20. スイゲツ(2)
20話目投稿~です。
スイゲツとロベルトとルーフェスの3人は、学院寮に戻りロベルトの部屋に来ていた。
なぜ、ロベルトの部屋なのか?
他意はない、何となくだ。
だって、3人の部屋は並んでいるから。
あえて言うなら、部屋の鍵を出すのがロベルトが一番早かった。
「さてと・・・・で?」
「で?って・・・・どこから話せばいいのかな?」
「どこから聞くのが一番理解しやすいんだ?」
「おお、なんかいつになく穿った質問の仕方をするなルーフェス!」
「・・・・・」
「スイゲツ、話してくれ。」
「スイゲツ、ルーフェスが冷たい。」
「君が茶化すからだろう?ロベルト・・・ルーフェス、もう少し肩の力を抜いてよ。話しづらいから。」
「!あ・・・・す、すまん。」
「実は今日、外に散歩に出かけた時に会ったんだよ。」
「5班を抜けたって奴に?」
「そう、多分向こうは実地訓練終わってすぐくらいだったんじゃないかな。そこで、偶然会って話したんだ。」
「・・・・偶然会って・・・そんな話をしたのか?」
「そうだよ。」
「何か、おかしいな。同じ学院の生徒とはいえ、普通そんな話をするか?貴族の班を抜けた奴が、貴族のスイゲツに?」
「他の人達は知らないけど、僕たちは色んな話をするし、してきたよ?」
「ちょっと待て!やっぱりおかしい!・・・・もしかして、前からの知り合いか?スイゲツ。」
「うん。かれこれ~・・・・2年半弱の付き合いだよ?」
その時の、ロベルトとルーフェスの鳩が豆鉄砲くらったような顔ったらなかった!
なまじ顔が整っていると崩れた時は・・・・・・・・・・・僕も気を付けよう。
「「そっちを先に言えーーーー!!」」
「もう、我が儘だな。バードフォルトの班を抜けた経緯だけを聞きたいのかと思ったから、そこから話始めたのに・・・・」
「2年半弱ってことは・・・・学院に入る前からの知り合いなんだな?」
「そこから話さなきゃだめなの?」
「「スイゲツ。」」
「・・・・わかったよ。最初はイザヨイ兄様の紹介で手紙のやり取りをしてたんだ。で、向こうもロガリア学院に入学することになって、入学した後初めて顔を合わせたわけなんだけど・・・・・意気投合して今でも友達やってるんだ。」
「・・・・ものすごく話を端折ったな。だが、まあいい。スイゲツとそいつは、縁があって友達付き合いしているという事はわかった。」
「それで?班抜けした理由は、何だ?」
「ヴィー曰く、もう、彼らのお守りはごめんだ。関わりたくないって。」
「ヴィー?ああ、そいつの名前か。お守りとは、また随分な言い草だな・・・・」
「傲慢に感じるかい?平民のクセにって?」
「そんな事は言ってないだろう。」
「まあ、お守り発言はともかくとして、たまに会った時に話してた内容からすると、実地訓練に関してのヴィーの意見とか忠告にまるで聞く耳を持たないらしい。」
「例えば、どんなことだ?」
「それがね、あんまり具体的な事は知らないんだ。細かすぎて話したくなかったみたいだけど・・・・実地訓練とはいえ、命の危険が皆無じゃない事を理解していない行動と思考が我慢できなかったらしいよ。」
「抽象的すぎるな・・・」
「じゃあ、ん~と、普段のバードフォルト達を見てると、学院内でもよく痴話ゲンカをしてたりするだろう?」
「・・・・ああ、あれは迷惑だなって、まさか・・・」
「そう、毎回実地訓練中にどちらかのカップルが痴話ゲンカするんだって。それでも普通なら、例えケンカしてようが、魔獣とか相手に戦闘となったら、一先ず横に置いておくと思うんだけど・・・・」
そう、それが普通だ。
というか、けんかしてても連携に問題ないような、戦闘中でもに余裕が持てるほど熟練している者でもない限りそうすると思う。
ましてや、僕たちの年齢からしたら、かなり無謀なことだ。
もしかして死にたいのか?
違う。
解っていないのだ。
自分たちが、どんなに危ない事をしているのかが。
どうしてもやりたいのなら、ヴィーのいない所でやって欲しいものだ。
「・・・・え?もしかして、戦闘しながらケンカするのか?それも迷惑だな。」
もしかじゃないんだよ、ルーフェス。
「違う。ケンカ中は周りが見えなくなるのか、仲直りするまで戦闘放棄、らしい。」
「うわ・・・・」
「そのフォローをするのが、ヴィーとあと2人って感じ。」
「2組同時に実地訓練中にケンカとなったら・・・・」
「それは幸いなかったみたいだけど。どちらも、ケンカ中は周りが見えなくなるらしいので、そんな場合、フォローするのはヴィー一人っきりって事になるよね?・・・・・そんな事態の可能性があるだけでも、ヴィーは抜けて良かったと僕は思ってる。」
「むう・・・確かに。それなら、ソロの方がいくらかマシだろうな。」
「実地訓練5回目が終わるまでは・・・・そういう所とかを何とかしてほしいって、色々頑張ったけど・・・・もう、限界だって。実地訓練だって、これから回を重ねれば、もっと強い魔獣の生息地域にだって行くだろうし、バードフォルトたちがそのままなら、割を食うのはヴィーなんだ。今までだって、相当負荷がヴィーにかかっていたと僕は思う。」
「・・・・優秀なんだな?ヴィーという奴は?」
「さあ、一緒に訓練を受けたことがないし、どの程度の腕かは解らない。本人に言わせると器用貧乏なんだって言っていたけどね。」
「そうか・・・・・では、班抜けしたのは純粋に自分の身を守ったことになるんだな。それなら、良かった。」
本当にルーフェスはヴィーの事を心配してくれていた。
会ったこともないから、顔も知らないのに。
ありがとう、ルーフェス。
なんだよ。
何だか嬉しくて、照れちゃうな。
心の中で思っただけなのに!
うおおおおおおおおおおおお・・・・・・・・・落ち着けっ僕!
「うん。本当にね!良かった!ヴィーの憂いが少しでも晴れて、僕も安心したんだ。でも、僕はもっと確実に安心したいから!ということで、僕はヴィーと一緒に冒険者ギルドの依頼を明日、明後日の2日間こなしてくるので留守にします!!そこのところ宜しく!!」
「「!?」」
「僕は、明日早くにヴィーと約束してるから、もう一度風呂に入って寝るよ!お休み!!」
「待て待て待て待て!聞いてないぞ、そんな話!」
「今、言ったでしょ?」
「スイゲツ。」
「何?ルーフェス?」
「冒険者ギルドの仕事をするなら、ギルドに登録しなくてはならない。スイゲツは登録してあったか?」
「今日、冒険者ギルドにヴィーと行って登録してきたよ!ランクは登録したばかりで、一番下だけど、最初はヴィーのお手伝いって感じで着いて行っても問題ないって。というか、初期ランクの僕は上のランクのヴィーと一緒が良いと推奨されたから。」
「おい・・・」
「そうか、俺も冒険者ギルドには登録してあるし、ある程度の経験者だ・・・・一緒に行っても良いか?」
「おい!」
「う~ん、ヴィーと仲良くしてくれる?」
「ど、努力する。」
「そっか、解った。経験者ならヴィーの負担にはならないよね?じゃあ、明日一緒に行こう、ルーフェス。」
「ああ。ギルドの仕事は久しぶりだ。楽しみだな。」
「そうだね!」
「お前ら!人の話を聞けーーーーーーーーーーー!!!」
この後僕たち3人は、寮監の先生に騒がしすぎると叱られました。
ロベルトのせいなのにな。




