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理不尽な!?  作者: kususato
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番外編 勘違い?乙女げーむ (3)

  一通りロガリア学院内の専門科を巡った後、自身達のカーマイン学院が魔術特化のためかボクたちは魔術科にいることが多かった。



 ロガリア学院内の諸々の位置把握をするため・・・・他所の学院ってわかりづらいし、いちいち通りがかりの人に聞いたりするのも気が引けたというか、ぶっちゃけ行動拠点がないと迷子になりそうだったから・・・・・・多分なる、絶対なる、確実になる、ならない訳がない!デカ過ぎ!広過ぎなんだよ!ロガリア~!!

 そんなことの恥ずかしいから言わないけどね!でも切実な問題だよね?



 それでもいくらか慣れてきた頃からボクは治癒に関係する薬学科、ララは生活に関係する魔道具科のクラスの授業にちょくちょく参加するようになっていた。


 一方”ヴェクセル”男子の方、名前は攻撃魔術科のリチャード・ナイ・ル・マンデルンと防御魔術科のルドヴィク・フェルゼは、基本魔術科にいるけれど、やはり気になるのかはたまた剣術とか戦闘への憧れがあるようで、騎士科、戦士科、魔術科が合同で授業を行っている時はそれちらへ参加しているようだった。


 カーライル学院では触れられなかった剣術とか模擬戦闘に男子2人が夢中になり、毎日が至極楽しく過ごせているのは何よりだが、合同授業から魔術科へ帰って来ても興奮冷めやらぬ状態で喜々としてその時の様子を語ってくるのも聞いているのもやぶさかではない・・・・・ほんの時々ならね。


 それが毎回毎回気が済むまでドヤ顔気味で男子2人にまくし立てられるので、「へー、ほー、ふーん」とこちらの合いの手が棒読み調に変わっていったのは致し方ないことだと思う。相手の男子2人も気づいてないことだし。



 気になるのは、魔道具科の方に参加しているララの様子がどうもおかしい事。

 最初は、生活魔術に関連する魔道具を製作している様子に感激するやら興味津々な感じが伺えたが、ここしばらくは何やらぽ~っと心ここにあらずな事がしばしばあり、時折切なげに溜息をついたりしている。

 

 

 身分に括りなしを掲げている国立の学院でも、やはり貴族がいればそれなりに平民出身者は緊張するだろう。1人でそんなの所でいては気疲れもするはずだし溜息の一つも出るかなとも思った。


 でも確か今ララが行っている魔道具科クラスは、平民出身が殆どだと聞いている。

 ならば、その魔道具科クラスで過度な緊張を強いられることはないだろうから・・・もしや誰か気になる人が出来た?


 茶の髪に茶目のわりと地味目な色合いながら、可愛らしい雰囲気のララは性格もおっとりとしていて、カーマイル学院でもわりとモテている方だ。

 その彼女があんな風に度々ぽ~っとなるほどの格好良い人がいただろうか?

 挨拶程度にしか魔道具科に顔を出していないボクの記憶にはない。


 攻略対象者ではなくても、友人の恋の相手はちょっと気になるではないか。

 どれどれ~お話してごらん?聞くよ?聞いたげるよ?恋バナしようよ!と下世話な野次馬的な感情が出てきたけれど、そこをグッと堪えて押し込んで!



 「ねえ、ララ?元気がないけど大丈夫?魔道具科で何かあったの?」

 「あ、いえ、ナディア様・・・何でもありません。大丈夫です。」 

 「・・・・そう?何かあったら言って?ボクとララは同じカーマイル学院の”ヴェクセル”同士でしょ?相談に乗るよ?」

 「本当に何でもないんです。でも、ありがとうございます。」


 にっこり笑顔で躱されてしまった。

 

 しょぼい変化球では応じてはくれないか・・・・・残念無念。

 う~む・・・彼女との仲は可もなく不可もなくな今の状態ではこんなものか。

 あまりしつこいのもアレなので、ここは引き下がる。

 でも出来ればボクはララともっと仲良くなりたい。


 次回は直球で行ってみよう!





 

 そんなふうに過ごしていたある日、攻略対象者達との接触皆無な状態で(乙女ゲーム的にはナニソレアリエナ―イどゆこと?!)、ロガリア学院の生徒とそれなりに親交を深め、あらあらまあまあそうなんだ同じ事柄を学んではいても全く同じように習ってるわけじゃあないんだねと目から鱗な事実にびっくりどっきりしつつ勉学に勤しんでいることにはたと気がついた。


 えっ?!うわ!ボクったら何普通に過ごしちゃってるの?!

 迂闊にも程があるだろう?ボク!と今更ながらに焦っている時、ロガリア学院の教師から1週間後に実地訓練が3日間の予定で開始されると連絡を受け、詳細説明を受けることとなった。




 ***********




 本棚にぎっしり詰まった古い魔術書、使い込まれた感じの杖、そして何の動物か魔獣かはわからない物の革とか骨とかが部屋の天井から所狭しと大量にぶら下がっている(肉がないのが救いだろうか?というか何に使うの?!)ある1室にボクたちは通された。


 どうやらここは、魔術科の2年主任教師リュート先生の研究室らしい・・・・・おどろおどろしい物に囲まれているのに妙に清涼感のある感じがする空間が逆に恐ろしい。

 こ、こんな教師の研究室なんてプライベートな場所なんてゲーム内では割愛されてたから全然知らない。

 魔術科のリュート先生の研究室がこんなだと、先生の穏やかさが逆に不気味だし、こ、怖いよ~!



 「さて、”ヴェクセル”の君たちに集まってもらったのは、今日から1週間後3日間の予定で行われる実地訓練参加について説明するためです。君たちに参加を強制するものではないですが、説明は受けてもらいます。そのあとで今回の実地訓練に参加するか不参加とするかを決めて下さいね?」


 あれ?ゲームイベントなのに強制参加じゃないんだ?

 ここもゲームと違うな~・・・


 「さて我がロガリア学院の実地訓練は、実地訓練ごとに課題が課せられそれを満たさないと合格となりません。訓練時の行動と課題は班ごとに行っていただきます。それと”ヴェクセル”の皆さんが訓練時に使用するであろう基本的な物はこちらでご用意しますが、自分には必要だと思われる物を追加してもかまいません。しかし、荷物は各自で運搬・管理してもらいます。」


 カーマイル学院では使用しない、野営道具とかをロガリア学院が予備を”ヴェクセル”用に貸出してくれるけど、荷物は自分で持って行動しろということね、女子でもそれは変わらないということだ。

 筋力とか体力とか男子と女子とでは差があるのに、ほかの人に持って貰っちゃダメなんてかなりなハンデだと思うけどな、それ。

 女子に優しくなーい!

 


 「緊急時には私たち教師なり陰ながら警護してくれている騎士団の方が救助してくれます。が、基本自分たちであらゆる自体を想定し予め回避する準備も怠ってはなりません。あくまでも非常事態の救助となります。」


 命の危機には助けは出すけど、軽い怪我とかくらいじゃ見て見ぬ振りをするんだ?

 結構なスパルタ教育をロガリア学院は敷いてるんだ・・・・・乙女にはかなりきつい。


 あれ?これって、ヒロインはどうやって関わってくるんだっけ?


 実地訓練には参加は・・・・確かしてなかったはず、だって魔道具科だし。

 ああ!そうだ!先生たちのお手伝いで救護班みたいな立ち位置だった!


 実地訓練にほぼ参加してくることのない薬学科と魔道具科から1日に2~3人程度の手伝いを生徒から募集するんだった!それにヒロインが今回参加するんだったっけ。


 そこへ実地訓練で疲れて更に怪我を負った攻略対象者を優しく勞って怪我の治療するんだった!

 普段の実地訓練を軽々クリアしてきた彼らは、怪我とか滅多にしないから生徒の女子に治療されるなんてこれが初めて!(気恥ずかしいやらくすぐったいやらの甘酸っぱい思いをしちゃうことになるはず!もーベタもベタ!こっちが小っ恥ずかしいわ!!)

 

 で、それがきっかけで攻略対象者がヒロインを好きになるんだけど、その対応は攻略対象者ごとに違ってったよな・・・・・う~ん、でも個別対応までは覚えてない。


 まあ、疲れたり怪我したりする原因はボクが我儘言ったり、個人行動に走ってそれを庇ったりするからなんだけど・・・・・ヒロインの邪魔はしたくないけど、不可抗力ならまだしも敢えて攻略対象者に怪我を負わす行動をとったりして、自分の印象を悪くはしたくないなぁ・・・・どうしたもんだろう?



 「というわけで、実地訓練が初めての君たちには、この訓練の成績上位者たちと一緒に行動してもらうことになる。説明は以上だが・・・・何か質問はあるかな?」


 「あの・・・この実地訓練は、僕たちが参加するには僕たち全員参加が必須ですか?」

 「いや?参加するしないは個人で決めてもらっても支障はないし、男子だけでも構わないよ?」


 あ!このままでは女子のボクが不参加にされてしまうかも!参加するって言わなきゃ!


 「私は参加致します。」

 「え?」

 「え?」

 「え?」

 空かさず手を挙げ参加表明したのは、何とララだった。


 「あ、俺も参加します!」

 ルドヴィグも手を挙げた。

 「私も参加します!」

 リチャードも手を挙げた。

 「あなたはどうしますか?ナディア?」

 「・・・あ!ボクも参加します!」


 てっきりおっとりとしたララは戦闘するかもしれない怪我をするかもしれない実地訓練には、参加しないだろうと思っていたので一瞬呆けて、返事が遅れてしまった。


 ボクたちの顔を順繰りに見まわし、リュート先生は「そうですか、分かりました。全員参加ですね。」と呟いたあと頷いた。


 「一緒に実地訓練に参加する成績第1位の2年生7班の3人を紹介しますね。」


 そういうとスッと立ち上がり、隣の控え室?らしき部屋に合図を送ると、ロべルト様とスイゲツ様とルーフェス様の3人がこちらの部屋に入って来た。


 やっぱり3人なんだ?

 ゲームでは攻略対象者たち4人は一緒のパーティだったはずなのに・・・・・


 これって、バグなの?



 軽く考えていた事が重くのしかかってくる感覚する。

 名前が微妙に違うキャラクター達は、性格も微妙に違う。

 いるはずの人がいない。

 食い違う事柄が増えていくことに、納得して受け入れた世界が揺らぐ。

 

 



 ”ヴィンセント・ジョッグ”が、いない。

 

 

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