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理不尽な!?  作者: kususato
103/148

103. 冬季休暇 (18)

103話目です。

ユニークアクセスが1万を超えました。ありがとうございます!

 「ヴィーは、姉様じゃないの。」

 

 

 シェリルの突然の言葉に、再び固まったかのように母を見たまま動かないヒイロとヨシュア。

 しかし、次の瞬間、ヨシュアが猛然と喋りだした。


 「それってそれって!もしかして父様と母様は再婚同士で、ヴィーは父様の連れ子で僕たちは母様の連れ子で、今まで家族として暮らしてきたけれど、僕らとヴィーは実際は血の繋がりが全くない義理の兄弟で、しようと思えば結婚とか出来ちゃうっていうこと?!そうだよね?っていうことは、マイクなんかよりも全然僕らの方がヴィーに近いよ!うわっマジどうしよう!!負ける気しねぇ!!」


 「「教育的指導!!」」


 スパパーン!!

 シェリルとヒイロのスナップの効いた平手が、ヨシュアの頭に炸裂。


 「血迷うなよ!ヨシュ!」

 「いくら情熱的な愛情を肯定するこの国でも、さすがに近親相姦はだめよ~!」

 「だって!母様が、ヴィーが姉様じゃないって!」


 「言ったわよ?でも、ヴィーもあなたたちも私が生んだの、義理じゃないわよ~?血は繋がってるわよ~。そりゃあもう、ばっちりと。でも良くあの一言であそこまで言い切れるわね~母様びっくりよ~?」


 「僕もちょっと引いちゃったよヨシュ・・・・お前どんだけ、ヴィー好きなの・・・・」

 「煩いよ!ちょっと昔のちっさ可愛いヴィー姉様思い出して妄想入っちゃっただけだよ!本気じゃないし、ただ黒髪黒目が大好きなんだよ!さっき見たヴィー姉様は全然可愛くない!っていうか寧ろ男みたいだったじゃんか!」



 「あら?ヨシュ?さっきの”置いてかれる”って言い分と随分違うけど・・・・こっちが本音かしらぁ?とういうか・・・どんだけ黒髪黒目が好きなの。」


 「何だ、ヴィー姉様自身が好きなわけじゃないんだ・・・・ふ~ん、そっか。」

 「・・・・家族として好きは好きだよ・・・」


 はたっと思い出した母の言葉。

 「「あ・・・・そういえば姉様じゃないってどういう事?」」


 ヒイロとヨシュアは顔を見合わせた後にシェリルに向き直す。


 「「・・・・・・・じゃあ、ヴィーは兄様なの?」」

 「兄様でもないわ。」

 「「どうゆこと?」」

 「正確には”まだ”。」

 「「?」」


 「精霊の街のこととか精霊については、父様とジジ様に聞いた事あるわよね?精霊は成人になる16歳で自分の性別を選ぶの。女性か男性か、中性のままか。中には実体化出来る精霊もいて、極僅かだけど人間と結婚して生活してる精霊もいるのよ?だから、その血の流れを受け継いでいる人間もいるの。」


 「・・・・うん?」


 「その人間の中で生活していくうちに混血が進んで、人間側の血が濃くなって体が人間とほとんど変わらなくなって来ている人が多い中でも、精霊の体質が出てくる人・・・・先祖返りというのだけど、そういう人もいるのよ。」


 「・・・・・それって。」


 「私とあなたたち、そしてヴィーには精霊の血が入っているの。」

 「「・・・・・ヴィーは先祖返り?」」

 「そう。だから、ヴィーは今は女性でも男性でもない、中性なの。」

 「・・・・女でも男でもないのなら、何て呼べばいいの?ヴィー・・・を?」

 「ヴィーが望むように呼べばいいわ。それまでは、あなたたちの望むように呼べば良い。」


 「「うん・・・」」


 そう言うと、シェリルはニッコリと笑った。

 ヒイロはふと思いつき聞いてみた。


 「母様、一つ聞いてもいい?」

 「ええ、なあに?」

 「父様は、その事知ってるの?」

 「ふふふふ、知らないわよ?教えてないもの。」


 「「えっ?!」」


 「フフフフフフ・・・父様が知ったら・・・泣いちゃうかも。」

 「「・・・・・」」

 「うふふふ・・・可愛いでしょうねぇ・・・」

 「「母様・・・・・・・・・ドS!」」


 頬を染めてうっとりと嬉しそうな母親の顔を、青褪めた顔で見ていた2人は思う。

 これは先走ってヴィーのことを教えようものなら、自分たちに矛先が向く。

 何それマジ怖い。


 ((ごめん、父様・・・・・・!))



********************



 ラフリューリング王国の東区と南区の境にほど近い場所にある、ウィステリア家当主の屋敷に着いたマイカは筋肉の集団に取り囲まれている。


 ウィステリア家の嫁候補の1人を連れて来たとルーフェスが屋敷の者に伝えたあと、いくらも経たないうちにわらわらと集まってきた一族の独身男たちだった。

 ウィステリア家当主の屋敷に到着して、旅装を解き、汚れを落とすために風呂を借り、当主に挨拶をし終わった途端のこの状況。


 (なんじゃこりゃ?)


 自分が思っていた話”ウィステリア家の猛者との手合わせ”とは、何やら違うようだと感じがして片眉を上げて怪訝そうにしているマイカを丸無視で、筋肉集団のまるで品定めするような視線に晒されている。

 (私が手合わせするに足りるかの検分か?・・・・いや違うな)


 一応もっともらしい理由を考えては見る物の、全然違う意味の検分であるのはすぐ判る。


 (はて?どこで間違った?確かにルーフェス君は”手合わせ”とは言って・・・なかったな。え~と”お眼鏡に適う”だったか?でもなぁ・・逆じゃね?今のこの状況。)


 強面髭面筋肉なおっさん?たちは、マイカを足の先から頭に天辺までジロジロ見た後、

 「「「「はぁ~・・・」」」」

 と至極残念そうに首を振りながら嘆息した。


 「好みじゃない。」

 「貧乳。」

 「色気の欠片も見当たらない。」

 「何で髪が短いんだ。」

 「男にしか見えんがな。」

 とわらわら集まってきた彼らは、口々に愚痴を言いつつわらわら去って行った。


 「・・・・・」


 マイカは、かなり失礼な態度とコメントにも怒ることもなくやり過ごし、去っていく彼らを見送った。

 実は、この流れ5回目である。

 つまり入れ替わり立ち代りに、ふいにわらわら集まりジロジロ見たあとに、先程のようなコメントを呟き去っていくのだ。

 4~5人毎に。


 (チームでも組んでいるのだろうか?にしてもみんな揃いも揃って、強面髭面筋肉なおっさんばっかり、しかも言うことは似たり寄ったりでオリジナリティがない・・・・・綺麗所はいないのか?いい加減ムサイし、潤いがないな。)


 マイカが気になったのは、そんなことだった。

 ワンパターンな流れに飽きてきたので、”手合わせ”してもらえないなら、もう帰ってもいいかな?とか考えていた。



 通りすがりの屋敷の人間にルーフェスたちの居場所を訪ね、応接室で当主夫妻とお茶をしていると聞いたので案内して貰うことにした。

 案内人はこの屋敷の家令なのか執事なのかは不明だが、必要最低限な事とこちらの聞いた事しか話さないし視線のブレもない。

 (・・・・・この人は結構出来るって感じだな)


 応接室に着くと、マイカが来たことを当主に伝え部屋へと促した。

 「こちらです、どうぞ。」


 「まあ!マイカ様いらっしゃい!こちらへいらして!」


 ウィステリア夫人が嬉しそうにマイカを招き、自分の近くの椅子を勧める。

 彼女はルーフェスと同じくサラサラした銀髪を緩く結い、少し垂れ気味な目元が酷薄そうになりがちな同色の瞳を柔らかい印象にしている。とても美しい人だった。


 (ああ、ここでやっと潤いが!目の保養だな。)


 マイカも微笑んで勧めに従い、当主に目礼した後に夫人の近くの椅子に座った。

 横にいるウィステリア当主の強面筋肉なおっさんは、意識的に視界から外した。


 (もう、強面筋肉なおっさんはお腹いっぱい)


 ルーフェスとロベルトとスイゲツは、何かを聞きたそうにチラチラと視線を送っているが、マイカは夫人しか見ていない。

 夫人のワクワクして待ちきれないような様子に苦笑しながら、当主が訊ねてた。


 「マイカ殿、我が一族の独身の者が何人かは、あなたにお会いしたと思うが・・・その、誰か、あなたのお眼鏡にかなった者はいたでしょうか?」

 「そうですね、この部屋に来るまでに20人ほどの方にお会いしました。」

 「まあ!」

 「ほう、それで?」

 「残念ながら、私はどなたの眼鏡にもかなわなかったようですよ?そんなに私は弱そうに見えますか?」


 「「「「「えっ?」」」」」


 「武術に優れたウィステリア家の方との手合わせを楽しみにしていたのですが・・・・私の未熟さを見て取られたのでしょうね、”手合わせするに値しない”と。ふふふ、もっと精進しないといけませんね。」


 ニコニコと告げるマイカの言い方に違和感を感じた当主は、ルーフェスに顔を向けた。


 「・・・・・ルーフェス?マイカ殿をこちらにお誘いする時に、きちんと説明して差し上げなかったのか?」

 「えっ?!そんなはずは・・・」


 と言いつつ、マイカをウィステリア家に誘った時の事を思い返してみる。


 『い、一度王都中央にロベルトたちを送った後で、お、お暇がありましたら!ぜ、ぜ、ぜひ、我がウィステリア家に起こし頂けないでしょうか?!マイカさんは、イザーク兄上を怖がられないと伺いました!ウィステリア家には!マイカさんのような女性がひ、必要なのです!我がウィステリア家に、マイカさんのお眼鏡に適う男子がいるかは不明ですが!ぜひ!一度!一族の独身の者に会っていただきたいのです!失礼は!重々承知していますが!我がウィステリア家を助けると思って、一族の男子にマイカさんにお会い出来る機会をく、く、下さい!!』


 一番大事な事柄を伝えていない事に、今気がついた。

 掠った言葉は言っていても、肝心の”嫁候補”の”よ”の字も言ってない。

 結構鈍臭いルーフェスだった。

 

 「申し訳ありません!父上!一番大事な言葉をマイカさんにお伝えしてませんでした!マイカさん!ここへおいで願ったのは、我がウィステリア家の独身の者の”嫁候補”としてなのです!肝心な事をすっ飛ばしてしまっていました!申し訳ありません!!」


 ルーフェスは泡食って、抜けていた説明と謝罪をした。

 それを聞き当主夫妻も困り顔だ。


 「・・・・ルーフェス、お前は・・・。マイカ殿、私からも謝罪する、申し訳なかった。」

 「え?ああ、お気になさらずに。気にしてませんから。」


 マイカの言葉に安心し、再び訊ねる。


 「で、では改めてお聞きする。マイカ殿、我が一族の独身の者の中で、その、誰か、あなたのお眼鏡にかなった者はいたでしょうか?」

 「残念ながら、その答えも一緒です。私はどなたの眼鏡(・・・・・・・・)にもかなわなかったようですし、こちらの方としても会話すら出来ない方たちのことを眼鏡にかなったかどうかと聞かれても困ります。」

 「?会話が出来ない・・・?それはどういう事でしょうか?」

 「言った通りの意味です。詳しいことは、そちらでお調べください。」

 「な、何かあやつらが失礼をいたしましたか?」

 「・・・・・」


 マイカはにっこり笑って、それには答えない。

 そんな事を親切に教えるつもりはないようだ。

 困っている当主夫妻には悪いとは思うが、先に礼を欠いたのはそっちだ。

 こういう1対複数の見合い(もど)きを設定するのは初めてではないようなのに、どういう訳か当主は把握していないらしい。

 当主が、知らなかったでは済まないだろうに。


 そう言えばと、ヴィーもこの家の”嫁候補”になっているとマイクが言っていたのを思い出した。


 (しかし嫁候補(ほんにん)の意思を無視して、何やってんだここん()。遊びに来るだけならまだしも、さっきみたいな品定め的な事を私の可愛いヴィーに体験させたくないなぁ・・・相手は強面髭面筋肉なおっさんばっかりだったし。強面筋肉は平気でも、髭はちとまずいもんな。)


 マイカは、ここは釘を指して置こうと思った。


 「では、用も済んだことですし、私はお暇させて頂きます。」

 「「「「「!!」」」」」


 「ですが、その前に1つだけお伝えしておきますね?」

 「な、何だろうか?」

 「”リヴィオラ”という子もウィステリア家の”嫁候補”になっていると聞きました。」

 「!あ、ああ。あなたのお身内だと伺っている。」

 「そうですか?それなら話は早い。では”嫁候補”とやらからは外しておいて下さい。」

 「!・・・・理由を伺っても宜しいか?」

 「こちらにもこちらの事情がありますので。」


 再びにっこり笑って、すっぱりと拒絶した。


 ウィステリア家の事情を知らないし、聞く気もないマイカは、こちらの事情も話すつもりはない。

 ルーフェスたちが知っている事柄くらいなら、口止めをした以外のことなら学校にも申請するらしいので知られても問題はないが。

 自分自身のことならともかく、ヴィーのトラウマをなぜ教える必要がある?

 


 (っていうか、本人に話しを通せよと思う。まずはそこからでしょう?・・・・でも、ヴィーに関してだったら私とマイクは阻止する方向で動くだろうな。)

 

 完全にマイカが拒絶したことを察した、ウィステリア当主夫妻はそれ以上は何も言ってこなかったが何かを考えている様子だった。


 マイカはウィステリア家を暇を告げたが、ロベルトとスイゲツはこのままウィステリア家に滞在することになり、自分たちの家にも各々連絡すると言う事になった。

 そして、この後すぐに言葉通りにマイカはウィステリア家を後にした。

 

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