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理不尽な!?  作者: kususato
127/148

127. 春がどこかにやってきた (5)

127話目です。

 「ヴィーが男になろうと女になろうと、このまま中性のままでいようと。たとえマイカに恋心を抱こうと、どっかの強面の筋肉野郎に憧れようとも。どんなに寄り道をしたとしても。最終的には・・・俺のものなんだよ。」



 マイクさんが、顔を近づけて俺を見据えて、言い放った言葉に絶句した。



 マイクさんマイクさん、マイクさんったら・・・・・

 ヤンデレだったんですか――――――――――っっっ??!!


 怖い怖い怖かとです!

 あんまり怖くて、鼻が乾いちゃいそうです!

 耳も後ろに寝ちゃってるし!

 か、辛うじて尻尾は丸めてません!

 でも体が小刻みにプルプルしちゃってるのは、見逃してください!


 「・・・・・」


 俺がビビってるのが分かってしまったのか、徐に体を少し離して、目を眇めてこっちをマイクさんが見てる。


 ギャーっ!そんな目で俺を見ないで!

 何で俺に、そんなことぶっちゃけちゃうんですか?!

 知らなくても問題なかったよね?!

 言わないで欲しかった!言うならヴィー本人に言えばいいじゃん!!


 マイクさんは、視線を上に向けたかと思ったら、かったるそうに短く嘆息してました。

 つ、次に何を言われるのか分からず、内心ガクブルガクブル・・・・


 ヤンデレは怖ぇーよ!

 話に聞くだけなら全然平気だけど、目の当たりにするのは怖ぇーよ!

 知り合いがヤンデレなんて、超怖ぇーよ!



 「っていうか何?最初にヴィーが失恋したって言いだしたのは、イズモだろう?俺はそれに乗っかっただけ。」


 そう来るか――――っ?!俺が意図したのは、「失恋しちゃったみたいだよ」「何言ってるのイズモは!!」「いやいや、憧れプラス淡い初恋ってやつかな~!青春だね!」「そんなんじゃないよ!からかうなよ!もう!」「はははは・・・」的な!!軽くまとめてみようと思っただけなのに!マイクさんが掘り下げたんでしょうが?!

 未だに眇めた目でこっちを見ているマイクさんの顔を直視出来ずに、言い訳じみて嫌だったが自分の意見をドキドキする動悸をおさえて言ってみた。



 「そ、それは・・・・そうですけど。落ち着いてはきたけどあまり元気がなかったから、ちょっとだけ慌てさせようと言っただけなんです。落ち込むよりも怒ったりした方が元気がでるかなって。例えそれが空元気でも・・・・決して、追い込んで決定的に失恋を味あわせようとなんて・・・・」



 「あー、うん、それはわかってたよ。俺のいいように話しを持って行っちゃったしな。そこは悪かったな。」

 「えっ?!」


 あっさり謝ってきたので、思わずマイクさんの顔を見て・・・・・・後悔しちゃいました。

 優しげ~に、にっこり笑ってる。


 にっこり笑ってるのに。

 背後に何か渦巻く黒い物が、見える・・・・・気のせいじゃない。

 魔力を具現化させてる・・・・・?

 怖い怖い怖いマジ怖い――――――――――っっ!!!!


 「どしたぁ?イズモ?・・・・・・・震えてるのか?・・・・・・あ、やべ。」

 「ぎゃ・・」


 バタァ――――――――ンンっっ!!


 あんまり怖くって叫んじゃう途中で、隣の寝室の扉が勢い良く開いた。

 と思ったら、ヴィー本人が飛び出してきて、そのままマイクさんに飛び回し蹴りを食らわした。

 避けもせずにまともに食らったマイクさんは、前のめりにテーブルにガツンとぶつかった。


 「マイク兄!耳に付けてる魔力を吸収する魔石が満杯になってるでしょうが!隣の部屋にいても分かるくらいにだだ漏れてるよ!溢れてるよ!噴出してるよ!!危ないじゃんか!!」


 ヴィーがマイクさんを指差して怒鳴っている。

 隣室にいても分かるくらいに魔力が漏れてたのか・・・・・

 でも、飛び回し蹴りを繰り出す必要があっただろうか?いやない・・・・・と思う。

 ヴィーって、結構乱暴者だな。

 マイクさんはテーブルに顔もぶつけたのか、おでこと鼻の頭が赤くなっている。

 結構痛そうだ。


 「ふぁい、ごめんなしゃい。」


 ええ――――――っっ?!マイクさん、謝っちゃうの?謝っちゃうんですか?!

 そこはマイクさんの方が、怒っても良い場面のような気がするんだけど・・・・?

 え?ヤンデレな上にドM?・・・・・・・相手限定のドM?

 そういう場合、得てしてその特定相手以外にはドS傾向にあるという、周囲に優しくないドM?

 い―やーだー!

 はっ!土地付け・・・じゃない!落ち着け!俺!



 マイクさんは、おでこをさすりつつ胸ポケットから魔石を取り出し、耳に嵌めていた飾りを取って石を交換している。


 耳から飾りを外した途端、ぶあんって更に魔力が広がったのが感じられて一瞬体がガチンと硬直した。


 取り外した魔石は、真っ黒だった・・・・・なに属性であれば黒い魔石になるんだろう?


 


 あれって、魔道具だったのか・・・・・お洒落でしているものとばっかり。

 魔力を吸収?それが満杯で、余剰分の魔力が漏れ出してたのか?

 どんだけ魔力が多いんだよ?マイクさん!



 石を付け替えた魔道具を再びマイクさんが装着すると、あれまあ不思議!!


 さっきまで、あんなに怖い怖い怖い~!と思っていた気持ちが、どこかにすい~っとすっ飛んでいて、何も感じなくなっていた。


 何であんなに怯えてたんだろう、俺?っていうくらいにあっけなく。



 「・・・・・・??」


 「いやぁ~、ごめんごめん。魔石を取り替えるのをうっかり忘れてた。」


 「・・・・魔力吸収って、何でそんな魔道具つけてるんですか?コントロールが下手なんですか?それともコントロールが出来ないくらいに魔力が多いんですか?」


 漏れてた魔力が感じられなくなって恐怖心もなくなって湧き上がってもこなかったからなのか、単刀直入に聞く言葉がするりと出た。


 「下手って・・・・まあ、上手くはないけどさ。理由言うなら両方かな~?最近魔力を使う機会がなくってさ、発散出来ないから溜まる一方なんだ。」

 「でも、力が漏れるくらいじゃ危ないってほどでもない気がするんだけど?」


 あれ?でも、さっきまでの俺の精神状態がマイクさんの漏れてた魔力の影響を受けてたっていうなら・・・・・危ない・・のか?


 「マイク兄のは、危険だからこんな魔道具の装着を義務付けられてるんだよ。その時の感情のあり方で周りに影響を与えてしまうらしいんだ。質悪いよねぇ?」


 「本気?うわ~・・・迷惑っすね。」

 「お前ら・・・・もっと言葉をオブラートに包めよ!可哀想だろ!!・・・・・泣くぞ?俺が。」

 「「どうぞ?」」

 「くっ・・・!」


 ぐぅ―――――――・・・・・・

 

 泣きました。

 確かにお腹が泣きました、いや、鳴りましたが正しい。

 ちなみに鳴ったのは、マイクさんのではなく、俺のお腹。

 何てタイミングな場面で鳴るんだ俺の腹。

 あともちょっとで、泣いちゃうマイクさんが見れるかもしれなかったのに。

 


 「「「・・・・・・・」」」

 「あ~・・・そう言えば昨日から何も食べてないよね。ごめん、イズモ!今、何か作るから!」


 笑いだしそうだけど、一生懸命申し訳なさそうに言ってから、慌てて台所に向かい食事の用意をし始めるヴィー。

 良かった。少しは気が紛れたのか、少しは元気になったみたいだ。

 なら、微妙な立場に立たされ、内心恥ずかしい思いをしていた俺のお腹も鳴ったかいがあったというものさ。


 で、俺はマイクさんに聞きたいことがあった、なのでヴィーを横目でみながら小声で話しかけた。



 「なあ?マイクさんは、マイカさんの事気にならないの?相手は高位とはいえ魔獣の分類されるんだよ?」


 「・・・・俺には”番い”の括りで強制的にそうなったとは思えないんだよな~。それって本当に本人の意思を無視出来んの?例え一時期そういう状態になったとしてもだよ?ずっと?一生?ありえないと思うな、それ。マイカは確かにモフモフ大好きだけどね・・・・そのクオさんって、イズモみたいに人型になれんのか?」


 「え?あ、うん。銀髪青い目のガタイのでかい美丈夫・・・かな?」

 「ありゃま、人型はマイカ好みじゃないじゃん・・・・・すぐ帰ってくることになるかも~」

 「ええっ?!」

 「マイカは、人だと優しげ~な穏やかそう~な男がタイプなんだよね・・・こう、男なのに守ってあげちゃいたくなるタイプっての?」

 「・・・・すみません、戦闘好きの大酒飲みで飄々と腹黒い狐です。」

 「・・・・・・・・・・天狐なのに?中身がそれで、ガタイのでかい美丈夫か。”番い”の強制力がどの位かわからないけど、8割の確率で帰ってくるな。」

 「うえっ?!」


 「ま、どっちにしてもマイカが選び取ったものに、俺は文句はつけないよ?SOSが来たら別だけど。」

 「・・・・・そうなんだ~。ところで、さっき言ってたヴィーに関しては・・・・・本気ですか?」

 「・・・・・・・・・・」



 なぜそんな質問をしたのかというと、マイクさんの漏れ出していた魔力が魔石に収まった後、冷静になって先ほどのマイクさんの言葉を反芻してみると、執着は強いのだろうが別に病んでるようには思えなかったからなんだけど。


 急に質問の内容を変えた俺にキョトンとした顔を向けたが、ニヤリと笑っただけで答えては貰えなかった。


 

 その後は、食事をするのに魔狼の姿だと食べにくそうだったので人型になり、ヴィーの作ってくれたご飯を食べた。

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