01-13.ダンジョン探索
「前方十m、ワーム系」
探知魔法で得た情報をセーナが教えてくれる。
ダンジョンに入ってからは、基本的に歩いて進み、魔物が出現した場合のみ、飛行魔法で一気に飛び越えるようにしていた。
全部飛行魔法で飛んで行こうと思っていたが、万が一魔物まみれの場所に突っ込んだりしたら危険と思い、慎重に進んでいく。
ダンジョンは思っていたより、ずっと広かった。
また、魔物が空けたと思われる穴もそこかしこにあり、ゲーム知識があっても迷いそうになる。
たしかに、ゲームだと一画面に映るよう簡略化されていただけで、現実になればこうなると予想して然るべきだった。
思わずセーナにそうぼやくと呆れられた。
「画面?はよくわからないけど、リリィの考え無しにはもう慣れてる」
グサッと来ることを言う。
いつからこんなに口が悪くなったのか。
ゲームではこんなキャラじゃなかったのに!
セーナを変えたのは私でした。そうでした。
これは予定していた日程ギリギリになるかもしれない。
予備日まで用意してくれたセーナ様々だ。
私セーナに頼りすぎてない?
もうセーナと離れたら生きていけないかもしれない。
「リリィ!止まって!」
珍しく、セーナが慌てた声を出す。
「どうしたの?」
「この先に強い魔物がいる。たぶん地竜」
「本当に?さっきのワームと比べてそこまで違う?」
「たぶん間違い無いと思う。感じる力が全然違う」
セーナは魔力量で相手を探知している。
事前にどんな魔物が生息しているかは伝えているが、セーナにとってもダンジョンは初めてだ。
見たこともない魔物は断言できないだろう。
地竜という事はこのダンジョンで出会う魔物の中ではボスを除いて最強のはず。
まだ割合的には大して進んでいないはずなのに……
こんな所にいるのであれば地上に出てくるのも時間の問題かもしれない。
このダンジョンは比較的高レベルなはずなので、地竜なんて出てきたら甚大な被害が出るだろう。
ともかく、ここは逃げの一手だ。
今の私では勝てないだろうし、何よりここは相手のホームだ。
少なくとも地上に出てからでなければ戦うべきではない。
一先ず、迂回するために一旦戻ることにした。
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「今日はここで休みましょう」
セーナに探知してもらい安全を確保する。
二人しかいないので交代で休む。
いつもなら二人でいれば絶えずお喋りしている私達だが、流石にダンジョンの中では静かにしていた。
今もセーナが寝ているので話し相手はいない。
見張り中なのでいつものように思考にふけるわけにもいかないし。
セーナが用意してくれていた毛布にくるまりながら、周囲の警戒を続ける。
せめて、もう一人くらい仲間が欲しい。
とはいえ、ゲームの仲間たちは皆男性なので、あまり一緒にダンジョン探索したくはないのだけど。
試しにゲームの登場人物以外を鍛えてみようかな。
称号の獲得手段がわからない以上難しいか。
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翌日もダンジョンを進む。
この調子なら今日中には目的地につけそうだ。
ダンジョンが広いおかげで、複数のモンスターに囲まれることもなく順調に進んでいく。
あれから地竜に出会うことはなかった。
なぜあの一体だけ地上に近いところにいたのだろう。
そういえば、ダンジョンの宝ってどんな風においてあるんだろうか。
ゲームでは宝箱に入って置かれていたが、流石に魔物の巣に宝箱は無いだろう。
文献なども調べてみたが、そもそもダンジョンの深部まで好き好んで来る人間などこの世界にはいないためか、全くと言っていいほど情報がなかった。
こんなに順調なら他のダンジョンも挑戦してみようかな?
呑気な事を考え始めた頃、目的地に到着した。
到着して驚く。
そこにはガラクタの山といった感じの光景が広がっていた。
セーナいわく、そこにあるものはどれも魔力を発しているらしい。
魔物には魔力を発生させているものを溜め込む性質があるようだ。
というかこの山から指輪一個を見つけるの?
無理じゃね?
ともかく行動しようと、セーナと手分けして探していく。
殆どが魔道具なようで使えるものもありそうだが、知らないものばかりで効果がわからない。
この世界にはステータスウインドウなど無いのだ。
鑑定の魔法とかないかしら。
聞いた事は無いけれど、もしかしたらそんな職業もあるかもしれない。
帰ったら、父様に聞いてみよう。
なんとなく気になったものと、指輪型の物を片っ端から集めていく。
アイテムボックスのスキルとかあれば全部持って帰れるのに・・・残念。
鎧や剣も無造作に転がっているが、私の装備できるものではない。
セーナが使えそうな剣があれば持って帰っても良いかもしれない。
結局一日では見つからず、少し離れたところでその日は休むのだった。