってるよね?西もロガリアの3年生の実地訓練に付き合ってんだから知らない分けないよね?西騎士団の管轄地域と王都中央ってどんだけの距離があるか分かってんのかな?ラドクリフ様って自分の騎士団にいる者をすごく心配して心を砕いてくれる人だね、やさしいね?他の者には・・・・・・優しくないけどね?言えないじゃない?上の人だもんな?・・・八つ当たりぐらいさせろってんだよ!!!」


 自分達の知らないところで、かなり酷使をされたマイクの言葉に返す言葉

がなかった。

 

 (”すまない”と謝ることも、マイクの怒りを買うことになるだろうな。何てことをしてくれたんだ・・・・ラドクリフ副騎士団長。あんまりでしょう、これ。)



 ずっと黙ってマイクの話を聞いていた、イザークが長い溜息をついた。



 「マイク、イザヨイの友人として礼を言う。良くやってくれた。ありがとう、助かった。」


 マイクはイザークをじっと見つめている。


 「俺にして欲しいことがあるなら言ってくれ、出来る限り答えよう。」


 「・・・・・・・ほんとか?」


 マイクは真偽を問うように目を細めた。


 「ああ、約束を(たが)えたりはしないとウィステリアの名にかけて誓おう。」



 「やった!!じゃあ、じゃあ、俺が休暇取れたら北騎士団に行くから!組手とか格闘とか模擬戦闘とか!やってくれよ!いいよな?」


 「ああ。来る前には、予め手紙でもいいから連絡をくれ、調整する。」


 「いやっほうっ!!!絶対、連絡する!!しちゃいますとも!!」




 先ほどの重々しい空気はどこへ行ったのか。

 満面の笑顔で、目もキラッキラしながら、弾んだ声ではしゃぐマイクと頷いているイザークがいた。



 ガラリと変わった場の雰囲気に対応しきれず、ロイナスとイザヨイは硬直している。

 更に、頭は混乱している。

 


 どういう奴なんだ・・・・マイク・バンブー。


  

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