詩『栗きんとん』
正月 三箇日 火伏せの神 お爺ちゃん家へ初詣
雪道 滑って転ぶ私を笑う君
がたがた道の石段を 並んで登る私と君
君と 君の祖父
家族の対面に私は一歩引いて
自然に笑って 見ていられた
帰り道 ホワイトで塗りつぶされた地平
二人歩き 君は歩を踏んで
口ずさんだ歌に合わせて 雪上で踊る
危ないぞ と言う私は 凍った水溜りを踏み抜いて
家に着いた君は 栗きんとん! 嬉しそうに叫ぶ
薄暗い早朝 近所迷惑 わきまえろと私
栗きんとんは分かった だが待てと
おせちまで待てない そう言って私の袖を引く君
じっと見つめる視線に 両手を上げて全面降伏
二つの小皿に少し 栗きんとんを拝借
割り箸 同時に割って
おいしい!
いただきますを言う前に 君は栗きんとんを頬張る
呆れつつ 淡く色づいた栗を箸でつまむ
おいしい
舌に卑しく残らない甘味に 思わず君と 同じ言葉を言ってしまう
隣で幸せそうに 君は栗きんとんを味わって
頬に付いているのも気づかないで 夢中になって箸を動かす
その頬についた栗きんとんを そっと取って口に運ぶ
味覚を揺する その味を舌先で転がしながら
今年もよろしく 君に聞こえないように呟いた