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大乘蓮華寶達問答報應沙門經第三十 ~終章

  この章は、もしかすると最初の部分が欠落しているんじゃないでしょうか? いきなりこんな感じで始まってました。


 馬頭羅刹が宝達菩薩に語ったことには。

「この地獄は無限に広がっている。もし僧侶が、汚れた履物のまま、清潔で香も焚かれている方等大乗の部屋に踏み込めば、この鉄■地獄に堕ちる。また、もし悪意を抱いて自分の師の悪口を言ったりすれば、悪言堕銅狗地獄に行く。また、もし慈悲なく生き物を煮たりすれば、鉄山地獄に入る。」

 馬頭羅刹は続けた。

「これはみんな、罪の報いなんだよ」

 宝達は……


 彼はうわんうわん泣きながら、摩竭道場、つまりブッダのマガタ国の教室へと戻ってきた。

 そして、泣いたままブッダの周りを7回まわって……


 えっと、昔のインドでは自分の右肩を見せるのが尊敬のジェスチャーとされてまして、敬意を表す挨拶として右肩を見せながら相手の周りを歩いてまわったわけです。


 とにかく廻ってから、うわんうわんと泣きながら報告した。

「鉄輪山の無量地獄で罰を受けている罪人たちを見てきましたっス。……でも、あれは悲しすぎまス! 自分、彼らを助けてあげたいっス。なんとか、なんとか彼らを助ける手はないものっスかッ! 自分は、あんなもの見ても彼らのために何もできなくて……無力で……役立たずで……自分は、自分は、うわ~~~~んッ!!」

 宝達が大声をあげ全力で泣き続けるので、他の弟子たちはあっけにとられている。

「地獄って、そんなに酷いところなのか……」

 宝達の様子からいろいろと恐い想像をしてしまい、彼らもちょっと震えた。

 そのとき、ブッダはやさしい声で、

「宝達。君は神通力で地獄の中に入ってきたわけだが。ずいぶんいろんな教訓を学んだろう? ……実はね。自ら苦しむ姿を見せて君の修行の手助けとなり、またそれがお経に書かれて伝えられ後世の人々の教訓となる因縁で、あの罪人たちに救いがおとずれるんだよ」

「ええッ!!!?」

 宝達は驚きのあまり、泣き止んでしまった。ショックを与えると泣き止むのは若い女性によくあること……って聞いたけれどホントかな? 女性だけでなく彼も泣き止んだわけ。

「さて、そろそろ始まるころだ。これを観てみなさい」

 ブッダは神通力で、鉄輪山の現在の様子を彼らの目に写らせて見せた。


 宝達の目に、地獄の阿須輪王が、マイクを手に鉄輪山の頂上のお立ち台にあがる姿が写った。

「あ~、テス、テス。本日は晴天なり、盆マメ盆ゴメ盆ゴボウ、京の生ダラ奈良生マナガツヲ。聞こえてますかー、オッケー? それじゃ……え~、話があるで、地獄のおまんら、ちょっと聞けし!」(なぜ甲州弁?(汗))

 お立ち台に立つ阿須輪王の姿は三十二ヶ所すべての地獄から見あげることができた。

「おまんらは知らんだろうけどなー、今、人間界にはたいへん尊い方が出現してるづら。どんなダメな奴にでも、そいつの境遇を悲しんで心に光を当ててくださる方じゃんけー。いわゆる目覚めた人(ブッダ)づら」

 各所で苦しんでいた罪人たちの中から驚きの声が上がる中、阿須輪王は演説を続ける。

「ちょっと前に宝達って人が視察に来たじゃんけ? おまんらの中には『このバカッちょ、他人ひと事みたいに見ちょし!』なんてボヤいた罰あたりもいたづらが。でもあのお方こそ、実は救いの菩薩づら」

 どよめく罪人たちを見回し、阿須輪王は咳払いしてボリュームを上げた。

「菩薩ちゅうことはつまり修行中なんだけんど、宝達菩薩さまの勉強のお役に立ったっちゅう……つまりはおまんらが、自分でも知らんうちにした善行! この因縁が功徳となってだな……。あ~、おまんら、じゃなくて諸君。私は~、諸君を~……たったいま、この苦役から解放できることを、うれしく思うところで~、あるのであります。以上ッ!」

 阿須輪王は笑顔を見せてからお立ち台を降りたが、罪人たちは全員、ものごっつ驚いて絶句してしまった。

 だがやがて、宝達菩薩の名が口々に叫ばれはじめ、ついには無数の感謝と歓喜の声が、地獄じゅうに鳴り響いたのだった。

「南無、宝達菩薩!」

 と。


 映像でそれを見た宝達の目からは、こんどは悲しみではない涙が流れた。

「よかったっス、よかった……ほんとによかったッス~ぅっ……うわーん!!」

 男泣きする宝達菩薩に、ブッダは黙ったまま微笑んでうなずいただけで、何事もなかったかのようにまた瞑想の続きを始めた。

 地獄・畜生・餓鬼・修羅・人間・天人の六つの世界、仏教用語でいう「欲界よくかい」で生まれ変わり死に変わり、六道輪廻の苦しみを続けている衆生しゅうじょうはまだまだたくさんいるのだ。そう、ブッダにはこの程度の成果で喜んでる暇などないのだった。

 キビシ~ィッ!


 しかしこの時をもって鉄輪山の地獄は消滅した。多くの罪人たちはブッダのもとへと送ってこられて、教えを聞くことができた。その中から20000人もの比丘が、後には阿羅漢(アラハン)、つまり「ブッダと同じ悟りを開いた聖者」となることができたという。

 またこの機会に5000人がシュダオンという「初級の聖者」となることができ、6000人が正しい法を判断する眼を得て、800人の女性も三禅心という境地を得た。


 天竜や邪悪な鬼神にでさえ、これを喜ばないものはいなかったそうな!



 - 大乘蓮華寶達問答報應沙門經を終わる -

 


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