17. スイゲツとヴィー(3)
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17話目投稿~です。
(泣いてないもん!ってなんだ!泣いてるだろが!!)
ヴィーの思わぬ発言に対して一瞬頭が真っ白になったが、次の瞬間心の中でつっこむスイゲツ。
「・・・・・泣いてないって、じゃあヴィーの目から溢れてる液体は何なの?」
「・・・ひっく・・・こ、これは・・・」
「これは?」
「・・・昼ご飯の時に食べ過ぎた野菜スープが出てきちゃっただけだもん!」
「・・出てきちゃった・・・スープ・・・」
(く、苦しい。いくらなんでも野菜スープはないよー・・・ヴィー)
このまま続けても不毛なので、スイゲツはヴィーを水場に連れて行き顔を洗うように促した。
「・・・ヴィー?ちょっとは落ち着いた?」
「・・・うん・・」
「ヴィー、さっきはごめん。あんな事いうつもりは無かったんだ。」
「・・・・うん・・・」
「・・・もしかしたら、僕が気がつかないうちに何かヤラカシたら、いくら謝っても君は僕からもあんな風にあっさり、きっぱり離れて行ってしまうかもしれないと、友達じゃなくなってしまうかもって思ったんだ。そうしたら、すごく焦って、怖くなって、気がついたらあんな事口走ってた・・・・・ほんと、ごめん。」
「・・・・うん、わかった。でも、スイゲツは根本的に間違ってるよ?」
「え?!モウナニカ、ボクヤラカシタアトデスカ?」
「・・・・・5班の人たちには、愛着ないし、仲間だと思ってないって言ったじゃないか。でも、スイゲツは友達だよ?一緒にいて気楽で楽しいし、信用信頼してるし、愛着なんてハンパないくらいあるよ?呆れようが、なんかヤラかそうが友達はやめないよ?・・・・・離れるって、物理的なことを言ってる訳じゃないんだよね?」
「う・・・うん・・」
「じゃあ、5班の人たちとスイゲツを重ねたりしないでよ。全然違うでしょうが!」
「うん・・・ヴィー・・えへへへ・・・」
「だいたい何?ちょっと泣かされたくらいで友達やめたりなんかしないよ。スイゲツは?」
「うん、そうだね・・・・僕もそんな事じゃ友達やめないよ。」
「・・・・うん」
「あ、でもさっきのは泣いたって認めるんだ?」
「野菜スープだもん!!」
「そこは認めないんだ・・・・」
スイゲツは、脱力したように溜息を一つ零すと水場を囲いの縁に腰を下ろして、俯きながら呟いた。
「・・・・僕は、イザヨイ兄様に感謝してる。」
「うぇ?」
「君みたいな友達に出会える機会をくれたから。」
「・・・うん、私もだよ・・・イザヨイ様は元気なの?手紙でしかやり取りしてないし、お会いしたのは2年前に1回きりだから・・・」
「ふふふ、元気だよ。そういえば、その2年前あたりからイザヨイ兄様が”良い筋肉と男の可愛さ”を追求してるんだって言ってたけど、なんでだか知ってる?」
「は?・・・”良い筋肉と男の可愛さ”?・・・・なにそれ?知らないしわかんない。」
「あー、う~ん、そっか・・・・ま、イザヨイ兄様が楽しそうだから、いいか。」
「楽しそうなんだ?」
「うん。」
「それは何よりだね~って、そういえばスイゲツは学院の寮外に出てきて何してるの?」
「・・・・え?遅!!今更それ聞くの!?」
「聞く暇を与えず話し出したのはスイゲツだよ。」
「・・・・そうだったっけ?・・・・・・ま、いいや、暇だったから散歩だよ。ヴィーはこれから・・・帰るんだろ?」
「ああ、ちょっとギルドに寄ってから帰るつもり。」
「ギルド?」
「明日から2日間休みになるから、ギルドで仕事受けてお金を稼ぐんだ。」
「じゃあ、僕も一緒に行く。」
「え?ギルドに?別にいいけど・・・・一緒に来てどうするの?・・・・ああ、暇つぶしか。」
「僕もギルド登録して、ヴィーと一緒に依頼を受けたいと思ってさ。さ、行こう?」
「・・・・スイゲツは無理して稼ぐ必要ないでしょ?」
「足手纏いには、ならないよ!社会勉強、社会勉強。ね?早く行こう。」
「そう?・・・スイゲツなら・・・まあ、いいや。」
「良かった!行こう!すぐ行こう!」
「スイゲツ?」
「・・・・・ヴィー、お願い。黙ってたけど、この水場に着いたあたりから、何か背中がゾワゾワするような何か得体のしれない視線を感じるんだ。」
「・・・・え?」
スイゲツの言葉を受け、ヴィーは索敵の魔術を展開していく。
確かに、あちこちに12人程潜んでいる。
でも、殺気のようなものは感じない。
こっそり相手に悟られないようにそちらを見てみると、何やらワクワクしながらこちらを見てる、見てる、見てる、超見てる・・・・・妙齢な女性たち。
ヴィーは、スイゲツを見た。
スイゲツは、ヴィーを見た。
微かに”きゃぁ!”とか”ああん”とか”そこだ!”とか”もう少し!”とかとかとか、聞こえる。
ヴィーから見てスイゲツは、淡い水色の軽くウエーブのついた髪に、瞳は美しい青で、文句なしの美人顔だが女の子には見えないが男の子にも見えない中性的な容姿をしている。
対してヴィー自身は、真っ黒な髪に黒い瞳、髪も短い上に、祖父と父に鍛えられていて結構筋肉も付いているし、身長もスイゲツより少し低い程度。そして普段は意識していないが学院でも、自分の所属している魔道具科以外では男だと勘違いされていることも自覚している。学院自体に性別を偽って入ったわけではない。ただ、一々間違えを正すのが面倒のため放置しているのだ。
そして、ヴィーはある結論に達した。
(腐女子だーーーーーーーーーーーーーーー!!!!)
その瞬間ヴィーは、スイゲツの腕をガッと掴むと立ち上がり。
スイゲツを伴って、冒険者ギルドの建物に向かって全力疾走して行った。
”ヴィー”こと、リヴィオラ・ショーノ・13歳、2年で結構雄々しく成長しました。




