15. スイゲツとヴィー(1)
15話目~です。
ロベルトとルーフェスの2人と寮で別れた後、1人で散歩に出かけたスイゲツは、ブツブツと2人に対して不満を呟きながら陽が暮れかかった王都城下街を歩いていた。
「全く、会話を楽しむことをしない連中だ。いや、違うか、させてくれない、だな。実地訓練で物足りないからって、すぐ剣の稽古なんてさ・・・・勤勉ではあるのはわかるけど・・・・・いや、2人とも脳筋寄りなだけか・・」
その内に少し後ろから覚えのある気配を感じた。
何の気なしに振り向いてみると、相手は俯き加減で、何やら呟いていた。
「さてと、今日は無理でも明日から2日間はお金が稼げるかな?家に帰る前にギルドに寄って依頼を見ていこうっと。」
「あっ、ヴィー?」
「え?」
「ヴィーじゃないか!君も実地訓練終わったんだね?確かバードフォルトのとこの5班だったかな?早かったじゃないか!」
「え~・・・自分たちは1番に実地訓練を終わらせたんでしょ?更に寮に1度帰って風呂入ってさっぱりした状態で今ここにいるだろ?何だか良い香りがするよ。そんなスイゲツに言われても・・・・嫌味にしか聞こえないよぉ?」
自分は、実地訓練終了直後で、色々動き回ったせいで汗だくの埃まみれなのにと、ジト目でスイゲツを見るヴィー。
「い、嫌味なんかじゃないよ。13歳のうちから始終愛だか恋だか騒いで色ボケかましてる、あまり頭の良くないあの2組のカップルを連れての実施訓練をこなし続けてるヴィーに感心してるし、尊敬してるよ。」
「・・・ふーん・・」
(えらい言われようだな、まあ、愛だの恋だのは自分にはまだ解らない領域だから、肯定も否定もしないけど)
「本当だよ。更に、その4人を連れて尚、実地訓練を初日に終わらせられるなんて、すごく優秀じゃないか。」
「・・・お褒めの言葉ありがとう・・と言っておこうかな?あの人たちの大変さをスイゲツ以外解ってくれてないし。最初の頃は私も彼らの痴話ゲンカにオロオロしちゃって、かなり時間を無駄にしたけどね・・・・・・慣れって怖いよね・・・ふう・・」
「いやな慣れだなぁ・・・ヴィーは我慢強いよね。僕には到底無理だね、あんな、事あるごとに痴話ゲンカして、愛してる愛してないとか大騒ぎを繰り返す奴らの相手なんて、絶対初回でキレる自信があるよ。すっっごい面倒くさい。」
「学院の強制的な班分けに逆らえるほど後ろ盾なんかないしね。こればっかりは仕方がないよ。」
相当、肉体的にも精神的にもきているのかヤサグレ気味である。
「うわぁ、それこそ嫌味だろ?学院側の強制的班分けって言っても、僕ら(貴族)の意向はわりと反映されるのにって言いたい?。」
(言いたい。ものすごく言いたいけど、言いません。スイゲツに言ったってしょうがないし。後ろ盾がないのも本当だし!)
「・・・・でも、実地訓練では、それも今回で終わり。専門科初年度実地訓練の5回目は終了したからね。」
それはもう、嬉しそうにニカッとヴィーは笑った。




