26. 来訪者(1)
26話目投稿します~。
ヴィーと別れて、そのまま学院寮にスイゲツとロベルトとルーフェスは帰って来ていた。
昨日、スイゲツから冒険者ギルドの仕事を受けたことを聞き、同行を決めた後は目的地までのおよその距離と時間、周辺状況、生息している魔獣などの事前準備などを3人で手分けして行った。
更に実地訓練の時とは違い、かなり早起きをして冒険者ギルドでロベルトの登録をした後、待ち合わせの場所に向かったのだ。
なので、皆少し眠そうだ。
何となく再び3人で集まっている部屋はロベルトの部屋である。
何故ロベルトの部屋か?
それは、学院寮に着くなり、ロベルトが自分の部屋に走って行ったからである。
「廊下で全力疾走しないように!」
という寮監の注意を背に。
各々軽く汚れを落とすと、一息つこうとお茶を入れるのは・・・・ルーフェス。
「紅茶を入れた。飲むか?スイゲツ、ロベルト。」
「ああ、貰うよ。ありがとう。」
「・・・・・・・・」
ロベルトは帰って来てからずっと、今日手に入れた火属性の魔石をニヤニヤしながら見ていた。
美形な奴がニヤニヤしている様は、何か企んでそうでちょっと怖い。
「・・・・愛しの魔石に夢中のロベルトは、要らないみたいだよ。」
「愛しの魔石・・・?ロベルトにそんな性癖が・・・・・?だから女嫌いなのか?」
「ごめん、冗談だよ。多分どうやって使おうか頭の中で色々考えてて・・・楽しいんだと思うよ。そっとしておいてあげよう?」
「そうか、楽しいのか・・・・あれは。」
少しの間、まったりと紅茶を飲みつつ、静かな時間が過ぎていく。
「なあ、スイゲツ。聞いても良いか?」
「ん~?何を~?」
「ヴィーのことなんだが・・・・俺たちに対して今日ずっと、敬語を使っていたよな?同じ年のはずなのに・・・」
「え?ああ、そうだね。敬語使ってたね。いいんじゃない?同じ年で、同じ学院にいたって、ほぼ初対面に近いんだから。」
「そうか?怖がられていたんではないかと・・・」
「それはないんじゃないかな?確かに敬語だったけど、普通に会話していただろう?あれは慣れてないからだよ。僕の時も最初は敬語だったよ?」
「最初?しかしスイゲツにも敬語だったような気がするが?」
「うん、今日はそうだったね。君たちも急に一緒に行くことになって、戸惑いもあったしロベルトもいたしね。緊張してたんだと思う。」
「いつもは違うのか?」
「ああ、もっと、砕けた話し方してるよ、僕達2人の時はね・・・・ところで、お腹すいちゃったな。ねぇ!ロベルト!ヴィーにもらったお昼ご飯食べようよ。」
「ああ、俺は良い。2人で食べてくれ・・・フフフフフ・・・・」
「ロベルト・・・・大丈夫か?」
「もう・・・じゃあ、ルーフェスと2人で食べちゃうよ?!」
「ああ、文句なんて言わないから安心しろ・・・・ククククク」
ロベルトの様子を心配そうに見るルーフェス。
スイゲツは反対に呆れ気味だ。
「はあ・・・・・ルーフェス、食べよう。」
ガサガサとヴィーに渡された袋から紙に包まれた物を4つ取り出す。
でかい。
「・・・・ヴィーったら、僕をどれだけ大食漢だと思ってんのかな?大きい上に、多いだろ・・・」
「む、大きいな。何が入っているんだ?肉?」
「あ、これ・・・・柔らかいパン?・・・・に何か色々挟んであるみたい。」
「こんな柔らかいパンは見たことがないが・・・」
2人は恐る恐る食べてみる。
初めて食べる物は、得てしてそういうものだ。
「・・!・・・・・・・」
「・・・!!・・・・・」
「「・・・美味い・・」」
スイゲツとルーフェスはその後、無言で食べきった。
2つずつ。
2人は示し合わせたように食べ終わると冷めた紅茶を飲み干し、食事の片付けをしていく。
それが終わるとスイゲツがロベルトに声をかけた。
「ロベルト、僕たち少し外に出てくるから。」
「ああ、わかった。行ってこい・・・くすくすくす」
「・・・まだ、あのままなのか・・・・」
返事はするもののロベルトはまだ赤い魔石を見つめながら、笑っている。
「じゃ、行ってくる。」
そう言ってルーフェスが部屋の扉を開けた先には、今まさにノックをしようと手を上げた状態の人が立っていた。
お互いびっくりして、数秒見つめ合ってしまった。
先に我に帰ったのは、ロベルトの兄のロイナス・タイ・ル・フィルド、19歳だった。
「やあ、久しぶりだな。スイゲツ、ルーフェス。」
「「お久しぶりです。ロイナス様・・・」」
ロイナスはスイゲツとルーフェスに声をかけた後、部屋の奥にいるロベルトに声をかけた。
「ロベルト、兄さん来ちゃった!」




