第33話:初めての依頼
リディアが去った後、ギルドの喧騒の中に一人残されたユウトは、改めて手の中にある銅製のプレートを見つめた。
「D+」と刻まれた文字が、自分が冒険者になったという事実を突きつけてくる。
(冒険者、か…)
胸に込み上げてくるのは、不安よりも期待だった。
エルディオに導かれるままこの街に来たが、ようやく自分の足で歩き出す第一歩を踏み出せた気がする。
『さて、この後はどうするかの? あの子は好きにしろと言っておったが…』
ポーチの中からエルディオがのんびりとした口調で問いかける。
「決まってるよ。早速、依頼を受けてみる!」
ユウトは意気揚々と、活気に満ちた依頼掲示板へと向かった。
掲示板には、羊皮紙に書かれた依頼書が所狭しと張り出されている。
「うわ、すごい数…」
ゴブリン討伐、鉱石の採掘、隊商の護衛から、迷子の子猫探しまで。
依頼の種類も難易度も様々だ。
「リディアさんは、自分にできそうなものから選べって言ってたな…」
ユウトは背伸びをしながら、Dランク向けの依頼が集められた一角をじっくりと眺める。
討伐系の依頼にも心惹かれたが、まずは着実にこなせそうなものを選ぶべきだろう。
(これなら、俺にもできるかもしれない)
ユウトの目に留まったのは、一枚の古びた依頼書だった。
【依頼】薬草「月光草」の採取
・ランク:D
・内容:街の西にある静寂の森で「月光草」を10本採取。
・報酬:銀貨5枚
・依頼主:ポーション屋のエリザ
『ほう、月光草か。懐かしいのう』
ポーチの中から、不意にエルディオが声をかける。
「エルディオ、知ってるの?」
『うむ。夜になると淡く光る美しい薬草じゃ。昼間でも葉の裏にある銀色の斑点を見れば、すぐに見分けがつく。確かに、駆け出し冒険者の初仕事にはちょうど良いじゃろう』
「そっか、それなら今から行っても大丈夫だね。よし、これにしよう!」
エルディオの助言に背中を押され、ユウトはその依頼書を剥がすと、受付カウンターにいるミリアの元へと持っていった。
「すみません、この依頼を受けたいんですけど」
「はい、確認しますね。…月光草の採取ですね。承知いたしました」
ミリアはにこやかに応対する。
「静寂の森は街から少し離れていますが、場所は分かりますか?」
「いえ、分からないです。地図とかってありますか?」
「もちろんです。こちらがギルドで販売している簡易的な地図になりますが、いかがなさいますか?」
そう言ってミリアが提示したのは、銅貨3枚の地図だった。
ユウトは頷き、なけなしの所持金から銅貨を支払って地図を受け取る。
「ありがとうございます。それと、採取した薬草を入れる袋とかって…」
「それでしたら、こちらのギルド支給の採集バッグをお貸ししますよ。無料なので、依頼が終わったら返してくださいね」
ミリアはカウンターの下から、丈夫そうな布製のバッグを取り出してくれた。
至れり尽くせりの対応に、ユウトは頭が下がる思いだった。
「ありがとうございます!助かります!」
「いえいえ。それでは、こちらの用紙にサインを。これで依頼の受注は完了です。お気をつけて、いってらっしゃいませ!」
ミリアの元気な声援に送られ、ユウトは初めての依頼に向けて、期待に胸を膨らませながらギルドを後にするのだった。




