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理不尽な!?  作者: kususato
109/148

109. ガクとイザーク (2)

109話目です。

 北区在住の両親と王都中央の保護者には話しをしてあると言う若さま。

 

 「若さま、手紙のやり取りなどはなさっているのですよね?」

 「いや、していないな。」

 

 なんですと?!

 2年近くも会っていない上に、手紙のやり取りも無しとは?!

 本人は放置ですか?置き去りですか?!


 はっ!スイゲツ殿の言っていたのはこういう事ではないか?

 女性の対する細やかな気配りを心がける!

 季節の変わり目で、変わりがないか配慮する手紙を送るとか!

 誕生日には小さくても花束を送るとか!


 若さまのこの様子では、おそらく何一つされていない。

 


 「わ、若さま!2年間も会いもせず便りも無しでは、相手に忘れられてしまいます!」

 「・・・・そうか?」

 「”リヴィオラ”はロガリア学院にいるのですよね?先ほど、ロガリアの武術大会の事を仰ってましたが、その時にお会いになってないのですか?」

 「ルーフェスたちやロイナスたちには会ったが”リヴィオラ”には・・・会ってないな。」


 

 ああ!まさに!ダメじゃないですか!

 会える機会が有ったのにも関わらず、会わずにいるなんて!


 ”嫁候補”のことも本人は知らず、手紙も寄越さない、2年間全く会わない・・・!

 相手には既に”あなたは誰ですか?”状態?

 あ、いや、若さまを忘れる事などおそらくないとは思うがしかし、う~む。

 もう他に好いた相手がいてもおかしくないではないか?


 これは・・・若さまはスイゲツ殿の”女性の扱い方の基本”を学ばれた方が良いかもしれん!


 「若さま、それでは”リヴィオラ”に忘れられてしまいかねませんよ?2年前にちょっと遊んでもらった怖い顔のお兄ちゃんで留まる程度ではないでしょうか?」

 「怖い顔のお兄ちゃん・・・?リヴィオラは可愛く”イザーク兄様”と呼んでくれていたぞ?」

 「だからそれは、2年前まで、ですよね?」

 「む?・・」

 「14歳の今はもう、こ、こ、恋だってしてもおかしくない年齢です。」

 「・・・恋という単語でどもるな。聞いているこちらが恥ずかしくなるだろう。」

 「ああ!申し訳ありません!つ、つい・・」

 「まあいい。つまりお前は”リヴィオラ”に、既に相手がいるかもしれないと言いたいのだな?ならば確かめてみようではないか。」



******************



 ”ショーノ薬店”

 ”リヴィオラ”の実家らしい。


 暖房が効いた暖かい北騎士団の応接室から、寒い道のりを辿り、何故ここに来たのかというと。

 現在”リヴィオラ”に懇意にしている・・・・間怠(まだる)っこしいな!

 恋人がいるかどうかを、親に聞こうとやって来たのだ。


 そんな事、親にわざわざ報告するだろうか? 

 俺ならしない。

 将来結婚の約束をしたとかであれば、話は別だが。

 情報源が少ないから仕方がないのか?

 

 ”リヴィオラ”の親の店の前にいるのだが、未だに店内には入っていない。

 というのも、店の前でばったり父親らしき人物に会い、若さまが先程の話しを振ってしまったのだ。


 「いないから!俺はそんな話、聞いてないから!ヴィーにこ、こ、こ・・言いたくない!恋人なんて単語!!」

 「言ってるではないか。」

 「ヴィーはまだ、まだ!14歳なんだぞ?子供なんだぞ!必要ない!」

 「シュンの初恋はいつだ?」

 「12・・・!」

 「12歳は子供だな。」

 「うぅぅぅ・・・・俺はまだヴィーに”大きくなったら父様と結婚する”って言ってもらえてないのにィィィ・・・!」

 「まだその野望を諦めてなかったのか?往生際が悪いな。」

 「諦めきれん!」

 

 はぁっ~と嘆息される若さまと、子供に恋人がいるかもしれない事を受け入れたくない様子の父親。

 何とも不毛なやり取りに感じてしまう。

 いい加減、店内に入らないのだろうか?

 動かずに立っているだけなのは、鍛えてはいても寒いのだが。


 それにしても”リヴィオラ”を、この父親は”ヴィー”と呼んでいるのか?

 俺が会った黒髪少年も”ヴィー”と名乗った・・・・・・これは偶然か?

 この父親という人物が、どうも王都中央で会った少年に似ている気がするのだが。

 黒髪黒目のせいだろうか?う~む・・・・


 と、思案していたら、バンッ!と店の扉が開いた。

 不意をつかれて驚き、


 「店の前でデカイ声で(わめ)いてるんじゃないわよ!営業妨害よ!!」


 金髪で青い目のものすごい美人に怒鳴られた。




 波打つ美しい金の髪、同色の金のまつげに(ふち)どられる射抜くような青い瞳、シミ一つ見えない白い肌、肉厚な唇。

 これほどの色っぽい女性には、なかなかお目にかかれないだろうという感じの美人。

 だかしかし、俺の好みからはかけ離れている・・・・・残念!


 「シェリル!ただいま!」

 「あら?シュンだったの?お帰りなさい~。あらあら~それにイザークじゃない~どうしたの?」

 

 まさか。

 奥さん?いやでも、多く見積もっても二十代半ばにしか見えないぞ?

 14歳の子の親にしては、若すぎだろう?


 「シェリル!聞いてくれよ!イザークが!」

 「はいはい、店の前で騒がないで。話なら中で聞くわ、イザーク・・・とお連れ様?もどうぞ。」


 涙目で訴えかける父親を軽くいなし、店内へと声を掛けてくれた。

 ああ、有難い。

 

 ********************


 招き入れられた店内は、扱っている薬のためか暑過ぎることもなくかと言って寒いという程でもない温度に保たれているらしい。

 魔術なのか魔道具なのかは判らないが、冷たい外気の中にいた身にとっては、とても暖かく感じる。


 酒を数滴入れた暖かい紅茶を頂きつつ、若さまが間に入って双方の紹介をして下さった。

 まさかと思っていたが、シェリルさんは”リヴィオラ”の母親だった。しかも、あと2人息子がいるとか・・・何という幸せ者なのだ!シュンとやら! 


 改めて若さまが”リヴィオラ”の両親に恋人の存在の有無を訊ねた所。


 「聞いてないわ~・・・というか、いないわね。」

 母であるシェリルさんは断言した。

 

 「そうだよな!」

 「そうか。」

 あからさまに、安心する若さまと・・・父、シュン。


 「断言されましたけど、確信がお有りなんですね?」

 「ええ。この間ここに来て、精霊の血の影響で先祖返りのヴィーに恋人がいたら、迷うはずがないことを迷っていたから。」


 「「「はっ?」」」


 え?精霊の血の影響で先祖返り?

 そんな事が・・・・あるのか?


 「というか、何故シュンが驚いているんだ?」

 「お、俺!初耳なんだけど?!シェリル?!」

 「そうでしょうね。シュンに言うのはこれが初めてだもの~。」

 「な、な、な、何で・・・・?!」

 「シュンが、一姫二太郎三茄子で最初は女の子が良いって言ってたから。男でも女でもないなら女の子として育てちゃおうと思って。そのうち変化期が来て、本当に女の子になってくれる事を期待してたの。16歳にならないと変化しないなんて情報は知らなかったのよ。」


 「「「・・・・・」」」



 若さまも俺もシュンも、言葉が出ない。

 シュンに至っては衝撃が過ぎたのか、顔が強張って目にじわじわ涙が溜まっていっている。

 その様子をシェリルさんは、じっと静かに見ている。


 「黙っていてごめんなさいね?シュン。ヴィー本人もつい先日知ったみたいで、学院への変更申請書のためにマイクと一緒にうちに帰ってきたの。まだ、最終的に選ぶ性を決めかねていたわね。」


 「・・・・という事は、今、ヴィーは・・・中性、という事か?」


 「そうよ~、でもイザークにはもう関係ないんじゃない?前に話があった”嫁候補”だったかしら・・・ウィステリアの御当主から”嫁候補”ではなくなったって手紙が来てたし。白紙に戻ったってことよね?」

 「いやそれは・・・待ってく・・!」

 「ちょっと期待してたんだけど、仕方ないわよね~。だって、恋とかすると変化が早く来ると思ってたんだもの。」

 「シェリルさんが、そう思った根拠は何ですか?」

 「・・・・・」


 話そうかどうしようかと迷うように俯き、暫くするとゆっくり顔を上げて少し困ったように話を始めた。

 

 「私の父も同じ先祖返りだったの。父は私の母に恋をして男性に変化したのが13か14の時だったって言っていたから。ヴィーもそのくらいには~と思っていたし、その年齢なら普通の人間の女の子だって、第2次性徴の時期だから周囲にも本人にも違和感なく、そうなってくれるかな、と。」

 「それで、俺にも話さなかったのか?」

 「・・・・・・余計な心配はさせたくなかったの。変化は必ず来るものだもの。」

 「シェリル・・・・・・悩んだんだろう?気がついてあげれなくて、ごめん。」

 「ううん・・・・いいの。」


 若さま!どうしましょう!

 

 シュンとシェリルさんの雰囲気が!

 手なんか握り合って、見つめ合っちゃったりして!

 桃色な方向に、行ってしまいそうです!勘弁して下さい・・・!

 居た堪れなくなりそうです・・・・!



 「そんな事は俺たちが帰ってからやってくれ。それよりも、ヴィーの事だが。最近、ここへ来たのか?」

 「「・・・・・」」


 ぶった切りました、桃色な雰囲気。

 袈裟懸けかもしれません。

 流石でございます、若さま!


 「・・・・ええ。あなたは気がつかなかったみたいだけど、会ってるわよ?」

 「何?俺が?ヴィーと?」

 「そう。マイクが北区に来たのは知ってるんでしょ?」

 「ああ、ジオターク村へシェリルとシュンに会いに来・・・!!一緒にいたのが、ヴィーか?!」

 「ええ、そうよ?」

 「確かに、黒髪黒目だったが・・・・2年であれほど背が伸びるものなのか?!髪も短くて少年にしかみえなかった・・・・そうか!中性だからか!」

 「え?帰って来てたのか?いつ?」

 「7日ほど前よ?でも、用事を済ませてすぐ王都中央に行っちゃったわ。マイクの休暇の都合もあるからって。」   


 「迂闊だった・・・!あれがヴィーなら、何度か会っている。では、ガクお前が会ったのも多分”リヴィオラ”だ。」

 「・・・・ええっ?!胸もなかったし、腰周りなどの肉付きなどは、かなり筋肉質でしたが・・・あれが?”リヴィオラ”だったんですか?ああ、そうか。今は中性なら不思議はないのですね。」


 「「「・・・・・」」」


 え?どうしたのでしょうか?

 若さまも、シェリルさんも、シュンまで急に黙ってしまった。

 しかも、3人で俺を凝視しているのは何故だ?


 「胸がないのは、外から見てても一目瞭然だったわ・・・でも・・」

 「ガク、腰周りの肉付き加減を知っているのは、何故だ?」

 「何?もしかして、ガク・・・・・・ヴィーの腰周り・・・・触った?」


 「えっ?」


 俺、また、地雷踏みました?

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