大乘蓮華寶達問答報應沙門經第二十九 ~飛火叫喚分頭地獄
宝達は飛火叫喚分頭地獄へやってきた。広さは約420km。鉄の城壁に囲まれて鉄の網に覆われている……ってのはもうこれまでどおり。溶けた鉄の粒がアブかハチのように飛び回っていて、猛風が火焔を吹き上げ罪人たちを焼く。
ちょうど東の門に36000人の罪人がいまして、口をそろえて
「ミーたち、何の罪でこんなとこにいるネ? もう、イヤぁっ!」
馬頭羅刹たちが鉄棒で彼らの背中を叩き、「早く入れ」と地獄に蹴り込んでいる。
罪人たちは、歩いちゃ倒れ、歩いちゃ倒れ。鉄の粒が飛び回って、下半身から焼いていく。と、突然、目や口から火が噴き出した。罪人たちは驚き、泣き喚いてあっちへこっちへと走り回る。ところが、あっちに走れば燃える火の中へとまっさかさまに飛び込み、こっちへ走れば猛烈な火が吹き付けて焼かれてしまう。
馬頭羅刹は手で罪人たちの頭髪を掴み、ひっぱって無理やりに毛皮を剥き、さらに骨を砕いてしまう。
すると餓鬼がやってきてその肉に暗いつき、また血を飲む。
こうして、1日1夜でもものすごい苦痛を受け、生きたくても殺され死にたくてもいつまでもネチネチ苦しめられる。
千万劫が過ぎてもこの報いは終わらず、その後も畜生(動物)となって生まれることになるのだ。
宝達が馬頭羅刹に尋ねた。
「この人たち、どんな罪があってここに来ちゃったんスか?」
馬頭羅刹が答えた。
「この罪人たちは、出家して戒律を受けたのに守らなかったんだ。ケモノや鳥の、毛と羽を抜いたり皮を剥いだりして、恨みを買った。捕まったケモノたちは耐えられないほどの痛みに苦しんだ。しかしこいつらは、自分の楽しみのためにそんなことをして、反省もしなければ慈悲心も持たなかった。その罪でこの地獄に堕ちたのさ」
宝達はこれを聞き、悲しみに泣きながら立ち去った。
-つづく-
*次回最終話




