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「きっと、それは」のほかのおはなし  作者: 篠宮 楓
近づきたいと思うのは、付き合えば本能じゃねぇの?
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呆然、そして驚愕、今は……不安、か?


じっと見つめる先の由比は、体を固くして桐原の喉元あたりで視線を固定していた。

どうしていいのか分からないのだろう事くらい桐原にも察することはできたが、それでも止めてやろうという気にはならなかった。


いつまでも待っていたら、俺は圭介と同じ轍を踏む。

保護者という位置に落ち着いてしまったら、恋愛関係に持っていくのは難しい。


……絶対に、嫌だね。

そんなの、許さねぇ。どれだけこっちが我慢してきたと思ってんだ、この小動物。


桐原は由比に覆いかぶさるように壁と棚に腕をつけると、無理やり押し込んだそのスペースで身を縮こませている由比を見下ろした。


「上条、こっち向け」


ぴくり、と肩を揺らすその仕草さえ、今は桐原を煽るだけ。

いつもなら守ってやろうという庇護欲がわくけれど、今は自らそれを壊したいという感情が心を占めていた。


一応は待ってみたけれど一向に上を向かない由比に、桐原は口端を上げた。

「もともと、俺の性格は待つってーか……」

由比の頭の上に置いていた手をするりと滑らして、後頭部を押さえた。

それに驚いて顔を上げた由比の唇に、自分のそれを重ねる。

「どっちかってーと、強引に押していく方なんだよ」

ただ重ねるだけの行為だというのに、それまで触れられなかったからこそ感情が昂ぶる。

逃げようと俺の胸を押し返してくるか細い力に、後頭部と腰に回した手に力を込めた。

「無駄だって、な?」

唇を離してそう言い聞かせるように囁くと、真っ赤になりながらも何か反論しようとするその唇を再び塞ぐ。

幾度か重ねた後、下唇を自分の口で挟み込んでやわやわと引っ張った。

それに抵抗するように、唇を真一文字に引き締める上条の必死さが可愛すぎるとか思う俺って相当やられてるな。


桐原は熱くなりながらも、すこしだけまだ残っている理性視点で由比の様子を窺う。


このまま押せる……か?

そう思いながら、すぐ傍の由比の顔を見ていた時。

「……っ」

うっすらと目を開けた由比と、至近距離で視線が合わさる。

驚いて見開いた瞳に揺れる色を見出して、桐原は目を閉じた。


「そろそろ、観念、しな」

そう囁けば、面白いようにびくりと震える身体。

閉じられた唇の合わせを、ゆっくりと舌でなぞる。

そして身体に回した腕に力を込めながら、後頭部を押さえている手の指を伸ばして耳元を小さく擽った。

その感覚に驚いたのか微かに開いた唇の間に、一気に舌をねじ込んだ。


「ふぅっ、んっ……っ」

驚いたように声を上げる由比の声に、年甲斐もなく煽られながら桐原はその深度を増していく。

縮こまる様に逃げる由比の舌に、己のそれを絡めて吸い上げた。

苦しそうに、縋る様にぎゅっと桐原の上着を掴む由比の姿が可愛くて愛しくて。

早く、自分だけのものにしたくて。

年下の慣れていない由比相手だと分かっているのに、どうしても自分を抑えられない。

まだパニック中なのか、それとももう何も考えられないのか。

後者であればいいと思いつつ、力の抜けてきた由比の身体が腰を支える桐原の腕に寄り掛かってきた。

「……っと」

名残惜しいとは思いつつも、さすがに最初からがっつきすぎたかとその唇を解放した。


最後、わざとらしくリップ音を響かせて。

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