境界線の楽屋裏
個室の扉が開く。
「お疲れ様です」
湊、時間ぴったり。
「真面目だなあ」
後ろから悠。
「主役気質」
「違います」
そこに遥花と朱里、七瀬と鷲尾。
少し遅れて佐藤。
最後に、静かに入ってくる男。
「全員揃いましたね」
マネージャーだ。
「なんで仕切るんですか」
「マネージャーだからです」
全員着席。
七瀬がグラスを持ち上げる。
「記念すべき第一回、“境界線の楽屋裏”〜!」
「誰が決めたんだよ」
「作者」
一瞬、全員で天井を見る。
沈黙。
悠がぽつり。
「で、何話す?」
佐藤が手を挙げる。
「俺、未練枠って何?」
「そのまま」
悠即答。
「即答やめて?」
柊が笑う。
「俺なんて人妻キラーだぞ」
「それは脚本の悪意」
湊が淡々と水を飲む。
七瀬が湊を見る。
「で?」
「何が」
「尻尾」
湊、止まる。
「出てません」
「作者が言ってましたよ。“最近ぶんぶんしてる”って」
「言われてみれば出てたかも」
遥花がぽそっと。
「出てません」
「読者側も“あー言われてみれば尻尾”ってなってるらしいですよ?」
鷲尾がスマホを見るふり。
「4年前より好き、でしたっけ?」
「台本です」
「素だろ」
「違います」
マネージャーが腕組み。
「まあでも、あのシーンはよかったですね」
全員少しだけ静まる。
朱里が小さく手を挙げる。
「……あの、私の方言の件なんですけど」
悠、視線逸らす。
「方言アドリブだったんです。
悠さん動揺しましたよね?」
「演出だ」
「素でしたよね?」
「……」
七瀬がにやにや。
「ガチな動揺ですか?理性どこ行ったんですか?」
「持ってます」
「嘘つけ」
柊が笑いを堪えながら言う。
「でもさ」
全員の視線が集まる。
「なんだかんだ、みんな相手のこと好きすぎじゃない?」
一瞬、静か。
湊はグラスをいじる。
悠は目を伏せる。
遥花は微笑む。
朱里は耳が赤い。
佐藤だけが遠い目。
「俺の楽屋裏いつ来るの?」
「来ない」
即答。
マネージャーがパン、と手を叩く。
「では、いい空気になったところで乾杯しましょうか」
「今から?」
「今からです」
グラスが触れ合う。
カチン。
騒がしくて、少し照れくさくて。
本編の外側。
でもちゃんと、“境界線の内側”。




