10. 北区ターク港船着場
10話目投稿です~。
シェリルに会う事が出来、一応目的は達することができた、ロイナス・イザヨイ・イザークは、残りの休暇を実家で過ごす為に、北区ターク港の船着場に来ていた。
北区は山や森が多く、道も険しい。
更に、強い魔獣なども生息数が多いため、街道の整備が進んでおらず、陸路より海路を取った方が早い上に安全だからだ。
3人は国の騎士団に所属しているが、まだ1年目である。この国の騎士団は、入団後に1年間の騎士訓練期間を終え、2週間の休暇の後、王都中央、東区、西区、北区、南区のそれぞれの管轄の騎士団に配属が決まるしきたりになっているのだ。
何故、初年度の騎士訓練後に、わりと長めの休暇あるのか?
それは各々の騎士団の人材を確保するための戦いが、王都中央で繰り広げられているからだ。
まあ、ある程度は本人の希望、成績、性質などで振り分けられるが、優秀な人材は、どの地区でも争奪戦の的になる。本人がその場所に居たりすると争奪戦が更に悪化したり、泥沼化したりするので、新人が休暇中に配属地を決めてしまうのが慣例化しているためである。
「では、道中気をつけてな。休み明け、王都中央で会おう。」
ロイナスとイザヨイが、王都に程近い西港ツーク港に寄航する船の乗船手続きを済ませた後イザークが言った。
「えっ?」
「イザーク、南区出身だよね?僕たちが手続きした船は、南区のツーク港まで行くはずだよ?一緒に行かないのかい?」
「ああ。」
「なんだ?実家に顔を見せないのか?1年ぶりだろう?実家のある地区以外に配属されたら、またしばらくこんな長期休暇は取れないんだぞ?・・・・北に残って鍛錬でもする気か?」
「自主鍛錬なら、ここに来るまでにもこなしながら来たが・・・そうだな、もう少し北区の強い魔獣を相手にしてもいいな。」
初年度の騎士訓練終了後、ロイナスとイザヨイが海路で北区に来たのに対し、イザークは陸路を取って来た。そして、その険しい陸路にも関わらず彼らより1日早くジオターク村に到着し、シェリル達に会っていた。
それもたった一人で。何この人、顔以外も怖い。
「・・・あれ?その言い方だと自主鍛錬以外にも目的があるように聞こえるけど?」
「ああ、リヴィオラだ。」
「「ええっ!?」」
ロイナスとイザヨイは激しく動揺した。
(待て待て!そうだ、待つんだ!俺!そんなはずある訳がない。ある訳ないじゃないか!)
「リヴィオラって?・・・・どういう意味なんだ?・・・・えっと・・・・・えっと・・・ああ!将来子供を持った時、子供にどう接したら良いのかの練習か?イザークを見て怯えない子は珍しいからな!」
動揺のためか、イザークとリヴィオラに対して微妙に失礼な事を言っているが、ロイナスは気づかない。
「結婚相手の候補としてだ。」
「「!!!」」
(言っちゃたーーーーー!!イザーク言っちゃったーーーー!!聞きたくなかったーーー!!!)
「いやいやいやいやっ!確かに6歳差程度なら許容範囲になるかもしれないけど!それは相手がもっと育ってからでないとだめだろう?!やばいだろ?11歳だろ!子供だから!しかも、あの子実年齢より下に!8歳か9歳くらいにしか見えないから!い、今動いちゃダメだ!やばい!やばいって!何がやばいのかは!・・・・・・・っ!俺には言えない!!」
「ロ、ロイナス、落ち着いて!しっかり!」
「リヴィオラは、俺を怖がらない稀少な未婚女性だからな。」
自分が他人から怖がられている自覚はあるらしい。
「我がウィステリア家一族の男子は、昔からこんな感じの容姿で女性に敬遠され、結婚相手を見つけるのが至難の業なんだ、リヴィオラのような存在は朗報なのだ。確約・確保できれば尚良い。」
「「確保?!」」
まるで、何かの犯人のようだ。
「俺の弟と同じ歳なのだ、リヴィオラは。」
「・・・・・ああ!・・・何だ、弟のためか・・・・良かった・・・・てっきり・・・・」
「リヴィオラと同い年の弟さんのためって、君の弟が結婚相手に不自由する子に育つとは限らないだろ?早計じゃないかい?」
「だから先程も言っただろうが、ウィステリア家の一族の男子は似た容姿だと。弟は齢11にして、もうすでに俺とそっくりなのだそうだ。」
「「・・・・・・・・」」
((なんて、不憫な・・・・!))
「まあ、弟の相手でなくても・・・・リヴィオラが16歳で成人する頃、俺も22歳だな。俺が相手でも、さして問題はないしな。」
ーーーーーと、ニヤリとイザークは笑った。
この後、得体の知れぬ焦燥感と義侠心が入り混じった感情に突き動かされたロイナスとイザヨイによって、イザークは強制的に同船させられ北区のターク港を後にしたのだった。




