04-02.騎士団
最初に私を撃墜した大男が騎士団長だ。
少し離れたところで私の動きを牽制している。
また飛ぼうとすれば瞬時に叩き落されるだろう。
周囲を囲んだ他の騎士達が次々に襲ってくる。なんとか風の繭と刃で追い返しているが、このままではジリ貧だ。魔力切れで抵抗できなくなるのも時間の問題だろう。
騎士達は大きくは踏み込まず、ちまちまとした攻撃で私の魔力を削っていく作戦のようだ。
動きを制限され思うように戦えない。
(いやらしい手を使うわね!)
ゲームの時では考えられない戦法に段々と追い詰められていく。
勝てないかもしれないとは思ったが、ここまで手も足も出ないとは。私のレベルも十分に上がって、この調子なら魔王とも戦えるかもなんて思っていたが、まだまだ甘かったのかもしれない。知恵と組織を十全に扱う者たちがこれほど手強いなんて。
一か八か大きな魔法で吹き飛ばす?
通用しなければ、大きな隙を作ることになる。
人数も多く、全員に通用するようなものを放てばどの道魔力も尽きるだろう。
その程度で騎士団長まで倒せるわけもないし、やはり敗北は必至だ。
闇魔法を使うのは論外だ。ここで殺せば父を救出してもこの国を完全に敵に回す。それでは意味がない。
騎士団長と一対一にまで持ち込めば、闇魔法も使えるかもしれない。彼ならその程度、平気で耐えるだろう。
いずれにせよ、今はこの騎士たちをどうにかしなければ。
結局、有効な手立ても思いつかず、徐々に追い詰められていく。
(もうダメ!)
騎士の刃が間近に迫る。
その瞬間、壁が爆発した。
「わたしのリリィに手を出すなぁ!!」
「セーナ!? どうしてここに!?」
「王都にいればリリィの居場所はわかるわよ!!」
え? なにそれ怖い!?
常に私の位置探知してるの!? 王都中で!?
というか予定ではまだ数日かかるはずじゃなかったっけ?
「急いで王都に帰って直ぐにリリィに会いに行こうとしたのに、なんでか王宮にいるし、沢山の人間に囲まれてるし、これは何かあると思って慌てて飛んできたわ」
説明ありがとう。
レオン達は置いてきたらしい。
セーナに急かされて王都まで急いで帰ってきたのに、王都に着くなり置き去りとは。憐れ……。
まあ、彼らとて強くなってはいるだろうけど、騎士団にはまだ敵うまい。
王子がいれば戦闘自体が回避できる? それはそう。セーナさんや。なんで運んで来てくれなかったん? 触りたくない? そっすか。ならしゃあない。
セーナは呑気に会話しながらも、油断なく刀を構える。
騎士達は勇者と事を構えるつもりは無かったらしく、どうするべきか迷っているようだった。
「構わぬ捕らえろ!」
騎士団長が一喝する。
騎士達は瞬時に私達に向き直る。
よく訓練されていらっしゃいますこと。
さっきまでもうお終いって気分だったのに、セーナが来てくれただけで私も余裕を取り戻した。
「さあ、今度はこっちの番よ!」
セーナの放った火魔法を私が風で広げていく。
強烈な熱風に騎士達は思わず距離を取る。
あっやっば! 燃え移ってる!
とういかセーナ! 躊躇なく室内で火を放ったわね!
ノータイムで広げる私も私だけど!
熱風を目眩ましに、私とセーナは示し合わせたようにセーナの開けた大穴から飛び出し、中庭に出た。
直ぐに騎士達も追いかけてくるが、先ほどの様に囲まれていなければ十分に対処できる。
穴から出てくる騎士達を次々に倒していくと、残りの騎士たちを引き止めて騎士団長が現れた。
魔法を放つが、当然の様に剣で弾かれる。
私とセーナの猛攻も意に介さず、少しずつ近づいてくる騎士団長。
「セーナ! 時間稼ぎお願い!」
埒が明かないと判断し、セーナにこの場を任せて飛び上がった。
反射の無い真っ黒な球体を出現させ、騎士団長に向かって放った。
球体の引力に引かれて騎士団長とどんどん近づいていく。
剣を上段に構えた騎士団長は球体と接触する瞬間、剣を振り下ろした。
「あれを切った!?」
セーナが思わず驚愕の声を上げる。
騎士団長は私の闇魔法を真っ向から斬り伏せてみせた。当然無傷だ。デタラメだ。
まさかあれすら有効打にならないなんて……。
耐えるだろうとは思っていたが、まさか傷一つないとは思ってもみなかった。
「終いか?」
私の最大の技を真っ向から叩き伏せた上で、言外に降伏を促してくる騎士団長。
「まだまだ!」
刀を構えたセーナが騎士団長に向かって突っ込む。
「セーナ! だめ!」
剣の一振りでセーナは吹き飛ばされた。
「あれを防ぐか。腐っても勇者だな」
吹き飛ばされたセーナがよろよろと立ち上がる。
良かった無事なようだ。
あの子、意外と脳筋寄りなのよね……。
セーナの元に降り立ち、庇うようにして騎士団長に向かい合う。
「お主達では勝てぬ」
確かに。私の闇魔法も効かず、レベルがカンストしている上に剣技も優秀な勇者がまるで子供扱いだ。
剣の技量が異常だ。ゲームの基準で考えても逸脱している。
これもゲームが現実になった影響か。どうやら彼もレベルをカンストさせているらしい。
当然だよね。ゲーム中なら精々六十、七十レベル程度の相手だけど、こっちではそこから更に鍛える余地があったんだから。
それにゲームなら魔法を回避されることはあっても、斬り伏せられることなんて無かった。
ただ、本人の魔法への抵抗力は魔王程高いわけではない。当たりさえすればダメージを与えられるはずだ。
「セーナ! まだ行けるわね!!」
「当然!」
体勢を整え、しっかりとした足取りで立ち上がったセーナが隣で構えた。




