16. スイゲツとヴィー(2)
16話です。
「・・・・ヴィー?」
「何?スイゲツ?」
「何か、とてつもなく良い笑顔してるね?」
「ありがとう!」
「・・・・ヴィー?」
「なあに?スイゲツ?」
「・・・・もしかして、もう、班抜けしちゃった?」
「ふふふふふ!良く聞いてくれました!しちゃいました!5班抜けちゃいました!!」
「・・・実地訓練・・終わったばっかりだよね?」
「うん!」
「・・・・いつ?」
「つい、さっき!!やったね!!ヴィー!!」
「さっ・・?」
「おめでとう!ヴィー!!ありがとー!!ははははははははははははは!!」
誰ともこの気持ちを共感できないので、自分で自分にお祝いを言ってみたらしい。
溜まっていた鬱憤を吐き出すように、やけくそのように笑うヴィーはちょっと怖かった。
「・・・・・行動早いね・・・」
「もう、あの人達のお守りは、我慢できなかったんだ、早いに越したことはない。」
「・・・戻るように言われたらどうするの?」
「誰に?」
「・・・学院の先生とかに・・・」
「どうして?規定の5回目までは、班で頑張ったよ?6回目からは、生徒の意思でソロでも大丈夫なはずだ。」
「それでも、先生に乞われたら?戻ってくれって。」
「断る。」
「・・・バードフォルト達に言われたら?」
「拒否。」
「謝られても・・・?」
「・・・・・だが、断る!」
「謝っても許してくれないんだ?」
「・・・謝ったりしないよ、あの人達は。何が悪いのかすら理解出来てないんだからさ。」
「ヴィーって、結構辛辣だねぇ・・」
「そう?周りからも色々忠告めいた事を言われてるのに、聞こうとも直そうともしないのは、理解出来てないからなんだろうって思っただけなんだけど?」
「そりゃそうか・・・・でも、もし、謝ったら?」
「・・・・許しはするよ。」
「でも、戻らないんだ?」
「それとこれとは別だよ。」
「どこが?」
「今までの行動とかを反省して謝罪されたら許すよ。反省して、自分達はこれからどうすれば良いのか考えて次に繋げていけば良い。理解出来ないままなら、もうしょうがない。」
「・・・・・・」
「随分上からの物言いだとは私自身も思うけど、私は今まで一時的とはいえ”彼らの仲間”たろうと我慢もしたし、意見もしてきた。でも、結局都合のいいように使われただけだった。戻ったところで同じことの繰り返しかもしれない。例え、改善されたとしても、戻る義理はないと思ってるし、する気もない。私はそこまでお人好しじゃない。」
「手厳しいなぁ・・・」
「そうかな?私は彼らに愛着もないし、仲間意識は育たなかったし、単に学院で班分けされただけの間柄だ。そんな人間に甘えられても迷惑だよ。ぶっちゃけて言えば、本当にもう関わりたくない。」
「・・・ふーん・・・・ヴィーはさ、不器用だよね・・」
「何?どこが?」
「・・・例えば、理解してない彼らに、はいはいって従順に言うこと聞いていれば、彼らには仲間として認識されて、彼らの親からの覚えもめでたく労せず後ろ盾を得られたかもしれないよ?表面的には順風満帆じゃない?将来安泰かもしれない・・・・・・心の中でどんなに不満があったり、罵ってても。」
「!!」
(あ、しまった。言いすぎちゃったか?あんまりきっぱり拒否するから、僕が何か気がつかないでヘマした時に自分もあんな風に拒否されるんだって思ったら・・・・つい・・・)
「・・・・・・・本気でそんな風にした方が良いと思ってる?私の将来はそんな事までしないと拓けないって言うの?・・・・私は、自分の実力にあった生活を手に入れるだけでいいよ。分不相応な物はいらない。頑張って掴めるものだけで満足だよ!それが不器用っていうことなら、私は不器用で結構だ!・・・・・・・・何で・・・・・そんな事、スイゲツに・・・言われ・・・・・なきゃならないのっ!」
ようやく学院生活にちょっとくらい余裕を持てそうになるかもと少し安心したところに、貴族でも友達だ!と思っていたスイゲツに言われた言葉で、色々我慢をしていたものが漏れ出したのか涙が零れ来てしまった。
(な、泣かせたーーーーーーーーーー?!!!)
「ごごごごごご、ごめん!ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ!!な、泣かせるつもりじゃなかったんだ!!僕が言いすぎた!意地悪だった!!ほんと、僕が悪かった!!全面的に僕が悪かった!!謝る!謝るから!まじごめんなさいうなじだけはごかんべんをしてくださいぃぃぃぃぃ!!!」
これは、怒られるか怒鳴られるかな?それとも冷たい視線を喰らうかな?とか思っていたスイゲツは、突然ボロボロと泣き出してしまったヴィーに、顔面蒼白になりがら自分でも訳がわからなくなるほど慌てて謝り倒した。
「・・・な、泣いてないもん!!」
ボロボロ泣いてるのは一目瞭然なのに。
ヴィー、まさかの泣いてない発言。




