12. 国立ロガリア学院 ヴィー(1)
12話目投稿~です。
「ひどいですわ!バッド!私の愛を疑うんですの?!」
「疑ってなどいない!そんな事は言ってないだろう?!だが、ルアーナは他の男に愛想を振りまきすぎだ!」
「なんですって?!人を八方美人のように!!」
「違う!八方美人だなんて思ってない!美人だとは思うけど!」
「・・・!し、失礼にならない程度に他の方とお話しをしているだけですのよ!どうして、そんな事を言うんですの!?」
「君は自分を理解していないんだ!」
「私が、私の何を理解していないと?!」
「君が笑いかけるだけで・・・・・!何でもない!!」
「言いかけてやめるなんて、卑怯ですわ!!」
ここは、ラフューリング王国、西区に位置する広大なヴェステン平原。
痴話ゲンカを繰り広げている2人がいる。
それを我関せずと自分の役割をこなす2人。
そしてケンカをしている2人に襲いかからんとする魔獣を弓で仕留めつつ、自分に接近してくる魔獣にも対応している者が1人いた。
ケンカしている2人を諌めるでもなく、無表情で淡々と作業のように魔獣を仕留めていく。
まるで、日常の流れ作業の如く。
このラフューリング王国には、12歳から入学できる国立ロガリア学院がある。
生徒は、平民、貴族に関わらず最初は全て基礎学科に入る。
基礎学科の1年を経た後、騎士科・魔術科・薬学科・魔道具科・戦士科に進み、卒業後に王国騎士団・警ら隊・王国魔術団・ギルドなどへ自分の道へと進んで行く。
基礎学科は、生活費以外学院が費用を持つが、各専門学科では全て自費となるため、様々な理由で各専門学科に進むのは、基礎学科の半数ほどになる。
基本理念としては、国民の多くに基本的な読み書き、計算、生きていく術を身につけてもらう事が目的と唱っている。しかし、金はあまり出さないが、専門的な技術を持つ優秀な人材を育てることもしたいようだ。
日が陰り始めた王都の中央西門近くに、いくつかのテントと長机がある。
その長机に添って数人の大人が12~3歳の子供たちを相手にしている。
大人たちは、国立ロガリア学院の教師達、子供達は学院の生徒のようだ。
学院の生徒達は各専門科に進むと、薬学科、魔道具科に進んだ者は参加表明をした者、騎士科、魔術科、戦士科に進むんだ者は必須にて、パーティを組んで年8回実地訓練を行う。
しかし、最初の年は教師たちによって3~6人に組み分けされたパーティにて、初回から5回までこの実地訓練をこなしていき、6回目からは自分たちの意思でパーティの仲間を変更出来るようになる。
つまり、滅多にいないが6回目からは、ソロでも実地訓練に参加可能になるのだ。
現在、王都の中央西門近くにいる生徒たちは、その学院の教師たちに組み分けされたパーティで、5回目の実地訓練を終えた者たちだった。
「バードフォルト、ルカエンド、ルアーナ、テファーナ、ヴィーの5人組の5班だな。実地訓練の証明物は、草原狼の尾が・・・・おお、10匹分に、毒消草のドーラ草10本、ポーション薬用のタビーダ草が10本、魔力ポーション薬用のマビータ草が10本か・・・・毎回早い上に、採取した物の状態も良いし、採取数も定数より多いとは・・・・優秀だな5班は。他の者はほとんど帰ってきていないというのに。良し!確認終了だ。聞いていると思うが、実地訓練は3日間だが、終えた者は残りは休みになる。」
「ほとんどと言うことは、何組かは僕たちよりも早かったんですか?」
「ああ、ルーフェス、ロベルト、スイゲツの3人組の7班が一番で、君たちが2番だ。」
「ああ、また先を越されてしまったんですね?残念です。」
「そう言うな、バードフォルト。君たちだって、かなり優秀なんだ。3日間予定の実地訓練を1日で終えてしまうのだから。」
「はい、ありがとうございます!次はもっと頑張ります。」
「おう、その意気だ。」
「では、失礼します。」
「ああ、気をつけて帰ってくれ。」
これで、今回の実地訓練でも良い成績が取れると上機嫌で学院の寮に着こうとした時に、1人が4人に向かって声を掛けた。
「皆さん、ちょっと良いですか?」
「あら、どうなさったの?ヴィー?」
「預かっておいた皆さんの実地訓練用の荷物をお返しします。」
そう言うと、背負っていたリュックから荷物を取り出し、4人各々に渡していった。
「何よ、次回も使うのだから、あなたがそのまま持っていれば良いのではないこと?」
「そうだ、君のリュックは君お手製の拡張魔道具なんだし、支障はないはずだろう?」
「僕たちが持って帰って、また集めるなんて2度手間だよ。」
「私は、今回をもって5班を抜けさせていただきます。だから、皆さんの荷物を2度と預かったりしません。なので、荷物をお返しいたしました。」
「「「「えっ?」」」」
「次回からの皆さんの御健闘を、後でお祈りしておきます。では、皆さん、私はこれで失礼します。」




