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理不尽な!?  作者: kususato
21/148

21. 顔合わせ(1)

21話目投稿です。

 

 昨夜夜半に降り出した雨は、数刻前に上がったようだ。

 雨量もそれ程多くなく、地面に水溜りは見えない。


 辺りはまだ薄暗く、陽が上り始めたばかりの早朝。

 時折聞こえる小鳥の声以外の音は、聞こえてこない。


 ここは、王都中央東門前。


 


 「おはよう、ヴィー。」


 にっこり笑って朝の挨拶をするのは、スイゲツ・ナイ・ル・ホルド、13歳。

 髪は軽くウェーブのついた淡い水色、瞳は美しい青、中性的な美少年。



 「・・・・・・オハヨウゴザイマス、スイゲツサマ。」



 無表情でカタコトの挨拶を返すのは、”ヴィー”ことリヴィオラ・ショーノ、13歳。

 髪は黒、瞳も黒、この頃の女子の割には背が高めで、祖父と父に鍛えられていた為細身でも均整のとれた筋肉が付いている。顔は普通に整っている程度だが、可愛いというより凛々しいと同じ魔道具科の女子から言われている。髪を短くしているせいか、少年に見られることが多い・・・・・女子。



 ヴィーとスイゲツは友達であり、いつもは軽口もたたく間柄なのだが、今のヴィーは畏まっている。

 というか固い。



 それは、スイゲツの後ろにいる男子2人(正確には・・・1人だが)のせいだ。

 向こうはこちらを知らなくても、ヴィーは顔と名前くらいは知っている。


 毎回、ヴィーが苦労していた学院の実地訓練成績上位者なのだ。






 一人は、髪は銀、瞳も銀、かなりの長身で、細身だがしっかりした筋肉の持ち主で、精悍な印象を受ける。

 ルーフェス・ウィステリア、13歳。


 ヴィーの持った印象は、

 (デカいよ。でかすぎて顔がちゃんと見えないじゃん。)

 だった。



 もう一人は、髪は金、瞳は水色、こちらもルーフェスと同じくらいの長身で、かなり細身。

 貴族らしい雰囲気を漂わせている。

 ロベルト・タイ・ル・フィルド、13歳。


 ヴィーの持った印象は、

 (フィルド・・・こいつか?そうだ、こいつだ。昔私に悪質な意地悪をした貴族の子の片割れだ!)

 昔の怨恨だった。




 

 ヴィーの様子にビビリながら、スイゲツが話を進める。


 「えっと、2人とも、紹介するね。この子が、僕の友達のヴィー・ショーノ、専攻は魔道具科だよ。」


 ヴィーが2人に丁寧に会釈をする。

 スイゲツが何故、愛称でヴィーを紹介したのか疑問に思いながら。 


 「それで、ヴィー、金髪の方が、ロベルト・タイ・ル・フィルド、専攻は騎士科、銀髪の方がルーフェス・ウィステリア、専攻は戦士科だよ。」



 「やあ・・・えっと、ヴィー?俺はルーフェス・ウィステリアだ。宜しく・・・」

 「え、あ・・・初めまして、ヴィー・ショーノです。宜しく、ルーフェス君。」

 「あ、”君”(くん)はいらない・・・皆はルーフェスと呼ぶが・・・好きに呼んでくれ。」

 「・・・・・・そうですか?では、お言葉に甘えて・・・・ルーフェス。」

 「・・・ああ。」


 何だかほんわり和やかな挨拶をお互い微笑みつつ交わす、ヴィーとルーフェス。


 (おおう!見た目と違って、穏やかな優しい人だ!)



 そして、ヴィーはロベルトに顔を向け、挨拶をした。


 「ヴィー・ショーノと申します。お会い出来て光栄です、ロベルト様。」


 「あ、ああ・・・初めまして、ロベルト・タイ・ル・フィルドだ、宜しく。」


 (・・・・初めましてか。やっぱり、覚えちゃいなかったな!あんた達の意地悪を2年近くも信じて悩んでた幼気(いたいけ)な頃の私の時間を返せ!)






 「ところでスイゲツさま?これはどういった状況なのか、説明いただけますか?」


 ヴィーは笑顔でスイゲツに聞いてきた。


 どうしてだろう?朝方のせいか冷気が漂ってきた。

 スイゲツは何だか顔色が少し悪いようだ。



 「ああ、すまない。俺とロベルトがスイゲツに無理を言って付いてきたんだ。でも、俺も冒険者ギルドへは登録してあって、多少経験がある。ランクは一応Dランクだ。ただ、しばらくギルドの仕事をしてこなかったから・・・・鈍りきらないうちに勘を取り戻したいと思っていたところに、スイゲツの話を聞いたんだ。迷惑だとは思うが、今回同行させてもらいたいのが・・・・だめだろうか?」



 「!・・・・・・・・いえ、全然。こちらも勉強させていただきます!」




 ヴィーは、大柄で筋肉のしっかり付いた厳つい人間に、怒鳴られたり、罵られたり、粗雑に扱われることは、全然気にしないし、平気だ。

 しかしそういう人間に優しく話されたり、穏やかに諭されたりすることに頗る(すこぶ)弱かった。 うっかり、従順になってしまうほど弱かった。




 スイゲツは知っていた。

 ヴィーが自分の祖父が大好きで、そういう類の人間にとても弱いことを。


 余計な人間を連れてきたことを言及されるのを回避でき、スイゲツはホッと息を吐くと、生暖かい目をヴィーに向けて小さく呟いた。





 「やっぱりか・・・・・・・・よかった、ルーフェス連れてきて。」

 

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