18. ヴィーの考え事
18話目投稿します。
冒険者ギルドに行き、明日の予定などの約束してスイゲツとは別れて家に帰ってきた。
家といっても集合住宅の一部屋だが、ヴィー一人住むには充分の広さがあった。
この部屋は、ギルド経由で月単位でヴィーが借りているものだ。
この国の成人年齢は16歳だが、13歳頃から職人に弟子入りしたり、すでに一人前に働いている者がいる。賃料は前払いにはなるが、金が稼げる実績と紹介してくれるツテさえあれば住む部屋を成人前でも借りられるのだ。
冒険者ギルド、商用ギルド、弟子入り先等等。
風呂に入った。
さっぱりした。
夕飯を食べた。
機械的に日常動作をこなし終えた後に、今日を振り返る。
「はぁ・・・・今日は、色々あったなぁ・・・」
バードフォルト、ルカエンド、ルアーナ、ティファーナ達に関して色々我慢をしていた。
それは確かなのだが、意地の悪い人たちだったかというと答えは否だ。
多分、性格的には良い人の部類に入るのではないかとは思う。
だからといって、実地訓練の仕事の比重があまりにも違うのは勘弁してほしい。
班抜けの去り際に吐き出した言葉は、最低限気にしてほしかったことだったのだ。
今までも何度も言ってはみたことがある事ばっかりだけど。
・・・・・解ってないんだろうなぁ・・・あの人たちは。
そして”学院では身分は関係ない、平等とする”ことが、実際どういうことなのかが理解できていない。
しかし、彼らはそれを理解しているつもりなのだ。
これは、貴族らしく振舞う貴族よりも数段性質が悪いし、扱いはもっと難しい。
バードフォルト達は、解ったつもりになって平民を知る努力をしない。
対話をしない。
気軽に話しかけあげただけで平等に扱っていると思い込んでいるので、こちらの意見には耳を貸さない。
だから色々、するべきではない事までこちらに丸投げしていることにすら、気がつけない。
逆に貴族らしく振舞おうとする貴族は”学院では身分は関係ない、平等とする”この言葉の意味を正しく理解している。
その学院のルールの中でも貴族の矜持を失わず、威厳を保つにはどうするべきかを知っている多くの貴族は、平民のことを知る努力をするし、対話をするのだ。
それによって、平民との距離感を測っているとも言える。
貴族の自分たちに出来ること、平民に出来ること、両方が出来ること、貴族にしかできないこと、平民にしか出来ないこと、色々お互いに経験して、見定める。
それは、私達平民も同じなのだ。
だって、卒業したあとは、平等ではなくなるのだから。
本当に仲良くなったら、私生活では身分にあまり関係なく付き合いは続いて行くのだろう、同じ職場なら尚の事だ。
だが、公にはきっぱりと別れた人生を歩んで行くことになる。
まあ、何にでも例外はあるのだろうけど、自分には無いのでそれは考えないで良い。
「・・・・・スイゲツとは、卒業した後も友達でいたいなぁ・・・・」
自分でも予想外のことが起きてかなり焦ってしまった。
ちょっとつつかれただけで、まさか泣いてしまうとは。
一人暮らしを始めて、全部自分で費用を稼がなくちゃならなくて、更に5班の人たちの事とか色々重なったりとして疲れていたとはいえ・・・・・・・・不覚。
「野菜スープは・・・・ないよねぇ・・・何か他になかったのか、自分・・・」
でも、スイゲツの対応にも驚かされた。
まさか、あんな風に慌てて謝ってくるとは思わなかった。
「ふ、ふ、ははははははははは、何だろう、うなじだけはご勘弁って・・・意味わかんないな!」
思い出したらおかしくなって笑ったら、別の事をを思い出した。
「!」
そういえばスイゲツにはあの時の恐ろしい視線が、男の子同士でイチャイチャしていると誤解、いや妄想した妙齢のご婦人方の萌えという名の意味の物だという説明をしていなかった。
勘違い?多分それはない。
女の子ってそういう類のことにときめいちゃうことってあるものだと知っているから。
程度はそれぞれだけど。
というか、私も時々、萌えちゃうことあるし!ときめくし!内緒だけど!
だって、見知らぬ男女の(別に私とスイゲツはイチャついていたわけでは決してないが)逢瀬を後を付けてまでこっそりワクワクしながらなんて見てどうするよ?
あそこにいたお姉さま方は、水場まで着いて来て見続けていた所から察するにそちらの方面、重度ではないかと思われる。
でもまさか、自分がそういう対象として見られたりするとは思ってもみなかった。
あの視線は自分にとって、とても理不尽な事のような、仕方のない事のような判別できない複雑な感じがした。
さて、どうしよう?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・説明しなくても、いいか。
10/22に少し加筆修正いたしましたが、話の流れには影響ないです。




