第1話:誰かを助ける。ただそれだけ…
――「たすけてっ!!」
森の奥から響いたその叫びは、距離を越えてユウトの胸に突き刺さった。
鋭く、強く、助けを求める声だった。
ユウトの心臓が跳ねた。
それはあまりにリアルで、本物の命がかかっている声に感じた。
考えるより先に、足が動いていた。
茂みをかき分け、森を駆ける。枝が顔に当たり、草が跳ね上がる。
風が止んでいた。鳥の声も虫の音も消えて、森は異様な静けさに包まれていた。
やがて、開けた空間に出る。
そこで、ユウトはそれを見た。
「……な……」
声にならない。
少女が、木の根元で体を縮こまらせて震えている。
・・・その前に、巨大なナニカが立ちはだかっていた。
黒く光る甲殻。六本の節くれだった脚。異様に長い爪と、濁った赤い眼。
見たことのない、理解を拒む存在。
獣のようでもなく、虫でもない。体の形も動き方も、理屈が通らない。
――異形。
少女は、その異形を絶望的な目で見つめていた。
涙で顔はぐしゃぐしゃだが、その目は恐怖と諦めで固まり、逃げることも叫ぶこともできない。
ただ、震える唇で「たすけて……」と、かすかに繰り返している。
全身から冷たい汗が噴き出す。足が震える。
「……うそだろ……」
こんなの、勝てるわけがない。
けれど、少女が今にも襲われようとしている。誰も助けに来ない。
今、目の前にいるのは――自分しかいない。
ユウトは足を踏み出した。
逃げたい。けど、それよりも――助けたい、が勝った。
「やめろッ!」
叫びながら走り出す。
異形がこちらに気づいた。
赤い目がぎらりと光り、咆哮のようなうなり声を上げたかと思うと―― 触角のような巨大な前脚を、頭上に振り上げた。
「――来る!」
ユウトは足を踏み出す。逃げる選択肢はなかった。
異形の脚が、空を裂いて振り下ろされる。
その瞬間、ユウトの体が勝手に動いた。
――重心をずらし、内側へ踏み込み、腕を滑らせる。
合気道の要領で、攻撃の勢いを殺すように敵の力を受け流しながら、
右手を添え、敵の前脚の内側へと自分の体ごと滑り込ませるように動いた。
手応えと同時に、右手のひらが一気に熱を帯びた。
「……なに、これ――!」
手のひらの奥から、まるで内側から圧力が弾けるような感覚。
筋肉の力ではない、何か“別のもの”が、体の芯から流れ出していた。
バシィッ!
異形の前脚が関節から大きくねじれ、甲殻が砕けて吹き飛ぶ。
「……っ!」
ユウト自身が、何が起きたのかわからなかった。
けれど、異形は明らかに怯んでいた。
踏み込みながら、視線と意識を敵の重心に集中させる。
よろめいた敵のバランスが崩れた瞬間、ユウトはさらに接近した。
左腕で異形の体側に触れるように距離を取り、膝を割って軸を沈める――
体の中心をひねり、下から上へと掌底を巻き上げるように撃ち込む!
ドンッ!!
鈍い音とともに、異形の体が地面を滑るように吹き飛んだ。
静寂が、戻ってきた。
ユウトはその場に立ち尽くした。
呼吸が乱れ、心臓がうるさいほど鳴っている。
「……倒した、のか……?」
右手のひらが、じんわりと熱を帯びたままだった。。。
さすがにプロローグだけだとアレなんで、第1話も投稿♪
この後の更新ペースはさっぱり未知数(*'ω'*)
一応3日程度で1話投稿出来たらなぁくらいで考えてます♪(*´▽`*)
とにかくゴールまでたどり着きたい!
※アドバイス的な叱咤激励は歓迎です※
自分で気づかない違和感などもあるかと思いますので、お気づきな点があれば教えて下さいませ~(*´▽`*)