01-15.初戦闘
来た時と同じようにして、一泊しながら入口に向かった。
入口が近くなったところで異変に気づく。洞窟の入口方向から沢山の悲鳴と戦闘音のようなものが聞こえてきた。
探知範囲を広げて様子を確認していたセーナの顔に驚きが広がる。
「地竜と戦ってる!」
「!? 急ごう!」
懸念していたことが現実になってしまった!! しかもこんなに早いなんて!
直ぐにセーナを抱えて、全力の飛行魔法で洞窟を飛び出した。空から見るとそこは酷い有り様だった。
洞窟から少し出たところに地竜が居座っていた。その周りには沢山の亡骸が転がっている。
初めて見た遺体にえづきそうになるのを堪え、唇を噛みながら目を凝らして戦況を確認する。
なんとか進ませないようにと、立ち向かう兵士たちが次々に薙ぎ払われていく。
先ほどまで地竜に槍を突き立てようとしていた兵士が、一瞬のうちに肉片へと変わり果てた。それを見てまた吐きそうになる。
「リリィ! 落ち着いて!」
セーナの心配している声が聞こえ、なんとか持ち直した。
遂には逃げだす兵士たちも現れ、もはや一刻の猶予もない状況だ。
「戦うよセーナ!」
ゲームではトドメを刺した時にだけ経験値が入る仕様だった。この世界でも同じだろうか。彼らに最後の一撃だけ任せれば……いや。今はそんな事を気にしている場合ではない。
初戦闘だ! 人の命が掛かってるんだ!! やるぞ!!
空から風の刃を放つ。
地竜に命中するが、体表で弾かれダメージにはならなかった。
空から攻撃された事に気付き地竜が見上げてくる。
目があった瞬間体が竦んでしまう。
大丈夫、相手にはこちらに届く攻撃手段は無いはずと思いつつも、恐怖に心がパニックになっていく。
「リリィ!」
いきなりセーナに頬を挟まれ顔を向けられる。
「大丈夫! リリィなら出来る!」
セーナの目を見ている内に心が落ち着いていく。
「ありがとう」
大丈夫、こっちは空から一方的に攻撃できるんだ!
一つ効かなくたって効くまで試すだけだ!
一番得意な風の刃を威力を上げて次々に放つ。
幸い指輪のお陰ですぐに魔力切れになる心配はない。
何度か攻撃していると遂に地竜の体表に傷をつけることに成功した。
「ギャァォォォォオオオオ!!!」
その瞬間、地竜が咆哮をあげた。
一瞬集中力が途切れ、飛行魔法が解除されてしまう。
急激に高度が落ち、一気に地竜に近づいていく。
(マズい!! 撃ち落とされる!?)
次の瞬間、襲ってきた地竜の尾に弾き飛ばされ、木々に激突した。
全身に感じる痛みに呻きながら、どうにか立ち上がり状況を確認する。
どうやら、尾にぶつかる瞬間セーナが障壁を貼ってくれたようだ。お陰で即死は逃れたらしい。
セーナはどうなったのかと、慌てて周囲を見回すと、倒れているセーナが視界に入った。
「セーナ! しっかりして!」
セーナの出血が酷い!?
木にぶつかる瞬間、自分の身を犠牲に私を庇ったのだ!!
水魔法の回復速度の遅さに苛立ちながら、必死に魔法をかけ続ける。
「リリィ。もういいから行って。後は自分でできるから」
目を覚ますなり、セーナはそう言った。
確かにセーナの実力なら傷跡も残さず完治できるだろう。
しかし、セーナの魔力量はそれほど多くはない。さっき障壁を使ったばかりな以上、間に合うかはわからない。
一瞬迷ったが、地竜の近づいてくる音が聞こえてきた。
(先ずは場所を移さなきゃ!)
離れたところでセーナを寝かせ、自分の親指にしていた指輪をセーナに付け替える。
「この指輪をしていれば少しづつ魔力が回復するから! 焦らずゆっくり回復魔法をかけ続けてね!」
セーナが頷くと傷口が光に包まれた。
これでセーナは大丈夫だろう。
自分の魔力量は残り半分ほどかな。
地竜になんて勝てるのだろうか……。
どうやら、完全にロックオンされたようだ。
場所を移したのにまた地竜が近づいてくる。
元々洞窟に住んでいるのだし予想はしていたけど、視力以外の方法で私達の場所を探知できるようだ。
とにかくここから離れないとセーナが危ない! 私が囮にならないと!!
もはや手段を選んでいる場合ではないと、覚悟を決めた。




