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理不尽な!?  作者: kususato
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 番外編 春先の不審者 (1)

 冬の寒さの名残りなど殆ど感じない、ぽかぽかとした陽気に包まれることが多くなった今、ラフューリング王国王都中央に在る国立ロガリア学院は、現在春期休暇も後半に差し掛かってきている。


 今年度学院の基礎科に入学予定者のための学院寮には、その入学予定者が続々と入寮し始めていた。



 ロガリア学院の基礎科と専門科の学院寮は完全に別になっている。

 そのため基礎科から専門科に上がる生徒は、卒業して行った先輩たちの部屋の清掃と修繕が終わり次第、基礎科の学院寮から専門科の学院寮への引越しを春期休暇の間に済ませることになっている。


 基礎科から専門科に上がる際に、街で部屋を借りて寮に入らない者もいるにはいるが極稀だ。

 衣食住を全て自分で賄える者などそうそういないし、例え費用を仕送りで賄えてもやはりこまごまと手間暇がかかる。


 身分の高い者に関して言えば警備などの関係もあり、学院内の寮の方が安全かつ警護しやすいだからだ。



 今は基礎科から専門科への進級する生徒の学院内引越しも既に終了しているため、その者たちを含めた専門科の生徒のほとんどは、実家に帰るなどしていて学院寮にはいない。


 しかし春期休暇も残り少なくなってきているので、専門科の生徒たちも数日もすれば早めに帰寮する者も出てくるだろう、そんな頃。


 基礎科の学院寮には、これからの学院生活への不安と期待が入り混じったような浮き足立った雰囲気が全体的に漂っていて妙に落ち着かない。

 そんな基礎科の学院寮の食堂では、食事をするのが気が進まないせいなのか学院外で昼食を取ろうと街を歩いている背の高い人物がいた。



 髪は金茶、瞳はダークブルー。

 戦闘職ではない細身の体をしているが、彼が平民でないことが伺えるくらいには所作は洗練されている。

 顔の造作は割と整っているし気弱な印象は受けない、かといって近寄り難いほどではない。


 彼の名はクラウス・タイ・ル・トルス、14歳、トルス候爵家四男、ロガリア学院魔道具科2年に今年進級が決まっている。




 つらつらと色々並べ立てたが当の本人は、貴族子息にも関わらず一人で街にご飯を食べにぶらっと出て、街の憩いの場である噴水広場のベンチに座って、そこらへんに出ている屋台の肉と野菜がぶっ刺さっている串焼きをもぐもぐ食べていた。


 歩きながら食べないだけマシだが、片手にまだ食べていない串を5本ほど持っている。

 あまりお行儀が良いとは言えない。

 そのため口の周りが肉汁でベタついても拭えない・・・・我慢のきかない子供か!

 先程所作が洗練されていると説明したが、前言撤回しても良いだろうか?



 「んまい。」

 そーかそーかそうですか、よかったですね。


 だがしかし持っている串から肉汁とかが垂れて膝を汚している!気づけ!候爵家四男!

 ここに、最近よくつるんでいる同じ魔道具科クラスでの相方でもいれば、加減を考えろよとツッコミを入れつつ購入する串の数を強制的に制限してくれたかもしれない。


 

 とか言っているうちに、持っていた串焼きをペロリとたいらげ、食べ終わった串を串焼きの屋台の脇に設置してあるゴミ入れに入れたあと(ここは良し!)、噴水の水で口と口周りを洗い水につけた手を自然乾燥~とばかりにぺっぺと降っている。(手をハンカチとかで拭けよ!)

 


 そんな事をしながらも、実は食べている間からクラウスは一箇所をずっと注視していた。

 1つ向こうの通りへ抜けられる路地裏が、ちょうど噴水広場のクラウスがいる場所から見えるのだが、そこに向こうの通りを路地裏から伺っている人間が見えている。



 「・・・・今日もいるな。いったい何を見てんのかな?」


 路地裏から向こうの通りを(うかが)っている人物を、この時間帯から何日かクラウスは覗っていたらしい。(暇か?暇なんだな?クラウス?)


 ちなみにクラウスが様子を見ているのは、後ろ姿しか確認出来ないが、襟足くらいまでの長さのサラサラの白い金髪、スラリと高身長、服こそ平民のデザインだが腰には剣を帯びている。

 恐らく騎士経験がある人物だと思われる。

 

 


 (昼時を少し過ぎたあたりから夕方にかけて、ずっとあそこでどこかを?何かの?様子を覗っている。

 時々溜息をついているように見えるが・・・・今日もあそこで見ているだけなのか?)



 何か悪さをしている様子が少しでもあれば、即座に警備なり王都中央騎士団に通報しようとは思っている。

 その人物は何かを(・・・)見守っているようでもあり、監視しているようにも見える。

 かと言って、その見ているものを確かめる行動もクラウスは起こしていなかった。

 つまり、自分がどう行動したらいいのかを決めかねているのだ。



 「不審者って言えば不審者なんだけど・・・・あ、動いた。」


 自分が様子を見ているうちは、動いたことがなかったのに今日は何故か動いた。

 それが気になって、つい後を追ってその路地裏に入った。

 が、その人物は一旦路地裏からでたものの再び慌てて戻ってきた。


 必然的にクラウスとその人物は、その路地裏で鉢合わせする形になる。


 「「?!」」


 お互い不意を突かれた状態となり、一瞬固まる。


 そこへ、ワイワイと雑談しながら4人の女の子が路地裏の脇を通り過ぎて行ったが、彼女たちはクラウスと不審者(仮)には気づかなかったようだ。

 

 通り過ぎた4人のうち3人に見覚えがあったクラウスは、「あれ?フローラ?」と小さく呟いた。


 それを聞き取った不審者(仮)は、はっとしたような顔をしたと思ったら、クラウスの腕をばっと取り逃がさないように掴みつつ、通り過ぎて行った女の子たちがどこかの店に入るのを確認してから、クラウスの方に向き直った。



 「君は彼女達を知っているのか?」


 真正面からみたその人物は、真っ青な青い瞳で鼻筋がスッと通っていて白に近い金髪と相まって、怜悧な美貌をしていた。



 (うっわ、やばい。この人、絶対平民じゃない!) 



*********************

ご読了ありがとうございました。

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