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 子供。これほど愛らしいものが他にあるだろうか。

 この、愛しいものを永遠に飾っておきたい。そのために私は死んだ。死ねば、子供を手に入れる力を身に付けることが出来る。あの男性はそう言っていた。

 さて……ド、レ、ニ、シ、ヨ、ウ、カ、ナ?






 都内に大型娯楽施設がある。休日は親子やカップルが大勢集まり、賑わっているようだ。だから、安藤のような男がいると妙な感じがする。いったいこの男は何をしに来たのか。はしゃいでいる客を嘲笑いにきたのか。悠真のように好みの女性を探しているのか。だとしたらかなり不気味だ。安藤には失礼なのだが、彼に対してはあまり良いイメージが持てない。彼の生活スタイルが悪い印象を抱かせるのだ。

 時計を見ると、安藤はショーが行われる会場に向かった。今日はヒーローショーらしい。入って行くのは子連ればかり。たまに男性が1人で入ってゆく。マニアなのだろう。安藤もマニアを装って中に入った。



 何故安藤はヒーローショーに来たのか。無論ショーを観に来たのではない。仕事の為に来たのだ。

 それは4日前のこと。安藤の携帯に電話があった。彼の言う、墓守の上層部からだ。

「はい?」

「新たな暴霊が現れた。至急処置してくれ」

「またですか。本当に多いですね、最近」

「そうだな。しかも今回は、子供を狙った犯行のようだ」

「何?」

 安藤の目つきが変わった。

 今回狙われている者達が子供だからだ。安藤は子供が大好きで、仕事の無い日は近所の子供と遊んでいるのだ。だから彼は、幼子が狙われた犯罪が嫌いだ。しかも今回は暴霊が絡んでいる。彼は強い憤りを感じていた。

「暴霊はヒーローショーに出演している井口幸平。最近起きている子供の失踪事件も彼の仕業だ」

 ここ2週間、ショーに来ていた子供が姿を消してしまうという事件が起きている。警察も捜査をしているが、犯人は逮捕できるような相手ではない。

「わかりました。すぐ調べます」



 という経緯で安藤はここにいる。悠真にも伝えておこうと思ったが、子供を狙う暴霊は自分の力で止めたかった。そのため、悠真には何も伝えていない。

 席について10分、会場が暗くなり、ステージに5人の男女が現れた。

「みんな、こんにちは! 今日は僕等に会いに来てくれてありがとう! 僕がレッドの、赤坂啓太だ!」

 こんな調子で5人の自己紹介が終わった。すると、会場の照明が怪しい光を放った。

「くくく、待っていたぞ!」

 そこへ怪人とその部下が現れる。暴霊に比べれば可愛いほうだ。

 お決まりの「お、お前は○○!」云々があり、5人は華麗な身のこなしで部下を倒した。そして、怪人に立ち向かってゆく。当然生身の肉体では勝てるはずもない。5人は照明が暗転すると同時に、脇で待っていたもう5人の演者と入れ替わり、あたかも戦隊に変身したかのように見せた。彼等はどうも、4大元素を操る戦士らしい。

 まるで墓守のようだ。悠真も同じように別の姿に変わり、暴霊を退治している。

 ショーは30分程でクライマックスを迎えた。最後は全員、そして会場にいる客の力を合わせて敵のボスを倒した。自分達も協力出来たのが嬉しいのか、子供達は笑っていた。この笑顔も、何年もすると失われてしまうのか。そう考えると、人間とは悲しい生き物である。

 それにしても、誰かが共に戦ってくれるというのは嬉しいことだ。悠真はいつも1人で戦っている。きっと寂しいだろう。安藤は戦いを見てはいるが参加したことはまだ無かった。

 自分も共に戦った方が良いのかもしれない。悠真も寂しさを感じずに済むかもしれない。

「この後は握手会があります。こちらにお並びください」

 握手会まであるのか。これに関しては子供だけではなく、母親達も喜んでいるようだ。

 子供に最も接近出来る瞬間。暴霊が行動を起こすかもしれない。

 そういえば井口はどの男なのだろう。出演者であることは判るが、何を演じているのかを知らされていなかった。

 近くに貼ってあったポスターを見た。下の方に小さく【レッド・・・井口幸平】と書いてある。

 子供と握手をしている、赤い服の男か。奥様ウケするルックスに、優しそうな笑顔。こんな好青年も暴霊と化してしまうのだから、世の中何があるか判らない。

 列も大分短くなっていた。あれだけ人がいれば犯行も出来まい。

 そう考えていた安藤だったが、事件は突然起きた。

「嫌ああっ!」

 会場の出口付近で悲鳴が聞こえた。見ると、母親らしき女性が何かを抱えて泣き叫んでいる。安藤は母親に駆け寄った。すると、同時に何者かも母親に近づいた。それは幸平だった。

 一瞬目が合う。何かを感じたのか、幸平は眉間にしわを寄せた。だがすぐに顔を元に戻し、

「どうしました?」

 と尋ねた。

「こっ、子供が、子供が!」

「子供?」

「失礼。……これは」

 抱えていたものを見て絶句した。

 真っ黒な眼や口から血を流した人形だ。その口はニヤリと笑った形になっており、とてつもなく醜い顔だった。

 目の前の暴霊を侮っていた。幸平は状況など気にせず、いとも簡単に目的を遂行してみせたのだ。どんな方法を使ったのか。子供が死んでいなければ良いが。

 スタッフが通報し、30分後に警察が到着した。

 容疑者はそのとき会場にいた全員。とは言え安藤には犯人が幸平である事は判っているのだが。

 安藤と井口も聴取を受けた。ここで幸平が犯人だと仄めかすようなことを言っても仕方ないので、起きたことを正確に伝えた。だが、そのことが警察を余計に混乱させた。

 警察が犯人をつきとめるには、暴霊の存在を認める他無い。無論すぐには認められないだろう。

 聴取を終えると、安藤は幸平を待った。幸平は安藤の次だし、警察も疲弊しているため早く終わる筈だ。

 そして予想通り、幸平の聴取は5分程で終わった。幸平はあたりを見回し、会場の裏口、控え室などがある方へ向かった。スタッフが聴取を受けている今なら止められることはない。安藤も裏口を抜けた。先は外ではなく、巨大な倉庫の中に通じていた。

 その中に建てられた簡素な造りの建物。これが控え室だ。

 ドアの前まで来て、幸平は足を止めた。

「ファンの方ですかぁ?」

「あぁ〜、違うな」

 クスクス笑いながら幸平は振り返った。いつ手にしたのか、青いリングを手に持っている。

「つけてたのバレバレだよ。嫌な気配がしたからね」

「ほう」

「おっさん、俺を成仏させに来たんでしょ?」

 この男には安藤の正体が判っているらしい。ただ、安藤には彼を成仏させる気など毛頭無い。

 ポケットから短剣を2本取り出し、幸平に投げつけた。幸平はそれをリングで跳ね返し、更にそれを振り回して襲ってきた。

「ちっ、青年の真似して戦ってみたが、やっぱり鈍ってるな」

「何言ってやがる!」

 喉をリングで突かれ、安藤は体勢を崩した。

「ここまで来たご褒美に、トリックを教えてやるよ」

 幸平が手に力を入れるとリングが巨大化した。それを、安藤の周りを囲むようにして落とした。リングから光が放たれ、安藤の体を包み込んだ。

 意識が薄れてゆく。これから自分はどうなるのか。

 安藤は眼を静かに閉じた。





 気がつくと、彼は知らない場所にいた。どこか古い家らしい。床や壁は冷たく、窓は少し曇っている。電気はついていない。外から入ってくる光が頼りだ。

 安藤は周りを見回した。すると、とんでもないものが目に入った。

 床に、リングで締め付けられた子供達が寝かされていた。床だけじゃない。立ち上がると何かが頭に当たった。天井にも子供達がつる下げられていたのだ。

 石のように冷たく動かない子供達。安藤は脈を確かめた。まだ生きている。仮死状態のようだ。

 再び窓の外を見る。朝になったばかりのようだ。昨夜はここで過ごしたらしい。

 突然物音がした。見ると、6歳くらいの男児が起き上がるところだった。もしかすると、先程すり替えられた少年かもしれない。

「おい、大丈夫か」

「ぅ〜ん、おじさん、誰?」

「え? ああ、後でな。それより、ここから早く逃げないと」

 だが、これだけの数の子供達を逃がすにはかなりの時間がかかる。それに、どうすれば仮死状態から目覚めさせられるのかも判らない。

 やはり悠真に連絡すべきだったか。自分1人で解決しようと思っていたが、現実はそう上手くはいかなかった。

 携帯を取り出した。左上には圏外の2文字が表示されている。もう連絡は取れない。1人で子供達を助けなければ。

「よし」

 まず安藤は短剣を取り出し、子供の身体を締めつけるリングを壊してみた。リングは案外脆く、すぐに外せた。

 リングが外れると血色がよくなった。しばらくすれば目を覚ますだろう。

「何やってるの?」

「お仕事」

「僕もやる」

 安藤は少年の顔を見た。不意に、彼に悠真の姿を重ね合わせていた。

 常に悠真と共に仕事をしていた安藤。戦い方や墓守の仕事について教えてやることもあった。

 ポケットから別の短剣を取り出すと、それを少年に渡した。少年は不思議そうにそれを観察している。

「その剣でリングを壊すんだ。俺は上のをやるから、坊主は下に寝てる奴らを頼む」

「わ、わかった」

 剣をしっかり持つと、安藤の真似をしてリングを壊し始めた。初めは時間がかかったが、徐々に慣れ、10秒足らずで壊せるようになった。

 成長する少年を見て、安藤は微笑んだ。初めて悠真に会った時のことを思い出していた。

 少年の助けもあり、リングを全て壊すことが出来た。全員を寝かせてみると、床が埋まってしまう程だった。

 1仕事終え、安藤は少年とタッチした。

「ありがとな、手伝ってくれて」

「へへへ」

「気持ち良いか、仕事するのは」

「うん」

「そうか。お前なら、良い大人になれるよ」

 同時に、良い墓守にもなれる、と感じた。しかし墓守はかなり危険な職種だ。彼が立派な青年になったそのとき、また会いたいと思った。その頃には墓守の仕事も引退しているかもしれない。そうなれば悠真が今の安藤の立場になるのか。

 悠真と少年が出会ったら……思わず笑ってしまった。

「何で笑ってるの?」

「何でもねぇよ」

 安藤は眠っている子供達を見た。次は彼等を起こさなければならない。

 近くにいた子供を起こそうとしたそのとき、部屋の扉が軋みながら開いた。部屋の外に、井口幸平がいた。手には子供を締め付けていたあのリングが握られている。少年を眠らせようとしていたようだ。

 リングを一つしか持っていないところを見ると、安藤は殺すつもりだったらしい。

 床に眠らされている子供達を見て、幸平は憤慨した。

「てめぇ、ガキに何しやがった!」

「それはこっちのセリフだ!」

 安藤は幸平の腹を跳び蹴りした。その衝撃で幸平は廊下の端まで飛ばされた。

「俺はあのバカを止める。こいつらを頼んだぞ」

「僕も行く!」

「駄目だ! お前にはまだ早い」

 少年は黙った。

 彼の頭に手を置き、安藤はひと言、頼んだぞと言った。

 突き当たりの壁に大きな穴があいている。幸平は外に落ちたらしい。ただ彼は暴霊なので死ぬことはない。

 廊下を走り穴の前に立つ。そして短剣を構え、左手に軽く突き立てた。傷口から血が出る。流れた血を短剣にしっかりと染み込ませた。

「よし」

 何の儀式か判らないが、それをやった後、安藤は穴から飛び降りた。出てみて初めて判ったが、ここは山奥に建てられたログハウスだった。幸平の別荘か何かだろう。

 家を見ていると、背後から頭を殴られた。幸平は、今度はリングを2つ持っていた。

「ちくしょう!」

 別の短剣を投げつける。短剣はリングをすり抜けていった。すると、その短剣がもう一方のリングから飛んできた。安藤は飛んできたナイフを手でキャッチした。

 なるほど、これがすり替えのトリックか。2つのリングを組み合わせることで、物体を移動させることが出来るのだ。

 トリックが判ったのに、安藤は攻撃を仕掛けることはなく、家の奥へ逃げた。

「逃げても無駄だっての」

 幸平もそのあとを追った。

 逃げながら、安藤は短剣を睨んでいる。

「ちっ、許可はまだ下りねえのか!」

 許可。先程の血は許可を貰うために必要だったのか。だが、いったい何の許可なのだろう。

 イライラしている安藤に向け、幸平はリングを飛ばしてくる。リングはブーメランのようにも使えるらしい。

「何だか判らないけど、秘密を知った以上あんたには死んでもらうから、よろしく」

「くっ」

 安堂が戦っている最中、少年は必死に子供達の肩を揺さぶっていた。

 外で大きな物音がする度怖くなるが、安藤が戻って来ることを信じ、託された仕事をこなそうとしている。

 諦める気など決してなかった。

「起きて! 起きて!」

 彼の必死の呼びかけに、子供達が微かに反応した。まだ元気だ。そのことを安堂に伝えに行こうとして、少年は廊下を進んだ。

「おじさん!」

 1度声をかけたが、状況を理解して再び部屋の方に戻った。安堂は幸平の攻撃に苦戦を強いられているのだ。

 リングによる攻撃を短剣で止める安藤。体力をかなり消耗している。

「諦めろよ! 俺が楽にしてやっから!」

「ふざけんじゃねぇっ!」

 リングを止めた瞬間、今までにない程の振動が両者の腕に伝わった。短剣が赤く輝いている。

「なんだ?」

「へへっ、遅いんだよ」

 短剣を指で起用に回す安藤。すると、悠真のステッキのように、短剣が刀に変わった。

 更に安藤の身体を青白い炎が包み込んだ。

 炎は瞬く間に安藤の身体を変容させた。その姿はコートを着た忍者のようにも見える。

「これで判ったか、俺が何者か!」

 輝く刀を構えて安藤が言った。

 これが、先程許可を求めていた事だ。血を武器に染み込ませる事で、悠真と同じように姿を変えることが出来るらしい。なるほど、これだけ面倒くさいといつも戦うことは出来ない。悠真に戦いを任せているのには、この様な理由があったようだ。

「な、何だよ、ふざけんじゃねぇよ!」

 幸平の身体も青白い炎に包まれ、暴霊としての姿を露わにした。

 茶色の身体に青いリングの装飾が施されている。姿を変えることで、鍛えられた肉体もより際立った。

「そうそう、ソレでないと俺も戦いづらいんだよ!」

 俊敏な動きで刀を振り回し、幸平にダメージを与えようとする。だがリングをすり抜ければ攻撃が自分にあたる。両者とも傷を負ってしまった。

 幸平の傷口からは赤黒い血が吹き出した。どうやら彼も降霊術で動けるようになった死体だったらしい。

 あのリングをどうにかしなければ埒があかない。……いや、もっと良い方法がある。

 安藤は高くジャンプし、幸平の後ろに回った。そして腰に付けていたナイフを手に持ち、背中を斬りつけた。

 これは、以前悠真が行った戦法だ。

「ぐおおっ! てめぇ!」

「おいおい、正義の味方がそんな汚い言葉を使って良いのか?」

「正義? 何言ってんだ、おっさん? 今の世の中、そんなモノは無意味なんだよ!」

 華麗に舞いながら幸平が攻める。やはりリングによる攻撃が重い。しかも動きが速いため、先程のように後ろをとることは出来ない。

 こんなとき、悠真はどうする。安藤は考える。

 いや駄目だ。誰かの真似をするのでは道は切り開けない。自分の戦い方を思い出すのだ。

 安藤は手を高く上げた。すると、地面から大量の短剣が飛び出し、幸平の足を貫いた。激痛に悶えリングを落とす。そのうち1つを手に持つと、それは一気に燃え上がった。リングが1つ失われれば、あの変幻自在の攻撃を封じられる。

「あっ、リングが! てめぇよくもぉっ!」

「悪いなぁ。こっちも仕事なんでね。お前さんも良い仕事をしてたのによ、何でこんな事やってんだ?」

 足が機能しなくなったのか、幸平は立てなくなっていた。

「言われたんだよ」

「は?」

「死ねば、俺は欲しいものを手に入れられる。あの男に言われたとおり、俺は死んだ。そしたら、俺はこの力を使えるようになっていた」

 あの男。

 読みが正しければ、男は降霊術師だ。

 降霊術が暴霊にどう作用するかは判らない。もしかしたら、彼の話を聞けば何か判るかもしれない。

「子供が欲しい。あの美しいオブジェを、全て手に入れたいんだあっ!」

 幸平の叫びに呼応するかのように、足の傷口が塞がってゆく。

 再生能力。これは、降霊術による効果なのか。

 残りのリングを振り回し、再び幸平が攻撃を仕掛ける。だが今度は特殊な攻撃は出来ない。安藤は手を組んで印を切った。地面から4本の鎖が飛び出し、幸平の手足を拘束した。これは、悠真の処刑と同じだ。

「終わりだぁっ!」

 暴れる幸平の首を刀で切り裂いた。赤黒い血が大量に吹き出し、彼の身体はドロドロになって消えてしまった。自己再生をする前にトドメを刺すことが出来た。

 降霊術には、暴霊の肉体的能力を引き上げる効果があるようだ。以前悠真も戦ったと言っていた。その暴霊も視覚以外の感覚が長けていたという。普通の暴霊よりも厄介な相手になりそうだ。

 人間の姿に戻ろうとした、そのとき。

 背後から強烈な蹴りを食らった。見ると、僧服を着た金髪の男が歩いて来るところだった。あの距離からどうやって蹴ったのか。

「なるほど、まだまだ生ける屍も改良の余地があるということか」

「お前、降霊術師か?」

「そういう事になるな」

 降霊術師は手を広げた。腕が蛇のようにしなっている。しかも伸び縮みしている。これが遠距離攻撃のトリックだ。

 何らかの力により、この男は手足を伸ばせるのだ。

「丁度良いな。お前を捕まえて、上層部に連れて行こうか」

「出来るかな?」

 そう言うと、男は手を元に戻して安藤に襲いかかってきた。刀で攻撃を防ごうとしたが、腕が蛇のように動いて刀を交わし、顔面にパンチを食らってしまった。怯んだところを、男は更に攻撃する。

 あまりのパワーに耐えきれず、安藤は元の姿に戻ってしまった。

「邪魔するな」

 男は倒れた安藤に背を向け、こう続けた。

「1つ教えておこう。この山に、貴様の相方が来るようだ。おや? 私の放った霊も山に入ったようだぞ? 気をつけたまえよ、安藤肇君?」

 男は着た道を引き返した。

 相方。それは多分悠真のことだろうが、何故あの男はそんなことを知っているのか。しかも彼は安藤の本名まで知っていた。

 いったい何者なのか。もしかしたら、以前どこかで会ったことがあるのかもしれない。

 安藤は立ち上がった。子供達の安全を確保し、そして、悠真と合流しなくては。

 まだ暴霊が潜んでいる以上、降霊術師が悠真に襲いかかる可能性もある。あの男は1人では太刀打ち出来ない。

「青年」

 安藤は灰色の空を見つめた。







 時を同じくして、山に大型車が入っていった。ロケバスのような車だ。

 その中に8人の男女が乗っている。その内2人は……

「西樹君、着いたよ?」

「え? あ、ああ」

 悠真と恵里だった。

・アサシン……悠真の上司、安藤肇が墓守の力を発動した姿。忍者のような姿をしており、ダガーナイフを使用する他、刀やトラップを使った戦い方も得意とする。墓守は自身の武器に魂の1部(血)を捧げることで霊力を発動することが出来る。


・チェンジリング・・・俳優の井口幸平が暴霊となって蘇った姿。所々にリングの飾りがついた人型の暴霊で、2つのリングを使って戦う。また、このリングを使うことで物体を移動させることも可能。

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