31. 兄組(1)
31話目投稿です。どうしたことか、だんだん長くなっていく・・・。
兄達側からしてみれば、可愛い弟たちに久しぶりに会って構い倒してご満悦なところ。
構い倒された弟たちにとっては冗談ではないが。
更に自分たちも各地域に配属されて以来会ったとなれば、酒も入って懐かしさと嬉しさで多少は口が軽くなろうというものだ。
「ふふふふふ、案外仲良くやっているようで良かったな。まあ、前から仲は悪くはなかったが、ロガリア学院で一緒にいる時間が段違いに増えるとどうなるかわからなかったからな。」
「まあね、ロベルトもスイゲツもルーフェスもそれぞれ我が強いからね、少し心配してたんだけど、杞憂だったみたいだね。」
「ふむ、お互いの我の張りどころが違うのかもしれないな。」
「ところでイザーク、うちのルドルフ副騎士団長・・・いらん事を北で話してるとはどういう事だ?」
「ああ、あの方はかなりロイナスがお気に入りらしいぞ?やれこの女とは3ヶ月持ったが、やっぱりだめだったと酒の席で話す率が高い。振られ方がいつも一緒だとか、見ているだけなら、眼福物の容姿は宝の持ち腐れとか・・・」
「だーー!もういい!やめてくれ!・・・・どうして、そんな事をよその騎士団に言って話すんだ?あの人は・・・!」
「・・・・・・・・実は、東の副騎士団長だけではないのだ。」
「え?どういう事?」
イザークは言った方が良いかどうか少し迷っている様子だったが、イザヨイに顔を向けて話し始めた。
「西の副騎士団長は、確かに優秀な部下の自慢話をするのだ。先ほどは、ルーフェスたちには刺激が強すぎるかと思い私的なことは話さないと言ってしまったが・・・」
「・・・・・」
「ほう?それは是非!聞きたいな。弟たちに恥を知られてしまった俺としては!なあ?ここでは止めないだろう?イザヨイ?」
ロイナスは自分だけが恥ずかしい思いをしたままでは嫌なのか。イザヨイがイザークの話を阻止するのを牽制した。
「・・・自慢は自慢なのだろうな。イザヨイのせいではあるが、イザヨイのせいではないのだ。」
「?解らないな、何だ?」
「イザヨイは、女にモテる。だが、それは大部分は憧れられるという害のないというか、まあ問題はあまりない。」
「ふ~ん・・・・それで?」
「イザヨイは男にもモテている。」
「え?・・・男?・・・・・・イザーク?」
「何というか、変質的というか、変態的というか・・・・・イザヨイに踏まれたいとか殴られたいとか、蔑んだ瞳で見られたいとか・・・・・・・そんな輩がいるらしいんだが。」
「げっ!」
「大部分は言ってるだけだったり、妄想して自己完結で終わる奴らしいのだが・・問題はそれで済まない奴が居て、迫られるらしい。」
「・・・・イザヨイ・・お前・・・大丈夫なのか?西騎士団に居て・・・?」
「騎士団に居る分には安全なんだ。騎士団にはそういう輩はいないし、時には防波堤みたいな事もしてくれているから。」
「・・・・じゃあ、どんな奴らなんだ?」
「・・・・西騎士団管轄内の・・・領主とかその近親者・・・」
「危ない!危ないと思うぞ!それは!身分的には?上か?下か?」
「辛うじて、下なんだが・・・今は僕は一騎士であって、伯爵の息子というだけだから・・・」
「爵位のある奴に強引なことをされたら断れない・・か」
「いや、断っているが、そのうち本当に断れなくなるもしれないというか・・・なんというか。」
「お前には珍しくはっきりしないな・・・・何かいい方法はないのか?このままでは、イザヨイの尻が危ないじゃないか。」
「・・・・・・・・違う」
「何が違うんだ?迫られるんだろう?」
「確かに隙を付いて迫られるが・・・・・逆の方向に・・」
「逆?・・・・・逆?」
「男女で言うところの男役をやってくれと。」
「という事は相手が女や!・・・・・・・・・・・そいつら、爵位をもってるんだよな?年は・・?」
「・・・・・25~27か8?くらい・・」
何だかリアル過ぎる年齢に言葉もでない。
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「・・・・何で全部、きっぱり断らないんだ?」
「・・・・・・・」
イザヨイは伏し目がちに黙ったままだ。
イザークが話しを続ける。
「この国では、少数派とはいえ、同性婚は認められてるのは知ってるか?。」
「認められているのは知っているが・・・・正式に・・・き、求婚されたのか?イザヨイ?」
「それは、まだ、大丈夫・・・」
酒の席でとはいえ、話す者聞く者によっては結構ヘビーな内容の話に3人の酔いはすっかり冷めてしまっていた。
この国では、双方同意の元なのだと国に証明できれば、同性婚が認められている。
その上で結婚し、国の許可の元に発行された物を身に付けていれば、誰からも偏見視はされない上、賞賛されたりする。(まあ、情熱的!羨ましい!的な)
日常生活に支障はでない。
但し、基本的に貴族同士の結婚には適応されない。
だが、何にでも例外があるものなのだ。
その理由が”愛”だ。
この国は貴族の政略的結婚を表立って推奨はしないが、黙認している。
なので、貴族の結婚は半分以上政略的結婚なのだ。
しかしものすごく情熱的な愛だったり、ものすごく純愛だったりと、とにかく人の心に訴える”愛”に殊更寛容な傾向にある。
それが稀にというかたまに、貴族の政略結婚をも凌駕する。
貴族でも同性婚が認められることがあるのだ、”愛”を理由に。
ただ、絶対前提条件が双方同意である事。
一方的では認められない。
だから最初はその気がなくても、うっかり相手に絆されて一時的にも受け入れ、更に盛り上がって、国に認められて結婚しようものなら、その者たちは離婚などそう簡単には出来ない状況に置かれるのだ。
「その・・・迫られているとは言ったが・・・・遊びとかちょっと惹かれたからではなく、真剣に懇願してくるから無下にも出来ないでいる方が1人いる・・・・と言う方が真実かな・・」
これは、酒の席で話していい内容なのか?
無下に出来ないのは1人だけで、他は?
無下に扱っているってことなのか?
あれ?無下ってどういう意味だっけ?
イザヨイは酒の力を借りて親友達にどうしたら良いのかと相談しているのか?
「!・・・・・イザヨイ、受け入れるつもりなのか?」
「・・・・・・」
イザヨイは答えす苦しそうに顔を歪めながら、俯く。
「イザヨイ、この際、俺たちに全部言っていけ。俺たちはお前が選択した道を受け入れる。望むなら出来る限り手も貸すぞ。なあ、ロイナス。」
イザークはイザヨイに諭すように言った後、ロイナスを見た。
「・・・・・・」
「・・・・お前もそう、思ってくれるのか?ロイナス?僕が選択した道を受け入れくれると?出来る限り手を貸してくれる・・・・と?」
イザヨイは俯いたまま、掠れた声でロイナスに訊ねた。
「!・・・・・・・・・ああ!もちろんだ!」
「言ったね?」
「え?」
「僕の選択した道を受け入れるって、言ってくれたよね?」
「え?!」
「出来る限り手を貸すと約束したな?言質は取ったからね?ロイナス。」
「ええ?!」
「良かった!もう、僕の方は手詰まりで、どうしたら良いのか悩んでたんだよ!」
「えええええ?!」
顔を上げたイザヨイはにっこり笑った。
ちょっと、してやったりという表情が隠れていそうな笑顔だった。
「イザークも手を貸してくれるんだよね?」
「ああ、西のラドクリフ副騎士団長からも言われているしな。」
「やっぱりか、あの方は、本当に所属騎士の私的な事を吹聴なさったりしないからな。僕と君が友達なのを知って助力を願って下さったんだな?」
「ああ、とても心配してらしたぞ?西の騎士団でもそろそろ手詰まりになりそうだから、手助けをしてやってほしいと。俺が手を貸すことを北の騎士団長も副騎士団長も許可して下さった。王都中央で休暇を利用して会うことになっていたのも幸いしたな。」
「待て!待て待て待て!何で俺だけ、騎士団経由で話しが来ない?というか、さっきまでの重々しい雰囲気で、”真剣な懇願に絆されて、相手の思いを受け入れてしまうかもしれないどうしよう?”的な態度は一体何だーーー?!イザヨイ!!」
「え?それ、どっちから答えれば良いの?」
「・・・&’($#’*###%!!!」
悶えながら、頭を掻き毟るロイナス。
「言葉が飛んだようだな?ロイナスは。」
「あらら。」
「お前ら・・・・!!順序だてて、全部話せーーーーーーー!!」
無下にする・・・捨てて顧みない。
無下に・・・・・容赦なく。ひどく。




