3. ロベルト(3)
3話目投稿~します。
お茶会の場をどんよりな空気の場に変えている母上に、最初に声をかけたのは、ロイナス兄上だった。
「母上、どこか具合が良くないのではないですか?ご無理なさらず、お休みください。・・・父上、医師を呼びましょうか?」
ロイナス兄上は、現在15歳、国立ロガリア学院で騎士科にこの屋敷から通っている。
容姿は、美しいと定評のある母上の色彩である柔らかな淡い茶色を受け継ぎ、瞳は、中に何か入っているのか不明だが、事あることにキラキラしている。
このキラキラしい瞳にヤられて、うっとり夢見る乙女状態に陥った、老若男女を目撃したことがある。
老若男女だ。
大事なことなので2度言ってみた。
恐ろしいことこの上ない。
顔の造形は、美丈夫と名高い父上をそのまま若くしたみたいだ。
まあ、両親の容姿のいいとこ取り、更には、騎士としても期待されている有望株・・・。
貴族らしく優雅な所作と紳士的な振る舞いで、この国のご令嬢方には社交界デビュー前から人気絶大らしい。
来年のデビュタント後が、怖いな。
外面がいいのは、標準装備だからわからなくないが。
その分、残念な部分が露見してしまえば大暴落するのではないか?
と思わなくもない。
いや、実は、そんな残念な部分をうっかり本命に晒して、嫌われてしまえぇぇ!
なんて、ちょっと思って・・・いないよ?。
ロイナス兄上の残念な部分?
黙秘しておこう。
一応、敬愛する兄上だ。
僕に被害が無ければ、まあ、なんでも良い。
「・・・いえ、体調は悪くないわ。ロイナス」
「母上、そのようなご様子では、説得力がありませんよ。体調不良でないなら・・・・
何か、気がかりなことがお有りなんですか?」
「・・・・・・・・」
「ミルドレーゼ、言ってくれないか?皆、君が心配なんだよ?私などは、心配で胸が張り裂けそうだ。」
「・・・まあ・・あなた・・ごめんなさい、本当に些細な事なの。でも、少し楽しみにしていたものだから・・・。」
「ミルドレーゼ様・・・・もしや、先ほどの子供のことを気に病まれておいでなのではないですか?」
「子供?」
「ええ、フィルド侯爵様。先ほど、薬を届けに来た子供に会ったのですが、丁寧に礼をとるものの一言も話しをせずにすぐ帰りましたの」
「そう・・・ミルドレーゼ、君のその様子だと、いつもは話しをするのかい?」
「はい、お薬を頼むと毎回あの子が届けてくれるのです。珍しい黒髪で瞳も黒い小さな可愛らしい女の子なんですのよ。歳はロベルトより1歳か2歳下かしら?・・・・いつもは、にこにこと笑っていて、挨拶をしてくれたり、時間があればお話ししたりしてましたの。・・・・私には小さな女の子と接する機会があまりないでしょう?ですから、毎回、楽しみにしていたんです。それが・・・・・・・・私、嫌われてしまったのかしら・・・。」
「母上が嫌われるなんてことあるわけがないではないですか。何か、話しができない事情があったのではないですか?例えば、喉を痛めてしまったとか。だから、母上に心配させたり、迷惑を掛けたくなくて、すぐ帰ってしまったのでは?」
「そうだな、いつも話しをしていくなら、ロイナスの言う通りなんだと私も思うよ。ミルドレーゼ。」
「そう・・・かしら?」
「そうだよ。」
「そうね。そういえば、心なしか顔色が悪かったような・・・・では、次はお話しできるかしら?」
「ああ、きっとね。」
憂いが晴れた母上は、いつものニコニコ、父上とイチャイチャ、何かとウキウキ、人生楽しいわ!な感じに戻った。
切り替え早いですね、母上。




