番外編 勘違い?乙女げーむ (2)
お子ちゃまな攻略対象達とはお友達止まり!
お友達でお願い!
悪役だろうが、当て馬役だろうが恋愛的にはヒロインの邪魔になるつもりは、全くない。
ないったらないのだ―――――っ!
攻略対象である少年らとヒロインの恋の邪魔だったり意地悪をしないでいれば、彼らからの報復だとかはないと思っている。最悪、彼らと友達になれなくてもいいから悪印象を残したくないのが本音だ。
というか、他の学院に来てそこの生徒に自分の恋路の邪魔だからって意地悪するとか意味わかんないよね?
やろうと思えば出来なくはないけれど、実質彼らからの報復なんて、1ヶ月したら自分の学院に帰るボクには今は学生である彼らに大したことは出来ないと思ってるけど。
しかぁし!!
やらないよ?しつこいようだけど、意地悪も邪魔もしようとも思ってないからね?
どんなに魅力的でもそこまでお子ちゃま攻略対象にのめり込むほどバカでないつもり。
アウェイな場所で万が一にもそんな事をして留学期間終了後、自分の学院に帰って同じ”ヴェクセル”の仲間から悪い噂でも流されようものなら、そこからの学院生活が居た堪れなくなる。
更に自分より上位の貴族であるスイウィル様とかロトグル様とかと社交界デビュー後、良好な関係なんか築ける確率が果てしなく低くなる!
これは死活問題!果ては婚活に大打撃を受ける!やばい!!
プラス面なんか全くないし!むしろマイナス面ばっかりじゃん!
ゲームは終わっても生活は続いて行くんだから、考えて行動しないとね!
なんてつらつら考え事しているうちに、ロガリア学院での案内役の子が来てしまった。
うっわぁ・・・誰だろう?・・・いやに綺麗な・・・いや可愛い子だな――
って、あ!?あれは、スイウィル様じゃないか!?
淡い水色の髪に・・・・あれ?
瞳は綺麗な青だ。翡翠色じゃない?!
しかも全体的あ雰囲気もチャラ男というより、中性っぽいというか可愛い系だ。
ゲーム設定と微妙に違うなぁ・・・・
スイウィル様ったら・・・・甘さがにじみ出る可愛い系の王子様っぽい!
思っていたよりも背が高くって、お子ちゃまな印象がしない・・・・・・・!
ちょっと、良いかも!ってうっかり思ってしまうくらい・・・・いやいやいや!
さっきの決心はどうした?
だめだよ!ナディア!!しっかり!
お子ちゃまな攻略対象なんかにつるっとハートを持って行かれたら、ヒロインの邪魔になって大人なお兄様に会えなくなってしまうじゃないか!?
で、でも?!
どうしよう?!ちょっと、ドキドキしてくる―!
抑えて抑えて~!落ち着け~落ち着け~落ち着けボク!!
なんて脳内で混乱しつつも乙女なワクワク思考が芽生えようとしているボクをよそに、”スイウィル様”(仮)の少年はふわりと微笑んで挨拶をした。
「こんにちは、カーライル魔術学院”ヴェクセル”の皆さん。ようこそロガリア学院へ!本日学院内の案内役をさせていただきます僕は、魔術科専攻2年生のスイゲツ・ナイ・ル・ホルドです。どうぞ、よろしくお願いします。」
キャ―――――――――!!!萌え波動キタ―――――――――!!!
いや、萌え波動って何なんなの?!ボク!
って?!えっ?!ちょっと待って!!
ボクのボルテージが急速に上昇してしまって変なことを口走ってしまいそうだったよ!!
危ない危ない~
スイウィル・ナイ・ル・タルド、騎士科
スイゲツ・ナイ・ル・ホルド、魔術科
名前も微妙に違う?!
専攻しているのも騎士科じゃなくて魔術科?!
もしかして”スイウィル様”は他にいるの?
この子は攻略対象じゃないの?
あれぇ・・・?
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これはどういう事?!
1番最初に会ったスイウィル様は、”スイゲツ様”で魔術科
2番目に会ったロトグル様は、”ロベルト様”で騎士科
3番目に会ったルーガスト様は”ルーフェス様”で戦士科
名前と容色が微妙に違って、騎士科なのは”ロベルト様”だけ!
それぞれの科に案内してもらって素早く目で探したけど、他に攻略対象人たちは見当たらなかった!
なにこれ?!美形なのはわかっていたけど、みんなほんとに14歳なの?!
全然お子ちゃまじゃない!!
ロトグル様改めロベルト様は、細身だけどバランスのとれた体格と金髪に水色の瞳!
性格は女嫌いで俺様なはずなのに、そんな気配は微塵も感じさせずにボクやもう一人の”ヴェクセル”の女子のララにも丁寧に接してくれるし、紳士だった!
微笑みだって、愛想笑いだと分かっちゃいるが!舞い上がりそうなくらいすっごい格好良い!
ルーガスト様改めルーフェス様は、長身で体格もかなり良いのにガチムチには見えない!
銀髪銀目でちょっと強面なのは同じなのに、女子と話すときに焦っているのか照れているのかわからないけど、少し困った顔しているところがチョーカワイイ―――って、ナニソノギャップ!!
卑怯者―――――っっ!!
はあはあはあ・・・・!
ああ!隣でララが心配そうにボクを見てる!そろそろ抑えが効かなくなって態度に出てきてしまっているみたい。
く、く、くくーるだうんしなくては・・・・!
おちつけーおちつけーもちつけーおちつけーもちつけーぺったんぺったんぺったんぺったん・・・・
ふうぅぅぅぅ・・・・・
「救護室に案内してもらいますか?」なんて小声でララが言ってくれてるけど、大丈夫!もちついたから!心配いらないよ。
ちょっと鼻の奥が痛くなったり!涎が出そうになったりしたけど根性で止めた!
ボクは頑張ったよ!
乙女の萌え波動バシバシ来たよ!恐るべし萌え波動!
訳わかんないけど、もう、萌え波動でいいよ、うん。
加えてヒロインだと思しき子はその後案内してもらった魔道具科に確かにいたけど、容色はやっぱり微妙に違ってた!
ヒロイン”シルフォナリーゼ・シュピッツベーグ”
魔道具科にいた子”フローラ・デスクロー”
名前にいたってはかすりもしてなかった!!
短いし!覚えやすかった!これなら舌だって噛まないよ!
でも家名は・・・・・死の爪・・・・・ナニソレ怖い!!
はっ!”ヴィンセント・ジョッグ”は?
彼らしい人には、会ってない!・・・・というか見てない。
さっき案内してもらった魔道具科にも見かけなかったし・・・・・
騎士科にも、戦士科にも、魔術科にも、薬学科にもいなかったということは・・・・
えぇ?!もしかして存在もしてないってことなの?!
全体的に、微妙に何かズレてる感じがしてきた?
全てがゲームと一緒ってわけではないってことなのかな?
じゃあ、イベントも微妙に違う?
ゲームの最大のイベントであるロガリア学院の”実地訓練”の成績首位のパーティへの特別参加。
このイベントで、訓練準備・戦闘・野営などを通してお互いの力を認め合い、友情なり愛情なりが芽生えていくんだけど・・・・どうなるのかなぁ?
そのパーティメンバーにはおそらくロトグル・タイ・ル・フィードらしいロベルト様、スイウィル・ナイ・ル・タルドらしいスイゲツ様、ルーガスト・ベルテリアらしいルーフェス様がいるはずだ。
黒髪黒目の平民出身、冷静沈着な腹黒敬語キャラのヴィンセント・ジョッグ・・・・いないのかぁ。
こうなってくると、どのくらいの微妙にズレるのか見てみたかったよねぇ。




