29. 兄と弟(2)
29話目投稿です。
「まあまあまあまあ、待て待て。そんな皆で畳み掛けるようにしたらルーフェスが可哀想だろう?」
「ロ、ロイナス様・・・・!」
地獄で仏に会ったようにロイナスを見るルーフェス。
「だが、このままでは進展どころかスタート地点にも立っていないとスイゲツも言っているのだ。なんの手立てもせずにいては、困った事になるのは目に見えている。」
「しかし、追い詰めては逆効果なのではないか?こういう事は・・こう、自然に・・・」
「自然に?なるようになるのを待っているのか?手ぬるい!それとロイナス!」
「え?」
「お前だとて例外ではないのではないか?」
「え?!」
「ロイナス、お前は確かに見目は良いし、剣の腕も確かで強い、そして所作も優雅だ。その無駄にキラキラしている瞳も手伝って女性にモテてているのも事実だが、付き合っても長続きしない。」
「・・・・!!」
イザークの追求の矛先がロイナスに向きだした。
「だが、お前自身が付き合う女性を取っ替え引っ変えできる性格ではないのは知っている。」
「最終的に付き合った相手の女性に、ロイナス兄上が、振られているんですね?」
「そうだ。良くわかったなロベルト。」
自分の女性遍歴の傾向と表には出したくない事実をイザークと弟であるロベルトに知られている事に顔が引き攣り、動揺してロイナスはそれが真実である事を自ら認める失態を犯す。
「な、何でそんな事をお前たちが知っているんだーー?!」
「「え?・・・・本当なんだー・・・えー?・・・・」」
微妙な気持ちなスイゲツとルーフェス。
「ロイナス・・・・・」
溜息をこぼし、哀れみの眼差しをロイナスに向けるイザヨイ。
「俺は今までの観察の上にたどり着いた結果ですが、イザーク様は何故わかったんですか?東と北の騎士団ってかなり距離が離れているのに・・・?」
「ああ、俺もロイナスとは付き合いは長いが、確信は持ってなかった。だが、東騎士団の副団長が北に来る度にうちの団長と副団長に話していくからな。」
「・・東の副騎士団長がわざわざ、ロイナスの振られた話をかい?イザーク?」
「いや、ロイナスの振られた話だけじゃないが・・・酒の席でな、東の副騎士団長が気に入っている奴の事を酒の肴に色々話していく中の一つだ。」
「へえ・・そうなんだ・・」
「ルドルフ副団長おおおおおおーーーーーーーーーーーーー!!!!」
ロイナス、絶叫。
「まあこの際、自分のだめだなぁってところを確認して次に活かそうか?ロイナス?」
とイザヨイは微笑みながらロイナスを諭す。
ロベルトは楽しそうに笑っている。酷い。
ルーフェスは自分に向けられていた追求が止み、ほっとしている。こっちも結構酷い。
場が混乱してきているのを横目に、スイゲツはこっそりイザークに聞いてみた。
「・・・・イザーク様、西の騎士団の方も北の騎士団に来たりしますか?」
「ああ、定期的ではないが、東と西と南の副騎士団長が北にくるぞ?」
「・・・・もしかして、イザーク様、イザヨイ兄様の話も聞いてたりしますか?」
「ああ、西の副騎士団長も酒の席で、確かイザヨイのことも話して・・・」
「なぁんだぁっってぇぇぇっ!!?」
「「!!・・・」」
ロイナスを宥めながらもこちらの話もしっかり聞いていたらしい。
イザヨイの顔が、声が、背後が!
怖い!低い!!ドス黒い!!!
「西の副騎士団長・・・・ラドクリフ副団長は・・・何を話した?イザーク?」
固まったのは、ロイナス、ロベルト、ルーフェス。
顔面蒼白。
意に介さないのはスイゲツとイザーク。
スルー能力が半端ない。
「ラドクリフ副団長は、普段は厳しい方だが、酒に酔うと西騎士団所属で優秀な奴の自慢話をするんだが?私生活については話されたりはしないな。それが、どうかしたか?イザヨイ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか、そうだな。ラドクリフ副団長はそういう方だ。ふふふふ・・・」
「何か話されては都合が悪い事でもあるんですか?イザヨイ兄様?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、ないよ。スイゲツ。」
やっぱり有るようだ。
艶然と微笑むイザヨイから、漂っていた黒い気配が徐々に霧散していった・・・気がするが。
さきほどからイザヨイの溜めが長くなってきている。
「ロイナス兄上、もしかして顔が怖いのはイザーク様だけど、1番恐ろしいのはイザヨイ様なのか?」
「何だ、今頃気づいたのか?普段1番怖いのは、イザークだが、怒ると1番恐ろしいのはイザヨイだ!ロベルトも気をつけろ?分かったな?あれが相手では俺は助けてやれないかもしれないからな。」
「え?イザーク兄上よりも怖いんですか?」
「そうだ、イザークは真正面から怖いがイザヨイは気がついたら恐怖が身に付いている感じに恐ろしいんだ。」
「何それ?解らないよ、ロイナス兄上!」
「だから!解りやすく怖いのがイザークで、解らないけど恐ろしいのがイザヨイなんだ。」
「理屈で考えるな、感じろってことですか?」
「そうだ、その通りだ、ルーフェス!」
「解んないよ。」
「・・・・そういう所がだめなんだぞ?ロイナス・・・」
「・・慌てると、言わなくてもいい事とか、言ってはいけない事を口走っちゃう所・・・ですか。」
「「「え?」」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・よかったねぇ?弟のロベルトと仲良く話せて・・・・・・・・・・・・・・・・でも全部、聞こえてるよ?ロイナス?」
こうして、兄組と弟組の夜は楽しげに過ぎていく。




