32. 兄組(2)
32話目投稿です。
ロイナスが今回の件をロイナス自身に今まで黙っていた事に憤りながらも、イザヨイとイザークの話しを聞くために深呼吸を数回繰り返した後、いつになく怒りを表情に現しながらロイナスが2人を促した。
「まず、何故俺にここまで黙っていたのかを話せ。」
「そうだな、東騎士団経由でロイナスにこの話しが行かなかったのは、西と北の団長、副団長の指示だ。」
「は?」
「お前も知っていることだが、東の副騎士団長は政治的、騎士団の機密的な多大な影響を及ぼすことに関しては他の騎士団長、副騎士団長らと同様に不用意に口にすることはない。」
機密情報を漏洩する可能性がある人物など、副騎士団長の地位に存在し続けられるわけがない。
「!あ、あたりまえだろうが!」
「だが、事私的な面白いと思った事に関しては、酒が入らずとも言ってしまう可能性が有り、酒が入ってしまったら必ず言ってしまう方らしい。」
「か、必ず?!」
「そうだ。困ったことにな。」
「僕としては手紙でロイナスに協力を頼もうと思ったんだけどね・・・・」
「・・・・そうだな、手紙でもいいはずだ。何故だ?」
イザークとイザヨイは、じっとロイナスを見つめている。
イザークとイザヨイは、更にじっとロイナスを見つめている。
イザークはロイナスを見つめる、から離脱。眉間を揉んでいる、目が疲れたようだ。
逆にイザヨイはロイナスに近づき、目を細めながらロイナスを見つめる。
「・・・・・・・すまん、解った。解ったからミナイデクダサイ。」
「何かの拍子にロイナスが、東のルドルフ副騎士団長に話してしまうかもしれない事態になっても、離れた場所にいる俺たちでは対処しようがないからな。ふ~。」
「ふ~じゃない!って結局、言うのか!?・・・・・今まで俺に黙っていた経緯はわかったし、理解した。」
「さっきの小芝居の件だけど、全部芝居という訳でもないんだよ。」
「何だよ、その話には乗ってやらないぞ!」
「先ほどイザヨイが1人だけ無下にできない人物がいると言っただろう?あれは本当だ。」
「・・・どういう事だ?」
「そう、いるよ。理由は絆されたわけじゃあないけどね。」
「では、何故?」
「迂闊に殴ったり蹴ったりしようものなら、1発で死んじゃいそうなほど、貧弱というか病弱なんだよ。」
「・・・それは、懇願されても出来ないな・・・じゃあ、手を出さずに冷たくするのは?」
「それは、期を逃してしまったんだ。いくら僕でも、懇願されたって見ず知らずの病弱な人に冷たくなど出来ないよ。」
「え?出来ないのか?」
「・・・ロイナス?」
「うおうっすまん。そ、それで?」
「しばらく経つと自分に冷たくしないのは、僕が自分を好きになったからだと、周りにそう吹聴し始めたんだ。最初は、自分の屋敷の者、次は友人、親戚とね。」
「周囲が信じたのか?お前がそいつを好きになったと?」
「いや、信じなかったよ?」
「では、そんなに問題では・・・」
「大問題だよ。今度は彼の周囲が懇願してきた。」
「周囲が?」
「あんなに彼がイザヨイを愛して、痛々しいまでに求めているのに、何も答えてあげないのは酷いと、答えてあげてくれと親を始め、彼の周囲が懇願という名の要求をしてくるようになったんだそうだ。」
「・・・・本気か?そいつらは」
「さあな、俺とロイナスは会ったことがない。だから、相手の真意は解らない。お前はどう見る?イザヨイ。」
「・・・・・確かに彼は病弱だ、それは間違いない。だが、僕が彼を好きになったと思い込むとは思えない。病弱ではあるが、気が弱いわけではない、頭も悪くはない、それが僕の彼に対する印象だ。精神を病んでいるようにも見えなかった。」
「・・・・う~ん、どうしたものかな、難しいな。」
「それとね、自分で言うのもなんだけど、相手が僕を好きかどうかは大抵解るんだ。」
「え?そうなのか?」
「・・・ああ、だから言うんだが、彼は僕を好きなんかじゃないよ。寧ろ、嫌いなんだと思う。」
「・・・じゃあ、何で?」
「本当、何でわざわざこんな面倒な事をするんだろうね?」
「・・・今得ている情報は、これで全部なのか?」
「多分・・・・」
集まってうんうん言っていても、これはという案が出てこない。
しばらく3人は各々思考を巡らしていた。
「なあ、イザヨイ?」
「何?ロイナス何か良い案浮かんだ?」
「いや、ちょっと気になる事があって、考えるのに集中できないんだが・・・?」
「何が気になるんだ?ロイナス?」
かなり気になっていたらしく、瞳がキラキラし始めている。
イザヨイとイザークは眉を顰めた。
若干、鬱陶しいらしい。
ロイナスはイザヨイとイザークをちらちらと交互に見た後に聞いてみた。
「この問題の奴の他にも迫ってきた奴らはいたんだよな?そいつらはどうしたんだ?」
「ああ、イザヨイに殴って欲しいとか蹴って欲しいとか踏んで欲しいとか冷たい目で見て欲しいとかの奴らか・・・・いちいち言うのが面倒くさいな、まとめて変態でいいか?」
別に呼び方はどうでも良いのでイザヨイとロイナスは、スルーした。
スルーされてもイザークは気にしない。
「他は問題無いよ?害がないわけじゃないけど微々たるものだし、処置は簡単だから。」
「処置・・・?」
「西騎士団長からも許可が降りている上に、本人たちも希望しているからね。」
「え?まさか・・?」
「時間に余裕がある時は、蹴ったり踏んだり?時間がない時は、思いっきり見下した目で一瞥してあげてるよ?そうすれば、満足してしばらくは大人しいから。ああ、でも殴りはしないよ?直に触りたくないから。」
そんな様子も変態さんたちにはご褒美なのだろうか?
妄想だけでは我慢できなくて実際に蹴られたり踏まれたりする人って・・・・・幸せなのだろうか?
そうして欲しいと思った憧れの人にされるのは幸せなんだろう・・・・きっと、多分、だといいな?
ところで”しばらくは大人しい”という事は、時間が経つと再び・・・・来るんですね?わかります。
「・・・・手加減は・・?」
「してないよ。」
「え?・・・・死んじゃわないか?」
「大丈夫、その人たちは頑丈だから。手加減しないでやれと許可が降りてる。下手に手加減なんかしてみろ、もっととせがまれてて鬱陶しいことになるんだよ?面倒くさいだろう?」
「・・・・・うぇ・・」
「さすがだな、イザヨイ。」
「うふふふ、まーかせて!西騎士団と周囲との円満な関係の為ならそのぐらいするよ。」
「なあ?その問題の奴には許可降りてるのか?」
「そういえば、その事に関しては何も言われてないな・・。」
「じゃあ、親とか周りから”彼に答えて上げてくれ”っていうのは、具体的に何をしてくれと言われている?」
キョトンとした顔をした後、経過を思い出してみるイザヨイ。
「そういえば、具体的には何々をしてくれとは言われてない・・・」
「もう一度確認するぞ?イザヨイ。」
「え?ああ。」
「その問題の奴は、お前に殴って欲しい、蹴ってほしい、踏んでほしい、冷たい目で見て欲しいという変態的行為を自分から望んだんだな?」
「あ、ああ。」
「その問題の奴の親も屋敷の者も、友人も、親戚も、奴に答えて上げてくれと懇願したんだよな?」
「・・・・そうだ。」
「なら、答えてやれば良い。そいつがイザヨイを好きだろうが嫌いだろうが関係ない。同じ事を望んだ輩には答えてやっているんだ。」
「・・・・死んでしまうかもしれないよ?」
「本望だろう?きっと。」
イザーク、ロイナス、イザヨイがテーブル越しに中央に体を近づけ、顔を見合わせる。
「「「事故に合ってもらう事にするか?」」」
3人は物騒な結論に達しそうだ。




