若き墓守
確か、彼に呼ばれてアパートに来て、それから……。
「朱美、お前騒ぎすぎなんだよ。あの子にふられちゃっただろ?」
何よ。あんたが2股かけるからいけないんでしょ?
あれ、声が出ない。首にも紐が巻かれてる。
え? あたし殺されたの? 何で? 悪いのはコイツなのに!
「じゃ、出来るだけ上手くやるわ」
彼が何かを取り出した。それは鋸だった。
周りには幾つか箱がおいてある。もしかして、バラバラにされるの?
嫌だ。あたしは悪くないのに。2股掛けてたコイツが悪いのに。何で……何であたしが死ななきゃならないのよ!
「えっ」
「悪くないのに」
「そ、そんな」
「あたしは、悪クナイッ!」
いつの間にか、右手に鋸を持ってた。反対に、彼が下に転がってる。何だか入れ替わったみたい。ちょうど良いわ。こんな男、逆に殺してやる!
「あ、朱美! 悪かった。俺が悪かったああっ!」
その事件はさほど大きくは騒がれなかった。似たような事件が多くなってきたからかもしれない。
事件の概要はこうだ。
都内に住む女子大生、篠原朱美が、何者かによって殺害された。彼女の身体はバラバラにされ、部屋に放置されていた。辺りに木製の箱が8つ置かれていたため、それに身体の部位を入れて何処かに遺棄しようとしていたのだろう。それが、何らかの理由で出来なくなったのかもしれない。
警察は住人の小宮巧を捜索している。
事件の記事を読み終えると、西樹悠真は新聞を畳んだ。
ここは都内にある大学。彼はいつものように校内の図書館にいた。24時間開いているため、ここで夜を明かすことも少なくない。5ヶ月前に入学して以来、ここは彼の聖域となっていた。
常に服を黒で統一しているため、いつしか周りの生徒は《死神》と呼ぶようになった。
恐ろしい異名に反して、人付き合いはまあまあ良い。
「本当に、おっかないねぇ」
新聞を鞄にしまうと、悠真はスタスタと出て行った。
彼は人の視線が苦手なのだ。今のように数人の視線が彼に向けられた日には、溜まったものではない。
殊に異性の視線が1番苦手で、目が合うとかなり緊張してしまう。その癖、好みのタイプの女子を見ると目が釘付けになってしまう。
だがいつまでもそんな事はやっていられないので、大学に入ってからは異性とも意思疎通がとれるように努力していた。
外は既に薄暗くなっている。いったい何時間図書館にいたのだろう。
少し歩くと門が見えた。そこに茶色のジャケットを着た男性が立っていた。30代後半らしい。髪はボサボサで、煙草をくわえている。
「すいません、遅れました」
悠真は男性に謝罪した。どうやら、悠真よりも位の高い存在のようだ。先輩ではないだろう。バイト先の上司なのか。わざわざ大学にまでやって来るだろうか。それに、悠真はまだバイトをしていない。
悠真の方に顔を向けると、煙草を口から離し、下に捨てた。
「俺が学生の頃はもっと早く終わったけどなぁ」
「どうせサボってたんでしょう?」
「ばれたか」
「見てればわかりますよ。ギャンブルばかりやってるし、面倒な事は全部俺にやらせるし」
悠真は男性に愚痴をこぼした。生活面に少々問題があるらしい。
悠真の愚痴を聞き、男性は笑った。
「いずれ判るよ。こんな事をずっと続けてると、余暇が欲しくなる」
「へぇ。ま、そうかもしれませんね。それより、アレについては判ったんですか?」
悠真の質問に、男性の顔が曇った。
「ああ。今回は少々厄介だった」
話し方も真面目らしくなった。アレ、というのはそれ程重要なことなのか。
「奴は肉体を入れ替えて逃げている」
「じゃあ」
「そう、殺されたのは篠原朱美じゃない」
先程読んでいた新聞に載っていた名だ。殺されて、おまけにバラバラにされてしまった女性だ。
彼女は殺されていなかったのか。肉体を入れ替えて、というのはどういう意味なのか。何かの比喩か、それとも
、ここはそのままの意味で取るべきなのか。
「本当に殺されたのは、小宮巧だ」
暗い部屋。
朱美はそこで携帯をいじっている。持ち主は彼女ではない。元交際相手の小宮巧のものだ。
画面には数人の女性の名が表示されている。メールの履歴にも彼女等の名が。数えただけでも8人はいる。同時期に大人数の女性と関係を持っていたとは。更に驚いたのは、皆朱美の知り合いだったということだ。巧と付き合い始めてからも彼女等とはよく遊んでいた。裏で巧と関係を持っていながら、何食わぬ顔で朱美と付き合っていたのだ。
巧を殺したところで、朱美の怒りは収まらない。彼女の次の獲物は、彼が関係を持っていた8人の女達だ。
自分に宿った恐るべき力。それを使えば容易に殺すことが出来る。朱美は部屋の中で声を上げて笑い、早速準備にとりかかった。
夜6時。悠真と男性はファミレスにいた。店内には数人の客がいる。平日だからなのか、すぐにテーブル席に案内された。
「にしても、どうやって探すんです?」
悠真が男性に尋ねた。
探しているのは、2人が真犯人だと断定した篠原朱美。
男性は煙草を吸うと、灰皿にそれを押しつけ、問いに答えた。
「なぁに、トリックが判れば楽勝よ。器と中身が合わないってことは、無理をして存在してるってわけさ。必ずボロが出る」
「なるほど」
「探すのは俺の仕事。あとはお前の仕事だ」
わからないのが、彼等の言う仕事についてだ。殺人事件と関係がある時点で普通の仕事ではないし、警察ではなさそうだ。しかも追っている犯人は身体を入れ替えているという。まるで幽霊ではないか。まさか、2人は悪霊退治をしているのか。俄には信じられない。この科学技術の発展した世の中、悪霊退治など子供の遊びだと言われてしまうだろう。
「厄介者だが、所詮雑魚だ。雑魚程度なら簡単に探知できる」
男性は地図をテーブルに広げ、更に水晶のペンデュラムを取り出した。地図は東京の、しかもこの近辺のものだった。
「奴は必ずいる」
ペンデュラムを地図の上にぶら下げる。これがダウジングというものか。超能力捜査官が使っているのをテレビでも稀に放送している。ダウジングで、被害者の魂や念を探すのだ。こうなると余計に幽霊の存在が濃くなってゆく。
ある地点にペンデュラムがくると、水晶が円を描いて回りだした。
「ここにな」
水晶はまだ、地図のある地点を示していた。
その場所は、悠真達がいるファミレスだった。
2人は冷静を装っている。が、内心かなり驚いているにちがいない。探している犯人が、今、この場にいるのだ。
ダウジングを行った男性も驚いている。この様子だと、適当に近辺を選んだのかもしれない。それもまた強運である。
「まさか、ここだったとはな」
「落ち着きましょう。奴は小宮巧の身体に乗り移っている。なら、この中から彼を探せば良いじゃないですか」
「ああ、そうだな」
「小宮の顔は新聞で見てますから、簡単に見つかりますよ」
客は数人しかいない。これだったら時間もあまりかからない。
悠真は辺りを見回した。警察に追われているのだから、顔を見せないようにしているはずだ。
ところが、思わぬ障壁が彼を待っていた。
ここにはそもそも、2人以外の男性が1人もいないのだ。従業員にも男性はいるが、年齢が巧と離れている。
窓際に主婦3人のグループと初老の女性、悠真達の近くに大学生の3人グループ、4人グループがいる。大学生4人のグループがやけに騒がしく、初老の女性が顰めっ面をしていた。
ダウジングによれば、朱美は必ずここにいる。いや、ダウジングが間違いだったという線もある。
「安藤さん」
男性の名は安藤というらしい。
「それ、間違ってるんじゃないですか?」
「え?」
「大体適当な生活を送っているのだから、その適当さがダウジングにも出ちまったんじゃないんすか?」
「いや、馬鹿な」
安藤は焦った。この地点を選んだのは確かに適当だった。本当に、あれはミスだったのではないか。
悠真はソファにもたれかかった。すると、大学生の会話が聞こえてきた。
「ねぇ、知ってる? 小宮君って、何股もかけてたらしいよ」
「ええっ! 本当?」
「殺された、篠原朱美っているじゃん? ほら、同じサークルの。あの子も小宮君の女だったらしいよ」
悠真と安藤は、彼女等4人の会話を聞き逃さなかった。
探索は正しかったのかもしれない。小宮巧と同い年位の女子大生が、その巧の、まだ公には知られていないことを話している。概ね察しはついていたが、朱美が巧を殺した理由も判り、しかも、彼女が次に狙っている者も予測出来た。
おそらく彼女の次の標的は、巧の浮気相手。あの4人の中に浮気相手がいて、朱美はその女子になりすましているのだろう。
女性は浮気されると、彼氏よりも浮気相手を恨む傾向がある。理由はどうあれ朱美もそうだったのだろう。
最初の巧殺害は、何らかの事情で衝動的に行ったもの。肉体の入れ替えをしていたことから、巧に殺された後だったのかもしれない。
そして、浮気相手への復讐は計画的に行っている。男性の身体だし、何より犯罪者としては動きづらいから、再び身体の入れ替えをしたのだろう。そして、入れ替えをした朱美が、この4人の中にいる。
悠真は再び耳を傾けた。安藤も気づいたのか、4人を見ている。
「じゃあ朱美って子、浮気がバレたから殺したのかなぁ」
「嫌だぁ、怖ーい! 小宮君って優しい人だと思ってたのにぃ」
話をふった茶髪の女子と金髪の女子が騒いでいる。
だが、もう2人の様子が少々おかしかった。1人は小刻みに震えており、もう1人は彼女を宥めている。しかし、その宥めている手も震えていて、目も泳いでいる。
「あれ? 沙樹?」
「麗奈、沙樹どうしたの?」
「と、突然震えだして」
「嘘、巧が、巧が浮気なんて」
沙樹という女子が声を発した。怒りや悲しみで、その声は戦慄いていた。
「嘘よ、作り話よ!」
テーブルをバンと叩き、沙樹が立ち上がった。彼女は巧みに、特別な思いがあったらしい。
「な、何よ。事実なんだから仕方ないでしょ?」
「小百合!」
「だったら証拠出しなさいよ!」
「止めて!」
沙樹を宥めていた女子が怒鳴った。
「何やってんの? 巧は死んだんだよ? 死んだ奴の事で喧嘩するなんてどうかしてるよ!」
2人は俯いた。そして、彼女の説教で興奮が冷めたのか、黙って席に着いた。
喧嘩の様子を安藤がまじまじと見つめていた。
「いやぁ、何、最近の若者は所構わず大声を出すの?」
「こいつらだけでしょ」
不意に悠真が立ち上がった。立ち上がると同時に鞄から棒を取り出した。刀や剣をしまう鞘に似ている。白地に青い線が描かれており、刀の柄も同じ色をしている。それを持ち、4人の席に来た。これから何をするつもりなのか。安藤は一瞬焦ったが、悠真の意図を察したらしく、ニヤリと笑みを浮かべた。
「何、あんた」
「さっきからうるせぇんだよ。黙ってろ。それと」
そこまで言うと、悠真は鞘の先を、最後に怒鳴った女子の首に突き立てた。喉を突かれ、目を細めて苦しそうな顔をする。
「ああいう芝居をやるなら、ボロは出さないようにしないとな」
「ボ、ボロ?」
「あんた何やってんの?」
「最初にこの話題を始めたアンタ……ああ、小百合さんと隣の子は、男性のことを小宮君と言った」
「だから何よ!」
小百合が悠真を威嚇する。だが、悠真が彼女に目を向けると黙り込んだ。蛇ににらまれた蛙のように。
悠真は続ける。
「多分、男とはそこまで親密じゃなかったんだろう。そして、多分付き合ってたんだろうな。そこの彼女……沙樹さんは巧と言った。まあ親密な関係なら仕方ない。ところが、だ」
自分の推理を堂々と、いや、むしろ
自慢気に話す悠真。それはまるで、探偵ものの番組を見ているかのようだった。
「君が怒鳴ったとき、男のことを何て言った?」
「巧」
言ったのは沙樹だった。
「わかったか? これが今言ったボロだよ」
女子は震えている。初めて会った青年に、ここまで見抜かれてしまっては無理もない。
しかし悠真もかなり緊張していた。この程度の証拠では逃げられてしまいかねないからだ。
女子は顔を上げ、悠真を睨んだ。
「ふふふ、だから何だって言うの?」
「君が……」
鞘を更に強く喉に突き立てる。
「篠原朱美って事だよ」
「え? 篠原朱美って、殺された?」
小百合達が不思議がった。目の前にいる友人が、殺された朱美だというのだから当然だ。
すると、女子は素早く後ろを向いた。それとほぼ同時に沙樹の首が切断され、テーブルの上に転がり落ちた。辺りには血飛沫が飛び散り、テーブルや椅子、小百合達を真っ赤に染めた。
「い、嫌ああっ!」
女子はソファの上に立った。
彼女の片腕が、肘の辺りから甲殻類のハサミのようになっている。
彼女は人間じゃない。恐ろしい姿を目の当たりにし、小百合達だけでなく、他の客も悲鳴をあげた。
女子が両手を広げる。すると、脱皮のように真ん中から身体が裂け、中から別の女子が姿を現した。そう、篠原朱美である。これが、器を入れ替えるということか。
「篠原朱美」
「青年! ここじゃ狭い、外に出せ!」
「当然!」
悠真は朱美の前に跳び、鞘で彼女の腹を強く突いた。するとその衝撃で朱美は宙を舞った。そして店の硝子を破り、外まで飛ばされた。人間がこれほどの力を出せるだろうか。
朱美はヨロヨロと立ち上がり逃げ出した。悠真は硝子にあいた穴から飛び出し、彼女を追った。
安藤は持ってきたから札束を3つほど取り出し、カウンターに置いた。
「釣りはいらねぇ。これは弁償代な。足りなかったらここに電話して」
そう言って名刺を渡すと、安藤も店を出て彼等を追った。
ゴツゴツした腕を元に戻し、朱美は逃げる。その後をステッキを持った悠真が、更にその後を安藤が追う。
朱美はチラッと後ろを見ると、途中で道を逸れ、暗い路地に入った。悠真もそちらに向かう。
全力で走ったために息が切れてしまった。こうなると呼吸のリズムを整えるのに時間がかかる。丁度そこへ安藤が合流した。彼は悠真には目もくれず、路地の先を見ている。
「青年、レディを待たせちゃいけないよ」
「はあ、はあ……え?」
ゆっくりと路地の先を見た。
片腕を再びハサミに変え、朱美が構えていた。
「ああ、レディね」
悠真は鞘から刀を引き出した。それを構えると、朱美をきっと睨みつけた。
「ふふふ……ハアッ」
2人は同時に走り出した。中央で刀とハサミがけたたましい音を立ててぶつかり合う。すぐに離れ、再び突進する。1手2手先を読まなければ殺される。先に隙を見つければ、一気に勝負は決まる。
勝負には慣れていないのだろう、朱美はがむしゃらにハサミを振り回す。一方悠真は落ち着いた様子で攻撃を回避する。只かわしている訳ではない。暫くすると、朱美の動きが遅くなってきた。彼女のスタミナを奪うことが狙いだったのだ。
重くなった右腕が上がらなくなったのを見つけ、すかさず悠真は右腕に刀を振り下ろした。
「キャアアアッ!」
「アンタには重すぎたんじゃねぇか?」
朱美はその場に倒れ込んだ。斬られた箇所から青い炎が吹き出している。彼女は、中身まで人ではなくなってしまったのか。
だとすれば今の彼女をどう言い表せばよいだろう。
「魂には計り知れない力がある。それを君みたいに、馬鹿げたことに使う奴がよくいるんだよ」
「俺達は、そういう連中に正しい道を教える仕事をしている」
亡霊。
それが、今の彼女を説明するのに相応しい。
では、悠真達の言う『正しい道』とは、極楽、あるいは地獄への道を意味しているのだろうか。
「馬鹿げてない」
「うん?」
「彼奴が浮気するからいけないのに、それなのに、彼奴は私を殺して、しかもバラバラにしようとしたのよ」
朱美の足元から青い炎が燃え上がった。
「許さない! 巧も、浮気相手もみんな許さない! 殺してやる! あんた達もバラバラにして、殺してやるぅっ!」
炎が全身を包み込む。その状態で、朱美はゆっくりと立ち上がった。
「来るぞ」
「はい」
2人は身構えた。
炎がパッと消えた。同時に、おぞましい姿に変貌した朱美が現れた。
硬く歪な形の鎧に身を包んだ怪物。突き出た2本の目を見てヤドカリを思い出した。姿を変えて殺人を繰り返していた朱美を表すのにピッタリな生き物だ。
怪物と化した朱美が、大きくなった腕を振り回して迫ってくる。
刀で受け止めたが、パワーも高いらしく、悠真が飛ばされてしまった。
朱美は安藤を見た。そして、唸り声をあげて襲いかかってきた。
身構える安藤。だが間一髪、間に悠真が入って攻撃を防いだ。いつの間にか武器の形状が変化している。細い刀から、大きな紫色の斧に変わっていたのだ。
「やっぱり、これじゃないと勝てないか」
そう言った後、突然悠真の身体が青白い炎に包まれた。先程の朱美と同じだ。
そして炎が消えると、彼の姿も変貌していた。白い光を放つ戦士の姿に。頭部は所々尖った場所があり、若干爬虫類のようにも見える。
戦士は目にも留まらぬ速さで朱美に近づき、右肩を斧で斬りつけた。大きくなった刃なら怪物の硬い鎧も砕くことが出来る。怪物は左手で砕けた部分を抑えながら苦しそうな声を上げている。
間髪入れずに、悠真は何度も斧で攻撃する。傷口からは炎が吹き出している。
「騙されたあんたの気持ちはわかる。でも、俺達は暴走してしまった霊を送らなければならない」
戦士は斧を構えて再び怪物に向かう。朱美は逃げようとするが、重くなった体が仇となった。あっという間に彼女に近づき、獣と化した彼女の首を切り落とした。悲鳴を上げる間もなく彼女はトドメを刺された。分断された肉体は霧になって消えてしまった。
これが、正しい道を教えるということなのか。それにしては少々残酷だ。あまり戴けないやり方である。
悠真の身体は元に戻っていた。鎌もステッキになっている。
安藤はニコッと笑い、悠真に歩み寄った。
「流石、俺が見込んだ墓守だな」
墓守。なるほど、それが仕事か。
ただし、ここで言う墓守というのは、王家の墓を守るような仕事ではなく、朱美のように暴走した霊を止め、霊界へと導くことのようだ。
「今度はちゃんと戦ってくださいよ」
「わかったわかった。チャンスがあれば何時でもそうしますよ」
2人はもと来た道を引き返した。
彼等の仕事について、ある程度わかっただろうか。今の戦いだけではわからないという者もいるだろう。
暴走し、肉体を変えてまで欲を満たそうとする霊に、彼等を行くべき場所へ強制的に引っ張ってゆく者達。
墓守という仕事を理解するには、先のような非現実の事態を受け入れる必要があるようだ。
「いつまで続くんだろうな」
「さあ、死ぬまでかな?」
「気の長くなる話ですね」
暗い空を見上げながら、悠真は呟いた。
町の光に遮られ、星は輝きを失っていた。
今回登場した怪人(暴霊)、並びに墓守の紹介です。
・0(ゼロ)・・・若き墓守、西樹悠真が墓守の力を解放した姿。白い戦士の姿をしている。普段は刀を使用しているが、状況に応じて武器を変化させることが出来る。
・アマンザ・・・恋人に2股をかけられた上に殺害された女性、篠原朱美が暴霊となって蘇ったもの。他人に成り済ますことで墓守の捜査網をかいくぐってきた。硬い体は防御力に優れ、武器のハサミは硬い人間の骨すらも一瞬で砕く。
アマンザは、沖縄の神話でヤドカリを意味する言葉として登場するらしい。