107. 新学期の放課後
107話目です。
ボンキュッボンなすごい美人かすごく可愛い・・・そういうのが好みですか、そうですか。
それ以外を彈くって?
まあいいけどね?
好みなんて千差万別だけれども。
でも、それとこれとは、別物だろう?
無知で軽はずみな行動と言動で、どれだけのマイカ姉を傷つけたんだろうね?
それで、自分の顔とかの容姿を怖がられて、深刻な嫁不足なんて言ってるのか?
ふ ざ け ん な
**********************
怒ってる怒ってる怒ってるな、ヴィーが凄く怒ってる。
そりゃあ怒って当然だな。
慕っているマイカさんが、蔑ろにされた訳だからな。
俺だって、ロイナス兄上がそのような扱いを受けたら・・・・・
いかん、腹筋が痙攣に襲われて、相手を拍手喝采してしまうかもしれん。
っていうかする。
「・・・・それで?マイカ姉は怒った?おっさんたち謝ったの?」
「い、嫌、怒ってたようには見えなかったが・・・謝ることが、出来なかった。」
平坦な声でヴィーが聞いてきた。
そんなヴィーにびくびくと応えるルーフェスを、庇うようにスイゲツが割って入る。
「わざとだと思うよ?”嫁候補”ってさヴィーも入ってたって知ってる?」
「は?私が?」
やっぱり、自分がウィステリア家の”嫁候補”になっていたのは知らなかったんだな。
まあ、子供のヴィーに言ったところで、どうこう出来ないし。
今となっては、男になる可能性もあるしな。
イザーク様には、別の嫁を新たに探してもらうことになるんだろう。
「そう。で”集団で突然囲まれたり、挨拶もせず無遠慮にジロジロ見定めたり、容姿に対して自分の好みでない所を本人の前で口にする”状態に何の文句も言わなかったんだ。あれって、失礼なことをされたって訴えて謝罪される事よりも、万が一にもヴィーを同じ目に合わせたくない気持ちの方が上だったからと僕は思ってる。状況は後から判るだろうから、敢えて自分は謝罪を受けずに、自分の要求を飲ませるように動いたみたい。」
「要求って・・」
「ヴィーをウィステリア家の”嫁候補”から外すこと。」
「・・・・・えっ?」
「でも、当主が”嫁候補”に会ってたおじさんたちのしてた事を知って物凄く怒ってね?こちらではもう見合いのような場は設けない、自分の嫁は自分で探せってことになったんだ。だから外すも何もなくなっちゃったんだけど。」
(万が一の可能性も残したくなかったんだ?マイカ姉。過保護だなぁ、そういうとこ。
でも、うわぁ・・・・愛されちゃってる感じする!マイカ姉ってば、もう、大好き!!
何だか、泣きそうだ。)
さて、ウィステリア家からおっさんたちの指導の依頼がくるか?
身の丈に合わない美人に迫ってこっぴどく振られて、個々に撃沈して学ぶだろうか?
それなら、その方が楽だけどな。
「でも、マイカ姉は傷ついたよね?私の事は気にしなくてもよかったのに・・・。囲まれたって、私ならそのおっさん達に初期段階の”洗濯”して報復してやったのに・・・・!」
「「「「!!」」」」
ヴィーの洗濯の初期って、確かジャピングスパイダーが死んじゃった段階の物じゃなかったか?!
もしかしてマイカさんが庇ったのは、ヴィーじゃなくて、ウィステリア家の強面髭面筋肉たちの方か?!
激しい水流と泡に翻弄される強面髭面筋肉集団。
・・・・・・・どうしよう、ちょっと見てみたいぞ。
「じゃあその人たちに会ったら問答無用に”洗濯”しちゃえば?鍛えてるし、武術を誇っているウィステリアを名乗ってるんだから、死にはしないよ・・・・多分。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
「「ふふふふふふ・・・」」
「機会があったら、やっちゃても良いかな?ルーフェス?反対されてもやるけどね。」
「止めない。心置きなくやってくれ。俺ももう庇いきれないし、庇う気もない・・・・」
おおっ!ヴィーが笑顔が黒い?!
本気だ、本気で言ってる・・・!
スイゲツと2人で笑っているが、あの人達に会ったら冗談じゃなく、絶対やる気だ。
って、おいおいおいおい、許可しちゃうのか?!ルーフェス?
「・・・まあ、それに関して反対するつもりは俺にもないが、反撃くらったらヴィーが危なくないか?恋愛的にどうしようもないおっさん達でも、一人一人がウィステリア家の猛者なんだろう?クラウスも何か言ってやってくれ。」
「・・・・気をつけて頑張れ?」
「なんだそれは?!」
「他に何をどう言えって言うんだよ?・・・・・・あとは、そうだな~、ヴィー、やるときは落ちるまでやれ!中途半端にして反撃をさせるなよ?」
「了解!クラウス!」
クラウスは、意外にも過激な方向の思考をしているんだな。
俺はお前が反対すると思って話を振ったんだが、迎合するか。
これはびっくり予想外。
「・・・・所で確認なんだけど、さっき言った”クロウさん”もマイカ姉を傷つけた中の一人なんだよね?」
「ガクは・・・・・そう言えば、ガクはマイカさんには会ってないな。その時は確か仕事でその場にはいなかったはずだ。」
「そうなのか・・・じゃあ、クロウさんは”保留”だな。」
「そうか!ウィステリア家の人でも、関係ない人にまで仕掛けちゃうと無差別になっちゃうもんね~。ウィステリアの人で、見合いに参加していたおっさん達限定にしないと~」
「大丈夫、ちゃんと確認してから”やる”から。クラウスの助言通り、徹底的に。」
「「「ははははは」」」
「「・・・・・」」
ふむ、しかし実際の所、あいつらに偶然会う機会など早々ないだろうな。
計画倒れになる確率のが高そうだ。
それで、ヴィーの気が済むなら良いのか?
・・・・・いや、それでは俺が面白くないではないか。
激しい水流と泡に翻弄される強面髭面筋肉集団。
見れるものなら見てみたい。
では、どうするか?
「やるなら、安全且つ確実な方が良い。遭遇を偶然に頼っていてはダメだ。」
「ロベルト?」
「春期休暇を利用してウィステリア家に赴き、見合いに参加していたおっさん達を集めて一気に咬ましてやれ!何なら手を貸してもいい。そして更に俺とスイゲツは再び教育的指導を行なってやろう!ルーフェスはその旨をお父上に連絡し、許可をもらってくれ。ああ、でもおっさん達には詳細は伏せるように頼むのも忘れるな?・・・という計画でやってみてはどうだろうか?」
「「ロベルト(様)最高!!」」
喜色満面なスイゲツとヴィーの様子に、我ながら良い考えだと悦に入る。
ルーフェスは僅かに逡巡していたが、「判った」と頷いた。
「同じ”嫁問題”って言っても、ロイナス様だと問題なさそうだよね?逆にモテ過ぎて選ぶのに苦労する方かな?」
「え?ロイナス兄上?そうだなぁ・・・あの人はご婦人には気持ち悪いくらい紳士的だし、あの無駄にキラキラした目でモテているはずだが、実際今はどうなんだろうな?何でそんな事を聞くんだ?」
「うん、上手く行くにしろ行かないにしろ、イザーク様とかは結構前から婚活というか、情報収集をしてるんだなぁって思ってさ。その反面うちのイザヨイ兄様とかロイナス様って全然そういう方面ほったらかしっぽくて・・・・何か急に気になってしまったというかなんというか。」
「・・・・・」
「でも、2人ともモテるし、若いからまだまだ気にする事ないよね?ごめんごめん、気にしないで~」
なんてことだ!
まだロイナス兄上も若いからと思って、あまり深く考えたことがなかったが、確かにスイゲツの言う通りだ。
あの”言わなくても良い事ほど、うっかり口に出してしまう”兄上の残念な部分を是正払拭しなければ、もしかしたら結婚が難しいのではないだろうか?そのせいで早い段階で、結婚問題とかが俺にお鉢が回ってくるのではないか!
「ク、クラウス!お前の所はどうなんだ?」
「俺のところ?俺の家は男も女も兄弟が多くてな~・・・パスカル兄貴だって、そんな話皆無だぞ?だからあんまり気にしてないというか・・・・上の兄貴と姉貴はそうもいかないが、パスカル兄貴と俺は、相手は平民でもいいから自分で何とかしろ的な傾向かな?」
平民?平民から結婚相手を探しても良いのか?
それって、相手側にかなりの負担を強いることになりはしないか?
俺たちは小さい頃から習って来ていて身についているからいいが、相手は礼儀とか作法とか所作とか、貴族関係、社交術、ダンス・・・それを1から習得しないといけないんだぞ?
「お前・・・仮にもトルス侯爵家子息だろう?良いのか?それで・・・」
「うちは、優秀な人材は身分に拘わりなく取り込む。社交に関しては家を取り仕切っている親父や母上や兄貴や姉上の領分なんだ。」
つまり、社交界には顔を出さなくてもいいようにするのか?
そんな事が出来るのか?
今度、父上に聞いてみよう。
「・・・・何で女性陣だけ呼び方が敬称なんだ?」
「・・・・・・・・・母上や姉上は、怖いからな。」
「・・・・そうか・・・・。」
「ヴィー!クラウスに狙われてる!狙われてるよ!」
「何言うのスイゲツ?クラウスが狙ってるのはマイク兄だよ?」
「ええっ?!・・・・・ああ、そっちなんだ・・・じゃあ、いいや。頑張れクラウス!」
何で、そこで安心して引くんだスイゲツ。
頑張れってなんだ?頑張れば何とかなるものなのか?
しかし、前からそうではないかと思っていたが、やっぱりそうか!クラウス。
「じゃあって何だ?じゃあって!というか狙ってないぞ?狙ってないからな!俺がマイクさんを狙うはずないだろう?!俺が狙ってるのはフロー・・・・あっ!」
「・・・・クラウスってば、フローラ狙ってるんだ?」
「~~~~くそっ!」
何だ違うのか、そうだったら面白かったのに。
語るに落ちた悔しそうなクラウスを、スイゲツとヴィーがにやにやして見ている。
ルーフェスまで、興味津々だ。
全く子供だな、しょうがない奴らだ。
「スイゲツ、ヴィー、あまり思春期な少年をからかうなよ?」
「「はーい」」
「嫌?止めるならちゃんときっちり止めてくれよ!ロベルト!」
いい返事だが、多分返事だけなんだろうなぁとは思いつつ、”フローラ”ってどこの誰だったかな?




