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「きっと、それは」のほかのおはなし  作者: 篠宮 楓
近づきたいと思うのは、付き合えば本能じゃねぇの?
16/18

「保護……者?」

呆然とおうむ返しにその言葉を呟けば、由比は大きく頷いた。

「前みたいに怖くないし、安心できます。桐原主任といると」


……何もされないから?


そんな言葉が脳裏を掠めて、頭に血が上った。

が、感情はすぅっと落ち着いていく。


そんな桐原に気が付かない由比は、自分の今立っている場所に気が付いてひょいっと体を後ろに引いた。

「すみません、私がいるから腕を下ろせなかったんですね。なんでずっと両手を上げをあげてるのかと思ったら……」

「……いいや?」

そう呟いて、由比の腕を掴んで引き寄せる。

何が起きたのか分からないのか、由比はなすがままで。

けれど自分の状況に気が付いたら逃げ出すだろうと踏んだ桐原は、スチール棚と壁の狭い隙間に由比を押し込んだ。


狭い空間。

逃げ場は、桐原が体で塞ぐ。



「……捕食者で、いいや」


そう呟く桐原の目は、少し前、由比を好きだと告白したあの頃の光を帯びていた。


「……桐原、主任?」


いきなり雰囲気の変わった桐原に、戸惑うような視線を向ける由比。

その表情にも仕草にも、桐原の加虐心が刺激される。

桐原は殊更ゆっくりと上体を屈めると、由比と目線を合わせた。

困惑したような、逃げ道を探しているようなその彷徨う視線に、理性の一端が綻びはじめる。

「俺は、お前の恋人になりたいのであって保護者になるつもりはないよ」

そう言いきれば、しまったとでも言うように由比の表情がばつの悪いものへと変わっていく。

それを目に映しながらも、桐原の意識は由比の唇に向かっていた。


ずっと我慢していた。

付き合う前から、そして付き合い始めた後も。

男慣れしてない、しかも周囲と一線を引いた形で生きてきた由比だから、そういう感情が……肉体的な恋人としての欲望を少しでも彼女が感じるまで待とうと思っていた。

それが裏目に出ていたと知った今、何を我慢することがある?

待ってもだめなら、俺は俺の思う通りに動けばいいだけだ。



指先で、由比の唇に触れる。

びくりと肩が震えたけれど、桐原は構わず指先をその唇に這わせていく。


「何、安心するとか。俺はお前が慣れてないの知ってるし、こっちの方が年上だから待ってやろうとしただけなんだけど」

不機嫌なまま声を出せば、狼狽えるように由比が唇を震わせる。

何か言いたいんだろうけれど、桐原の指がそこにあるからかただ動かずに固まったまま。

「枯れたおっさんみたいにいわないでくんねぇか? こっちの我慢、なんだと思ってる」

「……あ、ごめ……」

上擦ったその声にさえ、こっちは煽られているというのに。

煽ってる原因のこいつは、そんな感情がないっつー最悪な状況。


桐原は殊更口端を引き上げて、目を細めた。



びくりと、由比の肩が震える。

それに何かしらの愉悦を感じながら、唇から離した指先ですぅっと首筋を撫でた。

「んっ」

鼻にかかる、抑えた声。

まだ頭の奥では、由比を怯えさせていることへの罪悪感もちらついてはいるけれど……。


にやり。

その言葉が一番似合いそうな笑みで、桐原は由比を見下ろした。



「許さねぇよ。……黙って俺に、捕食されろ」


あぁぁ、桐原、番外編でも押し強い><

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