大乘蓮華寶達問答報應沙門經第二 ~鉄車鉄牛鉄驢鉄馬地獄
寶達即便入地獄中上高樓頭四顧望視……
第二章からは原文でなぜか省略されていてサブタイトルがわからないので、許してください。
さて鬼王たちから一通りの説明を受けた宝達だけど、「百聞は一見に如かず」と言うし、やはり直接に自分で確かめなきゃと、地獄に足を踏み入れた。
高いところからぐるっと眺めてみると、そこには四つの門があり、罪人たちが叫び声をあげながら入ってきて、宝達の前を通り過ぎて行った。
ここが鉄車鉄牛鉄驢鉄馬地獄。さしわたし約45kmの広さで、高さ7000mほどの鉄の城壁に囲まれている。いたるところに火が赤々と燃え、赤熱した鉄の車輪をもつ車両が走る。体が鉄でできた牛、馬、驢などもいて、その角や尾は槍のように鋭く尖っている。それだけでなく、全部の毛穴から、刃物のような硬い毛と、鋭い炎が噴き出しているではないか。
宝達が驚きながら見ていると、突然、溶けた鉄が炎を吹き上げた。
ちょうど北門に500人ほどの沙門がいた。彼らは鉄製のロープで縛られていたが、あまりに熱いことで口や目から火が噴出し、一斉に悲鳴を挙げた。
「ウチら、なんでこんな目に遭うねん! こら、ごっついですわ~」
そんな泣き声にも容赦せず、獄卒の夜叉、馬頭羅刹たちが、三叉のさすまたで彼らの背を突く。それが胸へ突き抜けた。
腕を縛っている鉄のロープも熱で溶け出し、皮膚を焼き始めた。泣いても叫んでも逃げることはできず、人肉の焼ける臭いが満ちていく。ついに猛火は、彼らの頭部まで焼き始めた。
苦痛に耐え切れず罪人が地に倒れると、馬頭羅刹が鉄棒で叩く。頭骸骨が砕け、体がミンチとなっていく。
そこへ、餓鬼……生意気で食ってばかりいる子供のことではなく、その語源となった、常に飢えて痩せ衰え栄養失調状態の死霊たちのことだ。イメージとしてはむしろグールやゾンビに近い。その集団が吠えながら乱入してきて、血走った目で死体の残骸にかぶりつき、血を飲んで肉を食った。
餓鬼だから、いくら食っても飲んでも満腹にはならない。死体をあらかた食い尽くしてしまうと、気も狂わんばかりの空腹のまま彼らは、嫌な吼え声を響かせつつ次の食い物を求めてわらわらと移動していった。
沙門たちが死んで食われてしまったのを見て、宝達菩薩が「これで彼らの苦痛は終わったのかな?」と安心したのもつかの間。馬頭羅刹が地面を蹴って咆哮すると、いま死んだ500人がたちまち生き返って立ち上がったではないか。
そこへ鉄牛がいななきながら突進してきた。罪人たちは逃げ惑うが、馬頭羅刹たちが取り囲みさすまたでから突っつきまわすから逃げることができない。角で突かれ足で踏まれ、また悲鳴が響き渡る。鉄車も走り回り、火を噴きながら人を跳ねまくる。跳ねられてぶっ倒れた人を鉄牛が角で跳ね飛ばし、鉄馬の背に乗せる。すると鉄馬の、刃物のような体毛が全身に刺さり、罪人にうめき声や泣き声を挙げさせる。そして鉄馬の尾が彼らの体をはたくと、たちまち砕けてまたバラバラ死体となってしまった。
しかしバラバラ死体はすぐに生き返って、今度は鉄馬に蹴っ飛ばされ、踏んづけられてまたただの肉塊となる。
が、またまた復活して今度は鉄驢に載せられる。鉄驢は怒って跳ね回り、また罪人は踏んづけられてたちまち死んでしまうが、すぐに生き返る。
こんな状態が、夜となく昼となく、いつまでも続いていた。
宝達は馬頭羅刹の一人に尋ねた。
「この沙門たちは、なんでこんな目に遭ってるんスか?」
馬頭羅刹が言うには、
「この坊づどもは前世で、出家し戒律を受けておきながら酷いことをしたんだ。動物を鞭打って使役し、不潔な状態にして飼ったり、牛車や馬、驢馬に乗ったりした。動物に対する慈しみがなかったんだな。それで、百千万劫の間、こういう罰を受けることになったのさ」
1劫とは「タテヨコ7kmの石を100年に一回、羽根のような軽い布で撫でて、完全に磨耗するまでの年数」のことだそうです。それの百千万倍というのだから、もう……。
「百千万劫の間は人間に生まれ変わることもできず、もちろん救いの教えに出会うこともない」
それを聞いて、宝達は悲しさのあまり、涙が出てしまった。
「ひどい……ひどいっス。なまじ出家したためにかえって、一般人がよくやってるような罪でこれほどまでの罰を受けるなんて」
宝達はぐすぐす泣きながら、足早にそこを去っていった。
-つづく-